第6話
「ぼ、僕が君達の兄弟に……?」
「兄貴!? いったい何を言ってるんだ!?」
「私も甚だ疑問です、風助兄さん。何か理由でもあるのですか?」
三人の視線を浴びながら風助は話し始めた。
「風太、風音、俺達にはもう親はいねえ。加えて、住みかも決まってねえし、その日に食う飯だってまちまちだ。それはわかってるな?」
「親がいないって……それはどうして?」
「……人間に捕らえられたんだ。親父達は俺達を逃がしてくれたが、親父もお袋も人間に捕らえられてそれっきりさ。正直、生きてるかすらわからねえから、家族だと言えるのはもう俺達しかいねえ」
「そうだったんだ……」
「なので、風助兄さんが亡くなっていた場合、残るは風太兄さんと私だけだったわけですが、本当にそうならなくてよかったです。風助兄さんがいないと風太兄さんの扱いに困って困って」
「風音! てめえなあ!」
風音の言葉に風太が怒りを見せる中、風助はため息をついた。
「お前達は本当に……辰也、すまねえな。コイツらには後でキツく言っとく」
「ううん、いいよ。さっきも言ったけど、賑やかでいいと思うから」
「そう言ってくれて助かるぜ。んで話に戻るんだが、お前は家族と言える家族はいないと言っていた。そして俺達は衣食住が安定している方がいい。そうなれば、お前が俺達を家族として迎えてくれて、ここに住まわせてくれたらお互いの利益になると思うんだ。お前だって家族その物がいらないとは言ってなかったからな」
「まあ、それはそうだけど……本当にここでいいの? 僕は学校にもいくから、その間は外に出られないよ?」
「そん時に外に出てくればいいし、なんだったら俺達がついていってもいい。飯も食わせてもらって寝床だって確保出来るんだ。お前の守りくらいはする。どうやらあの人間達との仲は中々に悪いようだからな」
辰也は表情を暗くする。
「うん……僕が逆らうような奴には見えないのもあるけど、多少お金を持ってる家なのは知ってるようだからそれで目をつけられたんだ。もちろん、抵抗はしてるからお金を盗られた事もないし、必要最低限のお金しかいつも持ち歩かないけど、それが癪に障るみたいなんだよね」
「ほーん……人間ってのはほんとにわけがわからねえ奴らだな。まあわかる気もねえけどな」
「それでいいと思うよ。とりあえず家族の件はいいけど、僕はどのポジションなの? やっぱり三男?」
「いいや、お前が長男だ。頼りになるのはわかってるし、お前が兄貴なら俺も安心して色々任せられる。風太、風音、お前達はどうだ?」
風太と風音は顔を見合わせてから答えた。
「俺は家族になる件は別に構わねえ。結果的に兄貴は助かったし、飯や寝床を確保するにはその契約みたいなのをしないといけねえからな」
「私も問題はありません。風助兄さんが決めた事なのでそれに従うまでです」
「だが、コイツが俺達の兄貴っていうのは少々納得がいかねえ。たしかに飯は美味いし、色々気がつく奴なんだろうさ。けどよ、そんなちんちくりんでひょろひょろの奴が俺達の兄貴だと思うだけで嫌な気分になる。コイツがなんか俺が認めてもいいと思うような事をするまでは俺は兄貴とは認めないからな」
「ああ、それでもいいさ。無理強いをする気はないからな。だが、俺は辰也を兄貴として認める。怖くても相手に立ち向かい、そのまま俺達を連れてこられたあの勇敢さは大したもんだからな。辰也、俺達の事は呼び捨てで呼んでくれていいからな」
「うん、わかった。それじゃあ今日からよろしくね、風助、風太、風音」
風助がニッと笑いながら頷き、風音が静かに一礼をする中、風太は腕を組みながらそっぽを向いた。そして四人が改めて食事を始めた時、風助は辰也に話しかけた。
「ところで、今日はその学校とやらにはいかなくていいのか?」
「うん、今日と明日はお休みだからね。だから、午前中は家の中の掃除をして、午後からお買い物にいく予定だよ。そろそろ食材とか日用品の買い足しが必要だったからね」
「んじゃあ、俺達も手伝わせてもらうぜ。家族としてそれくらいはやらねえとな」
風助の言葉に辰也は笑みを浮かべる。
「うん、ありがとう。でも、外だと話が出来ないのが少し残念だね」
「あー、たしかにな。なんか念波で話す手段はあるみたいなんだが、俺達はまだそれが出来ないんだよ。だから、おいおいその辺もどうにかしていかないとな」
「出来たら楽しそうだしね。それがあったら今日のご飯はこれだよって伝えられるし、色々応用が効きそうかも」
「飯を事前に……ってことは、これがいいって言う事も出来るのか?」
「うん、その日の買い物に反映させる事は出来るよ」
「そ、そうか……!」
風太は嬉しそうな声を上げたが、すぐにハッとすると、コホンと咳払いをしてから再びそっぽを向いた。
「ま、まあ……たまになら何が食いたいか言ってやってもいいけどな」
「うん、その時は言ってね。風音も何かリクエストがあったら言ってくれていいからね」
「はい、その時は伝える事にします」
「俺もその時はしっかりと言うな。よし、今日のやる事も決まったわけだし、そのためにしっかりと腹ごしらえだ」
風助の言葉に三人が頷いた後、四人は話をしながら食事を再開した。
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