第21話 エナドリ
「解決してない…………問題?」
な、なんの事だろう、僕にはさっぱり…………。
「とぼけないでよー、ほんとはわかってるんだよねー?」
「…………うん。」
そう、本当は分かってる。
…………僕が今目の前に広がっているであろう光景が見れていないということだろう。
みんなが喧嘩しないでいてくれるなら僕はそれでいいんだけどな…………。
「実は僕もこの光景をメグに見て欲しいんだよねー…………それに……僕、自己犠牲とか好きじゃないんだ。」
サナのその優しさと強かさを兼ね備えた一言は、有無を言わせぬ説得力があった。
僕は首を縦に振るしか無かった。
「け、けど、どうするんだ!? ルカの言う通り危険だろうし…………。」
「け、けど、見せてあげたいよ…………。」
「はーい、皆さん静かにー、そこで僕が考えたのが…………。」
サナは勿体ぶるかのように一呼吸置き、次の言葉を紡いだ。
「…………特訓だよー。」
…………ん?
何か物凄い案があるのかと思ったけど…………特訓?
それなら今までもやってたし、それを今更さらにやったところで物凄く見えるようになるなんて思えないんだけど…………。
ルカとアニもそう思ったようで、疑問を口にしていた。
「まぁまぁ、聞いてくださいよー、僕、いいもの見つけちゃったんだよねー。」
「いいもの?」
「いいものってなんだ?」
「ふふふ、ちょっと待ってね。」
サナはがさごそと自分の服の中を探った。
…………いっつも思うけど、あそこにそんなものが入るのおかしくないかな?
しばらくして、サナは服の中から何かを取り出した。
「それでは皆様ー、ご傾聴くださいー。」
サナがそういうと、次の瞬間、カシュッという小気味いい音が鳴り響いた。
何だこの爽やかな音は…………最高の音じゃないか…………。
僕はその一瞬でこの音を気に入ってしまった。
「…………え、これだけ? これで特訓終わり?」
「いやいや、そんな訳ないよー? はいこれ、持って。」
サナは先程の音の主を僕に渡した。
「ひゃうっ!? 冷たっ!?」
僕は思わず渡されたものを落としてしまいそうになるが、何故か落としてはいけないという強い気持ちが働いた。
それによってすんでのところで落とすのを免れた。
「わー、危ないねー、それ落としてたら特訓出来ないところだったよー。」
「ちょっと!? そんな大切なものこんなに軽く渡さないでよ!」
「ごめんごめんー。」
「むぅ、軽いなぁ…………それで、これなんなの?」
その冷たいものは筒状の何かのようで、中には液体のようなものが入ってる。
「ふふふ、聞いて驚かないでよー? これはね…………エナドリだよ。」
「…………エナドリ?」
「「え、エナドリ!?」」
「えっ、えっ、なに!?」
ルカとアニは物凄く驚いた様子で聞き返した。
僕は全くもって知らないのでキョトンとすることしか出来なかったけど、そんなに凄いものなのだろうか…………。
「エナドリってあの飲むだけで集中力がとんでもないくらいに上がるっていうあの!?」
「エナドリって、あの飲むだけで作業効率が何倍にもなるっていうあのエナドリか!?」
「ふふふ、そーだよ、見つけちゃったー。これを飲んで特訓すればさ、何とか見えるくらいまでになるんじゃないかなー?」
…………それ本当に大丈夫なの?
みんなの話を聞く限り何だか物凄いもののように感じるけれど、うまい話には裏があるってよく言うし…………。
まぁ、みんなが僕に害のあるようなものを飲ませるなんて事無いだろうし、大丈夫だと思うけど…………。
僕は再度そのエナドリとやらを観察してみた。
…………よく聞いてみたらその中からパチパチと何かが弾けるような音が聞こえてくる。
「…………ね、ねぇ、これ本当に大丈夫なの?」
「大丈夫だよー、ほら、グイッといっちゃってよー。」
「…………う、うん。」
ええいままよ!
みんなはもっと危険な事をして僕を守ってくれているのにここで勇気を出せないでいつ出すんだ!
…………よぉし、飲むぞ!
僕は覚悟を決めてエナドリに空いている穴の部分に口をつけた。
そして、一気にそれを傾け、口に流し込んだ。
「ううっ、い、痛い…………。」
口の中で何かが弾けるような感覚と共にチクチクという痛みがはしった。
…………やっぱり何かあるじゃないか。
ただ、全然耐えられないほどでは無い。
僕はグッと堪えて残りの液体をどんどんと流し込む。
「そんなに一気に飲まなくてもいいのにー…………。」
…………それを早く言ってよ!
僕は心の中でサナを睨みながらも、最後の液体を口の中に流し込んだ。
「ふぅ…………全部飲んだけど、これでなにか変わって…………。」
その瞬間、僕の頭の中で何かが外れたような感覚がした。
そして、その外れたところから何かがドバドバと溢れ出るような感覚とともに、目の周りや体のあちこちが熱くなるような感覚に陥った。
「これが…………エナドリの効果!?」
まるで頭の中が澄み渡るような感覚だ。
「ふふふ、凄いでしょ、さぁ、特訓開始だよ!」
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