第8話 暗殺者、魔法の概念を学ぶ・2

『いま説明したのは基本的な魔法、つまり誰でも使えるものだよ。これから説明するのは特殊な魔法で、使える職業クラスや種族が限られているものだよ』


 召喚魔法。


 それは召喚師サモナーが使用する魔法で、妖精フェアリーと契約して使役するもの。魔法陣を介して契約するため、使役できる妖精は術者の技倆によるところが大きい。上級者になると幾体もの妖精と契約し、様々な効果を発揮しているそうだ。召喚師は人間しかなることができないらしい。


『ハイエルフ族が使用することで有名なのが、精霊魔法だね。召喚魔法の上位互換とも捉えている人もいるよ。ハイエルフは精霊と直接契約をして使用するから、彼らが魔法を使用すると何もない空間から炎やカマイタチが飛んできて、厄介だね。精霊は高潔な精神を持っているから、人間が精霊魔法を使用することは不可能に近いよ』


 これはファンタジー漫画やアニメでよく出てくるな。


「でも精霊魔法と召喚魔法の違いって何だ? どっちも契約して呼び出すんだよな。人間しか、エルフしか使用することが出来ないっていうけど、そもそも妖精と精霊の違いって何?」


 それをルチアに尋ねると苦笑して答えてくれた。


『妖精は自然に宿る精気が具現化して、肉体を持つ存在なんだ。天界に住まうことの出来ない最低級の神々が妖精になっていることもあるね。対して精霊は精霊界に住んでいて固定化された姿はないんだ。優れたハイエルフは精霊を具現化させることもあるらしいよ』

「すまん、エルフとハイエルフの違いは? 前の世界でも存在は聞いたことがあるけど、違いが判らん」

『エルフもハイエルフも長命な種族だけど、普通のエルフは軽装備に小剣や弓を使い、割と物理的にも戦える。ハイエルフは完全に魔法特化型で、武器を使っての攻撃は不得手なんだ。少なくともこの世界ではそうなんだけど、ソーのいた世界では違うの?』

「何というか、神話や創作の中に存在するんで実際に見たことはない。でもエルフとハイエルフの特徴を足して割ったような存在が多かったかな」


 正直あまり詳しくない上に、違いなど興味もなかったから曖昧だ。さすがこの世界はファンタジー色が強いだけあって、明確に種族の違いが定義されているんだな。俺を一人前の暗殺者に育て上げた教官がこの世界に来たら、歓喜の声をあげそうだ。


『あと、ドラゴンやボクら神獣が使う上位古代語魔法ハイ・エンシェント・マジックもあるけど、これは知識として頭の片隅に置いておいて。魔法に関しては大体こんなものかな。あ、あと空間魔法という便利なものもあるよ。異空間に荷物を放り込んで、好きなときに出し入れできる。食物も鮮度を保っていつまでも保存されているよ』


 それはあれか、某未来型の狸と間違われるロボットに付いている、ポケットの中身のようなものか? それは便利だな、俺も使えるようになりたい。


『空間魔法はアイテムバッグとして、一般に売られているよ』

「マジか!?]


 思わず大声が出ちまった。そんな便利な物が市販されているなんて、すげーなこの世界。

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