第8話 ボイスレコーダー
テレビを見つめたまま固まった。
たった数秒だけど、確かに見た。
似てる人はこの世にたくさんいるから別の人かもしれない。
でも、私が見間違うはずない。
だって、あれはトモくんだったから・・・
「・・・なんで、、、」
頭がグルグルする。
見間違い。何度もそう言い聞かせてもあれはトモくん。
しかも、トモくんの横にいた女性。
ただ、いるだけでなく仲良く恋人繋ぎをして映画館に入っていった。
誰…誰・・・顔は見えない。
でも、夢で見た見覚えのあるあの女性の後ろ姿。
もうテレビの内容ははいってこない。
「・・・・・」
今日仕事って言ってたのに・・・
これまで不思議だったりしたけど、ちゃんと気に留めていなかったことが頭をよぎる。
香水が変わったこと
段々と面会に来なくなったこと
親友から言われたこと
そして、怪しいメールに書かれていたこと
とかとか・・・
これまでの全てが繋がってしまう。
市役所に確認してそんな部署なかったとか、怪しいとか思っていた。
けど、気がつけば名刺を取り出し、記載の電話番号にかけている。
・・・
・・
・
ガチャ
「はい、こちら女性を支援する課の窓口になります」
「あっあの・・・以前名刺をいただいたものなんですけど・・・」
「承知しました、お名前をお願いいたします」
「す、須藤清乃って言います」
「須藤清乃さまですね・・・」
「あっ清乃さま、この度はお電話くださいましてありがとうございます」
「えっあっ・・・ちょっと話したいことが・・・」
「はい、その前に以前お会いして名刺を渡したものに変わりますので、お待ちください」
「はい・・・」
・・・
・・
・
「お電話変わりました佐藤です」
「あっ・・・」
「少し前ですので、お忘れかもしれませんが清乃さまに名刺をお渡ししたものです」
「今回はいかがなさいましたでしょうか?」
「その・・・メールを見まして。。。あとちょっと…」
と今思っていることや見たことなどを伝えようとした矢先、遮られた。
「清乃さま、もう大丈夫です。私は清乃さまの味方ですから安心してくださいね」
「電話ですと何かとですので、よければ対面でお話ししませんか?」
「よければ、私清乃さまの病院までお伺いしますので」
不信に思っていた女性を支援する課。
電話口で佐藤と名乗る人物が女性だったことと、力強く味方になるって言ってくれたこと。
名刺を渡してきたのは男性だったけど、同じく苗字が佐藤のこの女性はちょっと大丈夫かもって。
だから・・・藁にもすがる思いで「お願いします」と言ってしまった。
・・・
・・
・
2時間後。
病室に尋ねたのは1人の女性。
初めて病室に来た時に男性の後ろに立っていた人物だ。
「清乃さま、改めまして私こうゆうものです」
差し出されたのは名刺。
以前もらったものと違うのは名前の部分。
佐藤ではなく、サトーと記されていた。
「あの。。。サトーさんですか??」
「はい、サトーと言います」
「この度はお呼びくださいまして、誠にありがとうございます」
「病院のほうに私どものほうから話をしまして、個室を確保しましたので、移動しそちらでお話しいたしましょう」
「えっ・・・あっはいわかりました」
始めは怪しんでいた、仮に詐欺なんだとしたら病院に申し出てわざわざ個室をとるなんてするだろうか?
いや、そもそもとれるものなんだろうかと。
でも、トントン拍子に進んでいる。
そして個室へ。
「本日は面会のご了承くださいまして、誠にありがとうございます」
「早速で恐縮ですが、私共は清乃さまの味方ですので、ご安心くださいね」
「あっありがとうございます。。。あの」
「大丈夫です、お電話でお話をしようと思っていらっしゃったことを我々は把握しております」
「この先に進むかどうかは、清乃さまご自身がどうするか?が一番大切です」
「よく知らないことは恥など言ったりしますが、世の中には知らなくても良いこともございます」
「うぅ・・・・」
「ですから、このまま我々を返すか、そのまま先に進むかご判断ください」
「どちらにせよ、我々は清乃さまの味方ですから」
「・・・」
いきなりそんなことを言われても…
困惑しているとスッと差し出されたのはボイスレコーダー。
「こ、これは。。。?」
「こちら以外にもございますが、今回のようになってしまった原因の一つだと判断できる内容を掴みました」
カチ
そうゆうと、スイッチを入れた。
・
・・
〜〜〜〜〜
・・
・
「こちらは我々が作ったなどはございません」
「ですが、確かにこのような発言を得ました」
「あぁ,,,,,あぁ・・・」
色んな思いが駆け巡った。
順風満帆にだと思っていた生活から一気に変わった。
あの事故がキッカケで、いやもしかしたらずっと前から小さな歪みがあったのかも知れない。
だけど・・・こんなことって。
「・・・清乃さま、どうされますか?」
この時から私の中で全てが覆った。
聞かなきゃよかった。無視すればよかった。
「・・・私は」
でも、もう引き戻れない。
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