第39話 清楚系ギャルが嫉妬だなんてするはずがない!
「ここのカフェ来てみたかったんだよね」
映画を観た後にきたカフェはいま女子高校生たちに話題の映えスポットらしく、良くわからないんだけどパンケーキがおすすめらしい。
とりあえず失敗はしたくないので、おすすめとやらのパンケーキを頼む。
「てかさ……なんでさっきからそわそわしてるの?」
「だって俺、こんなところ来たことないし、カップル的な人たち多くね?」
「まぁ学生のカップルが来るのにもいい値段のお店だし、話題だし人気があるでしょ」
「たしかに、メニュー表を見てもめっちゃ高いとは思わなったけど」
そうここのカフェは高くても1000円を超えるくらいの値段なのだ。
今回頼んだパンケーキは700円くらいでお手頃価格といったところ。
「別に他のカップル見てもそわそわする理由はないでしょ、一人で来てるわけでもないし」
「まぁ冬島と一緒だから耐えられてるっていうのはあるな」
「そうそうこんなに可愛くて美人って言われてる冬島美奈と来れてるんだから」
「自己評価高いようで……」
自信満々にその言葉を言った時はふざけているのと、本気なの半々だなと感じた。
「それにうちだって今更、『可愛くないよぉ~』とかあざといことしないって」
「冬島にそういうのは似合わないよな」
「学校で何回も告られるし、自分の容姿が整ってるとも思ってるけど」
「けど?」
その言葉にまだ続きがあると思ったので冬島に聞き返す。
「元がいいって言われるけれど、別にそれにあぐらをかいたことは一度もない」
「そ、そうか……」
「ていうか、あぐらなんてかいてたらサリーやアッキーの隣に立って歩けない」
「あの二人も整ってるよな」
あの二人もタイプは違えど可愛いとクラスからも学年からも言われている人気者達だ。
それを思っての言葉だったのだが冬島はブスッとした表情で、俺の方を呆れたようなため息を吐きながら見てくる。
「女の子とカフェに来てまで他の子のことを考えているとは……」
「ち、ちがっ、今のは冬島が言ってきたから!」
「それをうちのせいにすると」
「だからぁ!」
ふふふっと彼女が可笑しそうに笑う。
しかもツボに入ったのか、中々笑いが収まらない、止んだと思ったらまたクククと肩を震わせている。
「面白そうでよかったよ」
「うん、こんなにツボったの久しぶり……クク」
「左様ですか」
「ほんっと飽きないわぁ」
その言葉は地味に嬉しかった。俺といてつまらないと言われるよりも楽しいって思えてもらえているんだと感じたから。
◆
注文した料理も届き、冬島は写真を撮りSNSにアップすると言っていた。
俺は結構お腹もすいていたし、美味しそうな匂いに耐えきれず写真なんて撮らずに食べる。
「てか……話変わるけどさ」
「――――うん、なに?」
「なんであの時、あんなに意地張って桜ヶ丘に突っかかってたんだ?」
「うちがサリーに?」
あの時というのは準備室での出来事だ。
冬島なら、周りにバレないようにこういうのを誘って来ると思った。
「あーあの時はなんか意地張っちゃたってのもあるし、サリーの反応も可愛かったからね~」
「え、もしかしてそれだけ?」
「それだけってなに、他に何かあると思ったの?」
「いや、う~ん……」
別に冬島が俺のことを好きだとかそういうのではなく、なにか他に意味があったのかなと感じていたから聞いたのだが思い違いだったみたいだ。
「嫉妬……してたのかもね」
「嫉妬って……俺に対して?」
「アンタにもだし、サリーにも」
「なんでだよ」
俺のどこに嫉妬する要素があるのか謎だった。
仲のよさなんて冬島の方がいいし、嫉妬される原因が本当にわからない。
「サリーがさ男の子をあだ名で呼ぶのって珍しいんだよ」
「そうなのか……でも俺初めからオタって呼ばれてたぞ?」
「オタって言われてたのは、あだ名とかじゃなくてただ呼びやすいのとまだ関係が浅かったからだと思う」
「なるほど……それであの一件以来はユキって呼ばれてるのか」
俺がその話をすると冬島は表情を曇らせる。
「サリーの為に動いたんでしょ?」
「一応はそうなるのかな? 邪魔しかしてなかったかもしれないけれど」
「だいぶ助かってたと思うよ」
「それならいいんだけど」
そこで一時の沈黙が二人に訪れる。
気まずい時間だけが流れていく。先ほどの会話の続きがいいのか、話題を変えた方がいいのか。
すると冬島が口を開いた。
「そんですぐに仲良くなる二人に嫉妬してた」
「仲良くって……お前の方が良いだろ」
「それはそう、だけど嫌なものは嫌だったの」
「はぁ……」
わかっているのに嫉妬なんてするのだろうか、そう疑問にも思う。
乙女心ではないのだろうが、難しいと感じてしまった。
「でも嫉妬だけじゃないの……」
「え? それだけじゃないって」
「うちさ――――悩みがあるの」
「悩み?」
悩みがあるそう告げた冬島の表情はなんとも言えない心情を表しているみたいだった。
「聞いてほしいの、うちの悩みを他の二人にも話したことない悩みを」
「俺でいいのか?」
「むしろアンタじゃないとダメなの」
「そうか、なら聞くよ」
俺はそう言って冬島の方を真っすぐと見る。彼女もまたこちらを真っすぐと見ていた。
「うち――――教師になりたいの」
冬島の口から出てきた言葉は意外な言葉だった。
これは悩みなのか? 立派な夢じゃないのだろうか。
――――しかし冬島の表情は曇っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます