第18話 魔銃士、山賊を捕らえトレースの都に入る
勢いよく玄関のドアを開け、部下どもがたむろしているという食堂へと案内させる。かなり広い邸宅だ。二代前の領主が隠居用に建てたらしく無駄に広い。しかしその隠居が逝去した後は放置されており、周囲にあった使用人たちの館からも人が姿を消し廃村の態を為しているという訳らしい。そこへ目を付けアジトとしやがったのが、この山賊ども。
「おい、お前らはいつから山賊に身を落としたんだ? 見ればまだまだ現役で活躍できそうじゃないか」
武具の手入れもしっかりしているし、鍛えていることも一見して判る。なのになぜ山賊などというお尋ね者の道を選んだのか理解できない。俺みたいに最初から暗殺者として生きる道しかなかった訳でもないのに。
「若さってのは、それだけで立派な武器なんだよ」
「若い内は体力がある、判断力も視野も広い。年を取ってくると体力は衰え瞬発力も失せていく。経験でカバーしていても、限度ってもんがある。魔物を相手にするより自分の今の能力でも倒せる人間を相手にした方が楽だって、あるとき気付いちまったんだ。……そこからは坂を転げ落ちるように、人としての道を踏み外しちまったんだよ」
「賞金首になって、後悔してるのか?」
「こうやって捕らえられちまったら、いい加減に諦めもつくさ。アンタのように最上級ランクの冒険者に捕らえられるんなら、それも運さね」
俺の冒険者ランクを示すプレートは、首から提げているが服の中にあるため見えないはずだ。
食堂に近付くごとに、野郎どもの野太い声が響いてきた。下卑た笑い声やダミ声が姦しい。俺は大きく息を吸うと、遠慮なくドアを蹴破った。
「おらぁ! お前ら山賊だな、大人しくお縄に付きやがれ!」
「お前らこの人に逆らうのは止めた方がいいぞ」
俺の言葉に続き
「お、お頭ぁ!?」
「ひっ、お頭の生首!」
「ぎゃああっ、シャベッタアァー!」
「なんで生首が喋ってんだぁ!?」
五人いる留守番組の内、四人は叫び一人は絶句して立ち尽くしている。混乱に乗してルチアが前に進み出て、咆哮を上げる。フェンリルの咆哮は様々な効果があるが、今回は麻痺の効果を。お、一気に倒れていった。俺は手早く彼らの全身を縄で縛める。ルチアの身体に四人を背に荷物を乗せ、一人は頭と同じく空間魔法ポーチに放り込んでおく。横に並べて顔を出そうとしたが狭いので、仕方なくトーテムポールのように縦に並べる。……うーん、やっぱりシュール。
『さ、出発するよ』
俺もルチアの背にしがみつく。結界を張ってくれるお陰で、俺も山賊たちも吹っ飛ばされることはない。ルチアが疾走してくれるお陰で、入都検査を受けるために並ぼうとしていたエドに追いついた。
「わ、ソーじゃないか。もう捕らえてきたのか?」
「ルチアのお陰で、難なくな」
「そうか。おれたちはこれから入都検査なんだ、ソーも冒険者プレートを準備しておいた方がいい」
「そうするよ」
アドバイスに従い、俺は冒険者の証であるプレートを胸元から引っ張り出す。陽光を反射して、キラリと光る。
「一緒にギルドに行こう。山賊を捕らえた手柄は全部ソーのものだから、報酬はみんな受け取ってくれ」
確かにエドたちは襲われて手も足も出なかっただけだしな。冒険者の身分を顕すプレートを門番に見せると、クリスタルにプレートと手を触れるよう言われる。右手とプレートをつけると、クリスタルのひんやりとした冷たさが伝わってくる。透明なクリスタルがほんのり青色に輝いた。
「間違いなく、このプレートの持ち主だな。通って良し」
なりすまし防止の機能が、このクリスタルに備わってんのか。どういう理屈かわかんねーけど便利だな。ルチアのことはどうなるのかと思ったが、俺と契約している以上ルチアは使い魔扱いらしく一緒に門をくぐれた。おお、第三都市なだけあって華やかな雰囲気が漂うな。人通りも多いし、人々も洗練されている。王都はどんなに栄えているのかと思うと、ちょっと楽しみでもある。
生首二つプラス巨大なフェンリルに括り付けられている山賊どもは大いに目立つから、さっさと冒険者ギルドに行って引き渡してしまおう。さっきから行き交う人々の視線がいてぇ。
エドたちの案内で西の外れにある冒険者ギルドに到着。テリベ村の冒険者ギルドは木造建築で横に三棟だったが、トレースの都にあるギルドはしっかりとした
「山賊の身柄は、本部が査定するよ」
エドに言われて中央の建物に行く。山賊が出没したと報告するはずだったエドたちだが、俺が全滅させたからな。代わりに本来の依頼だった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます