第10話 想定の行動

・・

・・・


また夢を見た。

いつものように、目をゆっくり開けると辺りは真っ暗。


でも、大きな違いがあった。


目の前に友春と1人の女性はいない。


そして意識はあるけど、体が勝手に前に歩いている。

そんな自分を俯瞰から見えているような感じ。


スタスタスタ…


私はスマホをいじりながら前に歩いている。

画面には買い物リスト?のようなものを記載していた。


その内容・・・


・トモくんと飲む日本酒

・お刺身5点盛り

・あとは日本酒に合いそうなおつまみを何点か



「・・・あれ?これって・・・」



そんな内容を書きながら、私が楽しそうに歩いている。



「なんで、、こんなのを・・・」



すると、スマホをいじりながら歩く清乃の右前方から車がまっすぐ走っているのが見えた。


普通じゃ考えられない夢。

あの時の状況なんかわかる訳ないのに。


「キャー!!!!」

どこからか突然悲鳴があがった。


キュ〜〜〜!ドシャンッ!

グチャーーーガッガッガッタ....


・・・・・

・・・・

・・・

・・


チュンチュンチュン…


「・・・んっ」


ゆっくり目を開けると、寝室のカーテンから朝日が溢れていた。


「あ、朝か・・・」

「…なんか、、夢見てたような・・・?」


見た夢って覚えてないことがほとんど。

だけど、その夢の出来事などから、目覚めた時に嬉しい気持ちだったり嫌な気持ちだったりが残るもの。


この日の清乃も同じく覚えていなかった。

でも。


「くぅ〜!」

「さっ起きよっと」


どこか清々しい感情で満たされていた。


寝室を出てリビングに向かいコップ1杯のお水を飲む。


「ゴクゴク…プハァ〜」

「あー美味しっ」


シャーッ


体の隅々まで行き渡る水を感じながらカーテンを開けた。

すごい良い天気で雲ひとつない。


時間は午前9時30分を過ぎる頃。


「んっ〜!!」

自然と背伸びしてしまう。


それくらい、晴れやかな感じだった。


パジャマのままリビングでスマホをいじっていると友春が起きてきた。


スタ…スタ…スタ…


「あっおはよう」


「・・・うん」


体調がすごい悪そうに見える友春。

いや、体調と言うか昨日寝られていない感じがする。


「・・・体調大丈夫?」


「んっあー大丈夫・・・」


「そう…そんな感じしないけど??」


「えっ・・・」


「病院行ったら?探せば日曜でもやってるところあると思うから」


「あーうん、そうだね、、、」

「ちょっと探して行ってくるよ」


スタ…スタ…スタ…


そう言うと、また自分の部屋に戻り準備をし始めた。


「・・・」

そんな友春の後姿を見て、すぐ持ってたスマホをいじり始めた。



10分後。



ガチャ…


友春がリビングにやってきた。

家を出るための支度が終わったようで、もうカバンやらも持っている。


「・・・病院見つかった?」


「見つかった」


「そっか・・・でも見てもらったほうがいいと思うから」


「うん・・・ちょっと行ってくる」


「うん」


「・・・結構遠いから戻ってくるの遅くなるかも」


「あーそう」


「き、昨日伝えた話・・・夜にしたいから」


「うん、わかった」


「・・・」

「じゃあ行ってくる」


「いってらっしゃい」


ガチャン…バタン

清乃に返事もせず、友春は家を出ていった。


「・・・」

タンッタンッタンッ…プルルルル


「あっもしもし〜須藤清乃と申します」

「いつもお世話になっております〜」


「〜〜〜〜」


「あっはい、おそらく今日かと思いますので…」


「〜〜〜〜」


家を出たのを確認して、どこかに電話をかけた。



・・

・・・

・・



その夜。

21時を過ぎた頃に友春が帰ってきた。


いくら遠くの病院だったとしても、こんなかかる??

いや、病院じゃないのも知ってる。


リビングでテレビを見てる清乃に向かって話しかける。


「遅くなってごめん・・・」


「・・・あっいいよ」


「こんな時間だけど・・・話しいいか?」


「わかった」


すぐに返答をして、ソファーから立つ。


そして、4人がけでいつも2人でご飯を食べていたテーブルへ。

それを見た友春がゆっくりと同じくテーブルに座った。


いつもは、隣同士で座っていた。

けど、この日は対面。


「・・・」


「・・・」


「・・・俺ら結婚して2年経つじゃん?」


「うん」


「で、まぁ事故とかもあったりしたけど」


「・・・あのさ」


「ん?」


「そうゆうのいいから」

「話したいことを言って!」


「あっ・・・」


「で、なに??」


これまで見たことのない清乃の態度に、押されながらも重い口を開いた。


「いきなりでごめん…」


ジィッー…ガサガサ,,,,

スッ…


「これ・・・」


「・・・離婚届」


「・・・うん、ごめん色々考えたけど、お前と離婚したいと思ってる」


今日持っていってたカバンを漁り取り出したのは離婚届。

片面のほうには友春の必要なものが全部記載されていた。


「・・・どうして?」


「・・・ちょっと色々と無理で。。。仕事も今以上に忙しくなるし俺じゃもう支えられないから」


「・・・」


「清乃が悪いとかそんなんじゃなくって」

「でも、そうしたほうがいいって思ってる」


「・・・・」


初めて書いた結婚届。

ドキドキしながら2人で取りに行って、2人で確認しながら書いた。

そんな思い出が一瞬出てきた。


当然だけどその時とはまったく異なる感情。

・・・なんとも言えないこの気持ち。


あのまま1人でいきなりこんなのを出されたら、本当にキツかったと思う。

多分死にたくなるくらい・・・

でも…


「・・・」


「・・・」


「…清乃?」


差し出された離婚届を手に持ちながら友春の目を見て答えた。


「わかりました」

「アナタの要求を受け入れます」


「えっ・・・」


すんなり過ぎる返答に戸惑う。


「だから、離婚しましょうってことです」


「あっ・・・うん」


「こちらは後日書いてアナタに渡しますので」


「・・・わ」


「ですが、アナタも私の要求をのんでくださいね」


「えっ・・・?」


トゥルルン…トゥルルン


タイミングを測ったように、突然鳴ったのはマンション入り口のインターホン。


こんな話をしてる時にって友春はなんとも言えない顔をしていたが、清乃は何事もなかったようにモニターの前まで移動し応対した。


カチャ


「は〜い」


「夜分遅くに失礼します」


「あーどうも〜お待ちしておりました〜」

「どうぞお入りください〜」


ポチ


「ちょ、ちょっと清乃!まだ話終わってないんだけど」


「そうですよ、だから必要なんです」


「はぁ・・・?こんな時間に来る人なんって配達員とかなんだから、無視すればいいだろ!」


「…それより、私はアナタの要求をのみますから、アナタも私の要求をのんでくださいね?」


友春を置き去りに何事もなかったかのように話を進める。


「はぁ・・・?お前おかしいよ!!?」


「まぁ・・・のまないって事はできないと思いますけど」


「だから何言ってんのって」


「・・・もうすぐわかりますから」


「はぁ〜??」


ピンポーン


玄関のインターホンが鳴った。


タッタッタ…

不審そうな顔をしている友春を置き去り、玄関に向かった


少し遠くのほうで声が聞こえる。


「夜遅くにごめんなさい」

「本当にありがとうございます〜!」


「あっいえいえ、それではお邪魔いたしますね〜」


女性の声。

もちろん友春は聞いた事がない声。


知らない人が家に入ってきた。


スタスタスタ…ガチャ


リビングのドアを開けたのは清乃。

その後方に黒スーツに赤メガネをかけた女性・・・


「えっあっ・・・・どちらさま。。。で?」

おもわず立ち上がって、入ってきた清乃に向かって問いかけた。


「いいですから、アナタはそこに座ってください」

「あっこちらにどうぞ〜!」

友春をそのままに続けた。


「では失礼します」


スッ…


「私、xx市の者で、サトーと申します」


友春が座る前に名刺を差し出し話を続けた。

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