第9話 突然の申し出

・・・

・・




サトーと会い、話してから4ヶ月。

一応退院もでき現在は熱望していた友春との生活へ。


清乃の容体としては、妊娠ができる可能性が限りなく少ない状況へ。

また、顔の傷も整形はしなかったものの、通行人に後ろ指を刺されるほどではないが、昔とは異なる顔になってしまった。


それでも親友やメンタルカウンセラーなど、様々な人の応援と支援でそこまで落ち込むことはなくなり、これまでのような生活ができるようにもなった。


だけど・・・


2人とも口にしてはないが、昔のような生活や関係値とは違っているのも気づいていた。


そんな生活が16日ほど過ぎた頃の週末。


平日は相変わらず、いやむしろ仕事が忙しくなったとのことで家に帰れない友春と、まだ仕事復帰も出来ず自宅で過ごす清乃。

夕食を1人ですることにも慣れたが、昔の流れで土日の夕食は2人で食べる流れが今もある。


そして今日も。


・・・

・・


コトッ…


いつものように清乃が夕食を作り食卓に並べたはじめた。

友春はソファーでテレビを見ている。


今日のおかずは、ご飯に汁物、きゅうりのキューちゃんに、手作りのポテトサラダ。

簡単なサラダにメインは秋刀魚の塩焼き。


コト…コトッ…


「うん、ご飯出来たからたべましょ」


「あーあーありがと」


スッ…スタスタスタ


「じゃあいただきまーす」


「いただきます」


カチャカチャカチャ….


食器の擦れる音と、テレビの音声以外の音はない。

と、友春が険しい顔をしながら口をひらいた。


「・・・」

「…あれ、清乃??」


「ん??」


「あーいや、こんな時期に秋刀魚だなんて…なんで?」


「え〜なんか無性に食べたくなったの〜だめ?」


「あっううん、ダメじゃないよ。清乃が用意してくれてるんだし・・・」


「うん、そうだね。でもやっぱり少し早かったかもね」

「自分で作ったけど、あんま美味しくないや」


「あーいや、そんなことないよ…」


「そ?よかった」


友春が疑問に思うのも無理はない。

専門的に8月末から秋にかけてが旬のようだが、今はまだ7月末。

清乃はこれまで食卓に出す料理は季節に合わせてかつ、複数の料理を出していた。


けど、この日は少し違った。

いや、清乃が退院してから出す料理に少し変化があると友春自身も感じていた。



今思うと、この日の友春はそういった理由とは違うような反応をしていたと思う。



カチャカチャカチャ…


「あれ?もう食べないの?」


「ん…うん、あっなんか体調がおかしいのかも・・・」


「そう、したら無理に食べなくていいよ」

「食べ終わったら片付けるからもう休んだら?」


「あー・・・うん、ごめんね」


「大丈夫」


ガタっ…


そう言って夕ご飯も少量に、そそくさに自分の部屋に戻る友春。

そんな友春を横目に夕ご飯を食べ進める。


出された秋刀魚は食べていたものの、顔面蒼白というか…

これまではパッと食べてしまうのに、この日は食べ終わらなかった友春。


これまでにない夕食の空気でも清乃は淡々とした態度で対応していた。


・・・

・・


夕食後、お風呂を済ませリビングでまったりしていると、部屋に篭りっぱなしだった友春が様子を伺うようにやってきた。



「き、清乃?」


「・・・体調は大丈夫なの?」


「あーやっぱり変かも・・・」


「そっか…明日、日曜日だけど、診てくれる病院あるといいね」


「んーそ、そだね・・・でさ、風邪かもしれないから今日は俺自分の部屋で寝るよ」


「えっ…あーそうね」


「うん、、、移したら悪いしね」


「わかった」

「あっ、体調悪いところごめんなんだけど・・・」


「ん・・・?」


「まだ少し先なんだけど、私の誕生日が2ヶ月後じゃない?」


「あーそうだね!!!!」


「でね、欲しいものがあるからそれ先に伝えたくて」


「あぁ・・・なるほど…」


「ちょっとこっちきて」

「これこれ〜高いものとかではないんだけど、このネックレスがほしいの!」



体調などはお構いなしに、リビングの扉付近で話していた友春をソファーまで呼びスマホを見せた。

画面に映るネックレスは高級ブランドなどではなく、デパートなどで自分達の年齢層が買える値段のもの。


高い物を求められると思った友春だったが、画面に映るネックレスではなく値段をすぐ見て安堵した。

しかし・・・



「おーこれくらいなら!」


「そう?よかった〜」


「あっ・・・」


「ん?どうしたの??」


「・・・」


「高い?」


「あっいやそうじゃないんだけど…なんでこのネックレス・・・なの?」


「たまたま見かけてね〜可愛いでしょ〜」


「か、可愛いよ!!」


「だからこれ欲しいなって」


「そっ・・・そっか」


「お願いね」


「う、うん。。。じゃちょっともう部屋で休むね・・・」


「はーい、ゆっくりね」


バタンっ…..



これまたそそくさに扉を閉め部屋に戻った。


それから3時間ほど部屋から一歩も出てこなかった友春だったが、0時を過ぎた頃。

寝室で、ゴロゴロしてる清乃の元にやってきた。


コンコンっガチャ


「き、清乃・・・まだ起きてる。。?」


布団をかぶってスマホを見ていた清乃を呼んだ。


バサッ


「ん〜まだ起きてるよ、もう寝てるかと思ってた」


「あー・・・寝付けなくてさ。。。あの…風邪薬ってどこにあるっけ?」


「んーリビングの大事な物を置く棚の引き出しにあるよ」


「そっそっか、、ありがとう」


「うん、飲んで休まないと」


「・・・」


「うーん?なに??」


「あんさ・・・」

「清乃・・・明日ちょっと時間もらってもいいか?」

「ちょっと大事な話したいことがあるんだ」


これまでで見たことのない友春の表情と突然の申し出・・・


数秒の沈黙のち迷わず答えた。


「わかった」



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第9話までお読みくださいまして、誠にありがとうございます!

この話数から急展開をし始める贖罪の愛。


形式上まだ夫婦ですが、これまでと異なる空気感や距離感・・・

サトーと会い話した清乃になにが起こり、今後どうなっていくのか?


第10話の投稿までゆるりとお待ちくださいますと幸いです!


読者さまの応援やシェアが私の活力と今後の作品作りになりますので、引き続きよろしくお願いします〜!

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