第21話 異常な記憶力
「真白は記憶力すげーから、一度見たものは完璧に描けるよ」
「え!?」
「だから真白が知らなそうなワードをお題にするのがオススメ」
太陽さんが言って、私は彼の言葉を思い出す。結城君はすごい才能の持ち主で、だから周りはそれを育てようと勉強させまくったらしい。
その才能とは記憶力かもしれない。一瞬でこんなシンプルが故にごまかしのきかないものを覚えてそのまま描くなんてすごい才能だ。このゲームでは活躍するに決まってる。
そんなすごい才能だけど、結局このゲームの趣旨とはちがう。今回ポイントをとったのは的確に色んなパターンを描いた青柳さんとなった。
「じゃあ次は私が出題だけど、これは対策を練らないとなぁ。じゃあ『アーガイルのジャンパースカート』はどう?」
私の時計回りで隣のふらみんさんが次の出題者となる。それは私には簡単すぎる問題だけど、男性陣にはどうだろう?
顔を上げれば男性陣は皆悩んでいた。多分ジャンパーとスカートを描く人も多そうだ。そして誰もアーガイルがわかっていない。
そして3分経過。
「じゃあ結果見よっか。はい、正解はhikariちゃんだけだねー」
結城君クロさん青柳さんはジャンパーとスカートとアーガイルらしきものを表現したもの。クロさんに至ってはガーゴイルを描いている。太陽さんはスタジャンの裾を伸ばしたワンピース状のもの。ひどい正解率だ。
ちなみに正解。ジャンパースカートはベストとスカートが繋がったような形のものだ。そしてアーガイルは菱形を組み合わせた模様。女子向けの服に用いられる事が多いから、男性陣が知らないのも無理はない。
「それじゃ次は太陽さんね」
「はーい。誰も知らないような言葉がおもしろいよね。じゃあ『ガゼボ』で」
ガゼボ。それは聞いたことのない単語で、私だけでなく皆が同時に固まった。
聞いた感じ魚っぽい気がする。多分ハゼとかオコゼとかの言葉に似ているからそれに引っ張られているのだろう。
しかしだからといって他に思い浮かぶものもない。
「ここにいる皆は一度は見たことのあるものだよ」
太陽さんのヒント……だけどそれでもピンと来ない。
3分経過。難問に皆苦戦して、口数は少なかった。
そうして出来た絵は、魚を描いたのが私とふらみんさんと青柳さん、庭にある花を描いたのが結城君、変わった形の醤油差しを描いたのがクロさん。皆の回答を見てもどれも曖昧で、正解がわからない。
「正解はこれでしたー」
赤城さんのクロッキー帳には答えとして八角形になるよう建てられた柱と屋根の建物があった。
東屋だ。それもこの別荘にあるものそのまま。
「あれ、東屋っていうんじゃなかったんですか?」
「東屋ともいうけど、西洋風のものはガゼボっていうんだって」
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