第12話 AI

今はAIがある。情報を学習して最適な絵を生み出すそれは、確かに進化したら画家もイラストレーターもいらなくなるだろう。

早くてお金がかからないのだから、皆がそれを選ぶに決まってる。


「俺達がいくら素晴らしい絵を描こうが、AIの進化スピードならいつか仕事なくなるぞ。まぁAIは見本のない絵は描けないだろうが、それを俺達が描けるかどうか」

「うわ……絶望しますね、それは」

「でもhikariみたいなキャラクタービジネスは思い出もつえーからな。よくあるだろ、子供向けの作品で昔の復刻デザイン。財力ある世代が子供の頃好きそうなものを狙い撃ちのやつ」


クロさんはひねた言い方をしているけど、それは少しだけ希望の持てる話だった。私が昔好きだったうさぎキャラは今でも好きだし、今イラストの報酬で資料と称してグッズを買い漁っているほどだ。子供の頃好きだったものはなかなか変わらないし、財力となつかしさで好意がさらに増す。

そう考えるとまだまだ芸術は生きていけるのかも?


「でもいつか、誰も人間の描く絵を愛さなくなり、懐かしむ人すらいなくなるのでは?」


結城君が話をまた絶望に持っていった。遠くではお酒を飲んだ大人達が陽気に過ごしているというのに、私達のいる東屋だけはお通夜のようだった。





■■■




一週間後の八月八日。Crystalの第一回が放送された。とはいえ一回目はほぼ合宿前に撮っていた個人の紹介や番組の趣旨などで構成される。『これから6人の若きクリエイター達はどんな活動をするのでしょうか?』という雨宮さんのナレーションで締められる。それから先は現在編集中だ。


「昨日の第一回放送、評判いいみたいねー」


その翌日。資料室の一室。

作品集を見ながらふらみんさんが言った。山の上だから涼しいとはいえ、それでも真昼に動けば汗をかくから確実に空調管理されている資料室や倉庫や食堂に私達は集まりがちだ。

とくに私とインフルエンサーふらみんさんと二次元美少女絵師クロさんはどこでも活動できるし、まずはクリスタル探しの目安をつけておきたい、という理由で自然と集まる事が多い。さらに今日は日本画の青柳さんもいる。

彫刻の太陽さん、油絵の結城君はこの暑い中外で散策がてら作品作りをしているらしい。彼らは初日からそうなので頭が下がる。


「年配の方も見ているみたいだよ。王崎先生の名前はそれだけ大きいし、皆今の美術界が気になっているみたいだからね」


誇らしげに青柳さんが言った。

番組の視聴率や再生回数は制作陣が想定していたより多いとか。デジタルで活動している3人で宣伝をしているし、他にないコンセプトだからじわじわと広まっているかんじだ。

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