第17話 合宿をテーマにした作品作り
「クリスタル探しも結構だけどよ、課題作品作りはどうなってる?」
果てしない話は一旦中断。クロさんはそっちを聞く。私達出演者にとって作品作りの方が重要だ。最悪クリスタル探しはやらなくてもいいが、作品作りはしなければならない。クリエイターとしてここに呼ばれているのだから。
「この合宿ならではな作品を作れってことだろ。俺みたいな美少女描いてるキモオタはこんな陽キャしかいない環境で何描けっていうんだ」
「難しいですよね。描いているのが空想のものなら余計に」
クロさんの話題には私も乗っかる。私も何も浮かんでいなかった。
私みたいなゆるキャラ描きはこの合宿で何を描けばいいんだろう。
新キャラを作る? 新テーマを作る?
どちらにせよこの合宿ならではのものなんてすぐには思いつかない。
「クロ君はここを舞台に美少女描いたら?」
「それいつもと同じじゃないっすか」
「僕も美人画だからねぇ。クロ君の気持ち、少しはわかるよ」
「いやいや、プロの日本画家と一緒にしないでください。美少女イラストなんてオタクの理想のごった煮なんだから」
「そうかなぁ、変わらないと思うけど」
青柳さんとクロさん、『魅力的な女性を描く』という点だけは二人同じだろう。でもここを舞台にするというだけでは弱い。
「私も迷ってるとこ。一応特例でここの未発表作品を使って商品を作っていい事にはなってるんだけどね。王崎晶と私のフォロワーが重なるところをどうにか見つけたいんだけど」
企業とコラボしてものを作るふらみんさんだけはそういうルールだった。それはそれで王崎晶と名を並べる事になって難しそうだ。
「僕はいつも筆が遅いからなぁ。でもモデルがいたら早いよ。ふらみんちゃん、モデルになってくれない?」
「フェロモンで洗脳されそうなんで嫌でーす」
「じゃあhikariちゃんは?」
「ちょっと、hikariちゃんは未成年なんですよ!」
青柳さんからの誘いを私より先にふらみんさんが断った。美人に描いてくれるという点ではとても気になるけれど、確かに色気ある青柳さんに見つめられると動揺……洗脳されてしまいそうで嫌だ。
「じゃあ登喜子さんを描こうかな。王崎先生先生も登喜子さんの絵を多く残していることだし」
「そんな、登喜子さんは旦那さんを亡くしたばかりなのに!」
「ふらみんちゃんは僕をなんだと思っているの」
本気か冗談か、青柳さんは課題テーマを見つけたようだ。
どうしよう。私はまだ何も思いつかない。なんでもできるようなこの環境なのに、焦る事しかできない。
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