第20話 うろ覚えイラストゲーム

それにしても最初の出題は私か……

自分が完璧に描けて、皆がうろ覚えであるようなお題。となれば一つしかない。


「じゃあ、最初ですし簡単に、『あいすくりんうさぎ』で」


さすがに皆、それがうさぎであることは知っているだろう。そしてシンプルなものほど正確に描くのは難しくて面白くなりそうだ。


「アイスの体にうさ耳が生えてたよね……」

「なんか猫になったんだけど」

「手足生えてた?」


そんな言葉が交わされて思わずにやける。よく見ているものだっていざ描けと言われれば描けないものだ。もしかしたら絵に慣れてる彼らより、私のファンでファンレターとしてあいすくりんうさぎを描いてくれた小学生の女の子のほうが特徴をとらえているかもしれない。


そして3分経過。発表となる。


「なんでか猫になった」


そう発表したのはクロさん。確かに口元が猫。Wの形にしたせいだろう。実際のうさぎはYとひっくり返したYを繋げたような口元だ。


「まつげあったっけ?」


そう発表したのはふらみんさん。つぶらな目からはしっかりしたまつげが一本生えている。これはこれでかわいい。


「ごめん、あのうさぎってアイス食べないっけ?」


ちょっと怖い絵になったのは太陽さん。うさぎはほぼ正解だけど、余計なことにアイスを食べてるシーンを描いている。あいすくりんうさぎはアイスの柄して積み重なったりするのが好きなだけで、別にアイスは食べるだろう……けど、こうして食べている図を描くのは共食いしているようだ。


「僕はトリプルにしてみた」


文句なしにうまいのが青柳さん。ただのシングルうさぎでなく、三体を積み重ねてトリプルにしてる。しかも柄まで正確だし積み重ねた際にたれ耳になるところまで描いている。これはポイントが決まった。

残るは結城君だけど……


「これ、ちょっと違ってた?」


結城君は簡略化されたうさぎだけど……私もよく描いたうさぎだ。とても見覚えがあるうさぎ、そのまま。つい最近色紙に描いたやつ。


「これ、私のサイン用のうさぎじゃない?」

「うん。一週間前にサインしてるところは見たから。申し訳ないけれど皆が描いているような状態のうさぎは見た事なくて」

「あの一瞬で完コピしたの?」


サインなんてすぐ描けるものでなければならない。簡略化したうさぎは簡単で、でも人には真似できないように作ったものだ。普通に使われているうさぎよりある意味描くのは難しい。

それを、結城君は一瞬見ただけで完全に再現した。

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