第22話 めちゃ映え

「……私、心の中で『めちゃ映え休憩スポット』って呼んでた……」


ふらみんさんの思う言葉でも伝わる気がした。でも一番伝わるとしたら絵だ。

言葉じゃ皆、見た事があっても知らないと思う。けれど絵なら確実に伝わる。


その後に結城君が『フェルメールの絵(牛乳を注ぐ人)』を出題したり、クロさんが『某少年漫画の主人公』を出題したり、青柳さんが『ビリヤニ』を出題した。

それを皆正しく描けたり描けなかったりで、誰かが突出してポイントを獲得したとかはなく、勝負は流れた。杏仁豆腐はこのゲームを主催したふらみんさんのものとなった。


勝負としてははっきりしない結果となったけど、楽しかった。うろ覚えなものなんてやまほどあるし、私でもすごい才能の人達に勝てるというのはいい。きっと視聴者も楽しめる事だろう。





■■■





8月15日のCrystal第二回放送。それは活動し始め、打ち解けだした私達を中心に構成されていた。影が薄くなるのでは? と心配していた結城君も大活躍だ。イーゼルの前、白衣を着て絵と向き合う彼はとても絵になるし、スタッフさんが質問をすれば絶対に返してくれる。少々真面目すぎておかたい印象はあるけれど、それもいい。


放送日の翌日、私はクロさんと結城君を誘って食堂にやってきた。


「宿題をしましょう」


高校生が三人、集まって何をするかといえば宿題だ。八月全部、ほぼこっちに滞在するのなら、夏休みの宿題をしなくちゃいけない。しかし私は持ってきただけで安心して、まったく手つかずの状態だった。


「宿題なぁ。俺の学校、つか学年は宿題なんてないんだけど」

「え、クロさんとこは宿題ないんですか?」

「受験の年だからな」

「じゃあ受験対策とか」

「受験もしないし。まぁ卒業できる程度にはやっとこうとは思うが」


つまりクロさんは宿題も勉強もろくにせず夏休みを終えようというのか。すでにイラストの仕事をしているからってなんて人だ。

でもこうして来てくれるあたり人付き合いはいい。


「僕は夜に毎日こつこつやっているから、そこまで溜め込んではないよ。あ、でも最近疲れてすぐ寝てしまうから、遅れ気味だけど」

「宿題こつこつやる人っているんだ……」


私は結城君のそういう所に地味に感動してしまった。こんな非日常で楽しい空間にやってきて、夜に宿題こつこつこなすとか、ありえない。


でも、さすがに結城君も最近の合宿生活には疲れているみたいだ。この一週間、皆で別荘よりさらに山の方に行ったり、山を降りて観光地の方へ行って買い物したりしてたっけ。他にも洗濯や掃除など日常のことや課題制作もしているんだから、そりゃあ疲れる。私だって夜はすぐに寝て、おかげで宿題はまったく進んでいない。

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