第13話 魔銃士、元冒険者たちに絡まれる
さほど広くない村のほぼ中央に、冒険者ギルドはあった。木造建築で三棟が横に連なっており、中央の棟がギルドの建物で二階建てだ。向かって右の棟が素材買い取りで左が武器防具の店だ。昼近い今の時間帯だと冒険者たちはそれぞれのクエストに出かけており、村の護衛をする引退した元冒険者たちが昼食のために戻ってくる頃だそう。
「受付で冒険者登録の申請をしてください。あとはギルドが説明してくれます」
「そうか、ありがとう」
『ボクも中に入るよ。さっきのようなトラブルはごめんだから』
「そんなデカい
『大丈夫。主従契約をすると身体の大きさを自由に変えられるんだ。魔力はちょっと消費するけれど、たいしたことじゃない』
「そうなのか」
するとルチアの身体が一瞬だけ眩い光を放ったかと思うと、次の瞬間には小型犬サイズになっていた。大きさは柴犬くらい? 真っ白な柴犬みたいで可愛い。思わず抱っこしたい衝動に駆られたけれど、我慢我慢。頑丈な入り口のドアを開けると、中にいた厳つい連中が一斉に俺たちに視線を送る。中は大小様々なテーブルと椅子が置かれており、座っているのは中年の男女が三人。ローブ姿の女と甲冑姿の男、矢筒を背負った軽装備の男。いずれも修羅場をくぐり抜けてきたというのが判る。投げかけられる視線は鋭く、値踏みされている。
「よう兄ちゃん、変わった格好をしているな。東方からの流れ者か? って、おいおい冒険に犬を連れてるのかよ」
「相変わらず見てくれでしか物事を判断しないわね、ラルフ。犬じゃなくてフェンリルよ」
「はぁ? フェンリルだぁ!? あの森の中で守護して下さっているんじゃ」
「二ヶ月前にフェンリル様の魔力が消え去ったわ。代わりにそれまで幼く弱い魔力が膨大な量に変化した……ここまで説明すればわかるかしら、ラルフ」
ラルフと呼ばれた甲冑姿の戦士は、ローブ姿の女の説明にそれでも納得がいかないよう。口を大きく開けて無遠慮に俺とルチアを見る。
「ソフィアの言うとおりだ。身体を縮めておられるが間違いなく成体のフェンリルだ。隣にいる彼とは主従契約を結んだのだろう」
「正解だよ。相棒の名はルチアだ、そして俺はソー。異世界から来た
証拠に腰の魔銃を見せると、ラルフという戦士は勢いよく立ちあがりまじまじと魔銃を見つめてくる。
「伝説だと思っていた……まさか実在するとはな」
「名乗ってくれたから、わたしたちも名乗らないと無礼ね。わたしはソフィア、魔法使いよ」
「私はレオンと申します。
「異世界渡りの人間ってだけでも驚きなのに、フェンリルと主従契約を交わすなんてどんなバケモノだ。アンタ、ランクはいくつだ?」
「俺はこの世界に来たばかりで、まだ冒険者登録すらしていない。今からだ」
ラルフの問いに答えてやれば、彼は無遠慮に俺を眺め回す。何だよ気持ち悪いオッサンだな。悪いが俺にソッチの気はないんだが。
「どう見えるレオン。俺の見立てではAか下手すりゃSってとこだが」
「珍しく意見が一致しましたね。私のスキル『心眼』でも同意見です」
「少なくともわたしたちと同程度のランクなのね。ごめんなさいね引き留めてしまって。あそこのカウンターが受付よ」
壁に前にカウンターがあり、紺色のジャケットを纏った金髪美女がじっとこちらを見ている。ただ恐ろしいほど無表情で、感情の波が一切読めない。俺と似たような感じがするから、もしかしたら受付嬢は仮の姿で本来は暗殺者かも知れない。俺はルチアを促すとカウンターへ赴き、彼女と対面する。
「冒険者登録をしたいのだが」
「畏まりました。こちらの書類に目を通して頂き、サインをお願いします。
「判った」
ルチアのお陰で読み書きが出来る。空欄部分に俺の名を署名し、受付嬢に返却する。
「それでは、こちらのクリスタルに手を触れて下さい」
カウンターに置いてある直径三十センチほどの大きさの、球体のクリスタルは透明度が高い。俺は右手でそっとクリスタルに触れる。するとクリスタルに色がつきはじめ――濃い紫色に染まった。
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