第41話 魔銃士、初めてのダンジョン踏破に挑む・5
警戒しつつ進み、カミラの名を呼ぶ。だが反応はなし。代わりに出てきやがったのは植物系の
「俺に任せてくれ!」
俺はさっきルチアが見せてくれた青い炎が通路全体に広がるイメージを浮かべ、魔銃を構えて撃ち放つ。俺の考えが正しければ、ここにも
不意に低い、不気味な断末魔ともとれる悲鳴が聞こえた。
――ソー、もう根絶したよ。
俺はトリガーから指を離し、眼前の光景に目をやる。充満した煙が晴れていくと壁に埋もれていた隠し通路も見えた。
「探るわね」
アガサが例によってトラップが仕掛けられていないかチェックをし、安全が確認されると彼女と俺とルチアだけで通路を進む。全員で入って背後を襲撃されてはいかんというヴィゴさんの言を聞き入れた結果だ。幸い隠し通路は五メートルほど進んだところで行き止まりになり、そこには宝箱が鎮座している。
「どう思う? これ」
「こんな隠し通路に置いてある宝箱だものね……確率は二分の一か。でも開けないなんて選択肢、
万一の時はフォローよろしくね、と言ってアガサはナイフで宝箱の鍵部分を突いて壊し手を掛ける。俺も何が飛び出してきてもいいようにショートソードを構える。ルチアは特に反応がない。己が出るまでもない敵が潜んでいる、またはアイテムが入っていると判っているのか。
「開けるわよ」
ゆっくりと油断せずに。いつでも後退りができるよう構えつつ彼女は蓋を開けた。同時に後ろに飛んでナイフを構え、二人でじっと時を数える。十、二十を数えても何も飛び出してこない。アガサが念のために銅貨を一枚投げ入れるも、金属音が返ってくるだけだ。
「大丈夫そうね」
「みたいだな、さて何が入っているのやら」
二人でそろそろと近づき、取り敢えず俺がショートソードを中に突っ込んでみる。念には念を入れて、だよ。意を決して二人で覗き込めば、虹色に輝く石らしきものと俺たちにとっては小ぶりな斧が入っていた。
「この斧はヴィゴさんに渡せばよさそうだな。この虹色の石は何だろう」
「これって……やだ、アダマンタイトじゃない! こんな大きな原石、初めて見たわ。これ大事に取っておきなさいよ、ヴィゴさん経由でドワーフの職人に武器を作ってもらいましょう」
興奮が収まらないアガサの様子を見るに、この鉱石には希少価値しかないようだ。戦利品を手にみんなの元に戻ると、安堵したように息を吐いて出迎えてくれた。
「無事じゃったか、良かったぞ――おや、その斧は?」
「この先の宝箱の中に入っていたの。このアダマンタイトの原石と一緒にね」
「アダマンタイトの原石だとぉ!?」
獅子王の瞳コンビが目の色を変えて叫ぶ。二人の手がアガサに伸びて、咄嗟に俺が間に入って不躾な手をはたき落とした。
「他人に許可なく触れようとするんじゃない」
「あー悪い興奮した。アダマンタイトって聞いてつい、な」
アガサは嫌悪感を露わにして二人を睨みつけている。
「この斧はヴィゴさんにと思って。このアダマンタイトも、ダンジョン踏破したらどなたか職人さんに伝手があったら加工をお願いしたいんですが」
ヴィゴさん対しては一転して笑顔になり、アガサは礼節を以て斧とアダマンタイトを差し出す。
「職人のアテはあるが、ダンジョンを無事にクリアしてからじゃな。しかしこの斧もアダマンタイト製じゃぞ、ダンジョンマスターは冒険者を舐めてかかっているのか、あるいは」
ヴィゴさんは何やら思考の海に沈んでいってしまった。ややあって我に返った彼はアダマンタイトをルチアに差し出した。
「この中で一番安全で確実にアダマンタイトを地上に持ち出せるのはフェンリル様じゃ。お頼み申します」
ルチアはそれを俺に託し、腰の空間魔法ポーチに入れる。俺とルチアは一蓮托生だからな、ルチアに預けることは俺に預けると同義なんだよ。
「階層の守護者とやらが現れねーな師匠。どうなってんだ?」
「おそらくフェンリル様やソーどのが一緒に焼き尽くしてくれたからじゃろう。悲鳴のようなものが聞こえたじゃろう? あれが守護者の断末魔じゃと思う」
浅い階層でハミルとカミラが脱落し、それぞれのパーティーから一名ずつ脱落してしまった。六人パーティーとなった俺たちはアガサが罠を解除してくれた正しいルートを降りていく。地下三階、ルチアの魔力探知ではまだダンジョンの階層はあるそうだ。仲間をこれ以上減らされたくないんだが……どうなることか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます