第22話 俺に一軍男子との関わりなんて存在しない

 俺はドリンクバーでメロンソーダを追加で注いでいた。

 冬島には子供扱いされたが、メロンソーダしか飲む気になれない。


(ええい、どうせ俺だって子供ですよ!)


 メロンソーダを注いで、自分のテーブルに戻ろうとした時だった。

 冬島も追加でドリンクを注ぎに来たのだろう、グラスを持っているのが目に入る。


「またメロンソーダか?」

「ふん、アンタと一緒にしてもらっちゃ困るんですけど」

「な、なんだと……じゃあ何頼むんだよ」

「今度はウーロン茶でいいかなって」


 そう言って、本当にウーロン茶をグラスに入れている。

 本当はそう言いながらメロンソーダを入れるのではないかと疑っていたが、そんなことはなかった。


「あ、そうそう今テーブルに戻らない方が良いよ」

「え? どうして?」

「今テーブル行くとめんどくさいことになるよ、馬場ばば達来てるからね」

「ばば……? って、馬場鷹斗ばばたかとか? 同じクラスの!」


 俺がそう言うと、コクコクと冬島は頭を縦に振る。

 馬場鷹斗……クラスのお調子者だが、カースト上位の中心人物って感じだ。


「なんでいるんだよ」

「あっちも打ち上げだって、まぁもう帰ってカラオケ行くらしいけど」

「なるほどな、てか絶対逃げてきたろ」

「当たり前でしょ? うち馬場のこと別に好きじゃないし」


 冬島は当然でしょ? みたいなことを言って来るが、別にそうとは限らないと思うが……。


「てか、いつまでここにいるんだよ」

「別に行ってもいいよ? あらぬ誤解を生ませていいんだったらね」

「別に誤解なんてしないだろ、みんなで来来てるんだから」

「いや、馬場ならするね、あいつサリーのこと好きだもん」


 その言葉を聞いて驚いた、確かに絡んでるのをよく見ることはあるが、馬場が桜ヶ丘のことを好きだとは。


「まぁ、サリーは馬場のこと嫌いだけどね」

「そーなのか?」

「うん、てかほとんどの女子馬場のこと嫌いだよ」

「な、なんでだよ……?」


 聞くと、馬場が嫌われているのは下ネタや、ガキっぽい所が嫌いらしい。

 冬島は「別に面白くもないし」と辛辣なことを言っていた。


 俺は女子怖いなと感じた。

 しかし、馬場は一向に俺たちのテーブルから離れようとしない。


(メロンソーダがぬるくなるから早くしてほしいんだけど……)


「んもぅ、何やってんのあいつ!」

「ずっと話してるな……桜ヶ丘と秋月と――――ってあれ?」

「アッキーいないね」

「どこいったんだ?」


 さっきまで確実にいた、秋月がなぜかテーブルから姿を消していた。

 すると、後ろからトントンと肩を叩かれる。


「ん――――って秋月?! な、なんでここに……」

「私も逃げて来たんですよぉ! 馬場くんってそ、その……視線がいつもいやらしいので好きじゃなくて」

「秋月も嫌いなのか……」

「だってサリーちゃんと話しておきながら視線は私のおっぱいの方に向いてるんですもんっ」


 ぷりぷりと頬を膨らませながら秋月は怒っていた。

 しかし、ここは男として馬場のことを擁護ようごしたくなってしまう。


(男なら秋月の胸は、ロマンがあるよなぁ……)


 そう思いながら、秋月の胸を見る。


「あのー? 幸也くん? 目線がいやらしいですよ」

「え、は、い、いや……そんなことは」


 俺が慌てて、そう言うと、秋月はジトっとした目で見つめてくる。

 冬島は俺はごみを見るような軽蔑する目で見てくる。


「変態」

「ち、ちがっ! そんなんじゃない!」

「アッキーの胸見るとかアンタもあいつと一緒?」

「だから! 違うってば!」


 みんな気を付けておこう、女性の胸は確かに魅力的である。

 しかし、女性側はそれに気づいているという事を頭の片隅に置いておこう。


 と、脳内で説明する。


「へぇ~? お前そんなにおっぱい好きだったのか」

「え……?」


 見知らぬ男のような声が後ろから聞こえたので振り向くと、鈴村凛すずむらりんが立っていた。


 こいつはイケメンで、馬場と同じグループであり、カースト上位の人間だ。

 女子からもモテまくりで俺はあんまりこいつは好かん。


「す、鈴村……」

「ん? 違うのか?」

「違うっ! あ、いや違わないけど」

「どっちなんだよ」


 鈴村は笑いながらそう言うが、俺にとってそんなこと今はどうでもよかった。

 それよりも、鈴村にこの状況を見られたことの方がヤバい。


「鈴村ここで見たことは忘れて、いい?」

「えーどうしようかなって、そんな睨むなよ……」

「あんたが茶化してくるからでしょ」

「可愛い顔しておっかねーなぁ」


 冬島は鈴村みたいなタイプが苦手そうだなと勝手に考えていた。


「まぁ、言わねーよ。知られたくないみたいだからな、

「え? あ、あぁ……」

「なんだよその顔」

「いや、別に生まれつきだけど……」


(なんだ? 生まれつきの顔に文句を言おうってか?)


 俺が引っかかっていたのは鈴村の「熊谷が」という言葉だった。

 別に言い出したのは冬島だし、俺以外にも知られたくない奴はいるだろと考えていた。


 面倒くさいことにならないことを俺は祈ることしかできなかった。

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