第2話 3人の少女
やや経って僕とルカはほかの場所に移動することにした。
僕は歩けないので、ルカに抱えてもらいながらの移動になる。
こうやって冷静になるとこの状況が少し恥ずかしいのだけど、こうでもしなければ移動なんか出来ないし、しょうがない。
ルカは全然大丈夫と言ってはくれているが、それでもやはり申し訳ない。
だから少なくとも運びやすい様にとちっちゃくなっている。
「ねぇ、今はどこに向かっているの?」
「今まで一緒に旅してた2人の所に戻ってる所だよ! さっきの事もあって一旦ばらばらに行動してたから何処にいるかは分からないんだけどね…………。」
「へー、ルカは3人で旅をしていたんだね。」
「…………うん、そうだよ!」
じゃあ、今はその2人を探している所なのか。
何故か勝手に僕と2人だけだと思っていたから少しびっくりした。
そっか、3人か…………。
「って、僕が着いていくって事その2人には言ってないんだよね? 勝手に決めて大丈夫だったの?」
「うん、2人とも駄目だなんて言わないに決まってるよ! 2人ともすっごく優しい子だからさ!」
うぅ、ルカがそう言うなら大丈夫だとは思うけど…………。
僕は1人で勝手に不安になっていた。
僕はもうルカの所以外居場所は無いのに、嫌がられたらどうしようだとか、その2人が怖い人だったらどうしようだとか、要らないことばかり考えてしまう。
「そんなに不安にならなくったって大丈夫だよ! 私はメグを絶対に置いて言ったりしないから!」
「ルカ…………ありがとう、安心したよ。」
ルカの言葉を聞くと、さっきの温泉よりも胸が熱くなる様な、そんな心地よい感覚になる。
僕はルカの腕の中で来る時を待ち続けた。
数十分揺られ続けたあと、ルカが急に立ち止まった。
「うーん、あれかなぁ?」
「見つけたの?」
「うん…………けど、ちょっと遠くてよく見えないんだ。周りに結構木も生えてるしよく見えなくて…………。」
辺りではサワサワといった音が鳴り続けている。
匂いを嗅いでみると、爽やかな匂いがする。
さっきまでとは全然違う匂いだ。
僕たちはいつの間にか森の中にまで来ていたのか…………。
日差しが遮られている為か、先程と比べて少し肌寒い気がする。
「メグ、ちょっと跳ぶから舌噛まないように気をつけてね。」
「うっ、うん!」
僕は口をしっかりと閉じ、舌を引っ込めた。
次の瞬間、何だかお腹の辺りがキュッとなる感覚と共に浮遊感が身を包んだ。
少し怖いけど、ちょっと癖になる感覚だ。
「うん、やっぱり当ってたみたい!」
「ほんと!? 良かったぁ。」
僕は安堵のため息を吐いた。
これだけ歩いて見つからないから、もしかしたらもう完全にはぐれてしまったのではないかと心配していたのだ。
そうやっているのも束の間、ルカが突然叫んだ。
「あっ………メグ、ちょっと耳塞いでて!」
「……? 分かった。」
僕は素直に耳を塞いだ。
次の瞬間、しっかりと塞いでいるのにも関わらずそれでも尚耳が壊れそうな程の轟音が鳴り響いた。
「きゃっ、何っ!?」
「ごめんごめん、ちょっと気づいてもらうためにおっきい音出しちゃった。」
「もぉ、先に言ってよ…………。」
僕はまだキンキンする耳を抑えながらルカに文句を言った。
「…………あっ! 気づいてくれたみたい!」
「ほんと!?」
「うん、こっちに向かって手を振ってるみたい!」
ルカはそう言うと、先程までよりも速いスピードで走り始めた。
ルカは嬉しそうな声音だったけど、それとは裏腹に僕はまた緊張し始めていた。
ルカの足音がまるで死へのカウントダウンのような絶望感を醸し出しているようにすら感じる。
数分間そんな時間が続き、遂にその時は来た。
…………足音が止まった。
僕の胸が激しく脈打つような感覚を覚える。
その時、ルカとはまた違う声が上の方から聞こえてきた。
「ルカ! 無事か!?」
ルカよりも少し高く、無邪気そうな声だ。
「うん! 平気だよ!」
その声に対してルカも明るく返す。
…………近くで大きな声を出されたので少し耳が痛かった。
「あれ? その子は誰!?」
「…………ねぇ、アニ、とりあえず降りようよー。ここでこんなに大声で話すと疲れちゃうよー?」
遠くからそんな声が聞こえてくる。
今度はそこまで声のボリュームも大きくないため、少し聞き取りにくかったが、ほんわかとして落ち着いている声だった。
「…………そうだな!」
その子がそう言った直後、ズドンという大きな音が2回なった。
結構高い所から降りてきたみたいだ。
…………大丈夫なのかな?
僕の心配とは裏腹に3人は先程と変わらぬ声で話し始める。
「2人ともやっぱり気になるよね…………紹介しますっ! この子はメグ! さっきの温泉の所から拾ってきた!」
「よっ、よろしくお願いしますっ!」
僕は2つの声が聞こえた方向に向けて精一杯挨拶をした。
「おー! あっ、あたしはアニ、よろしく!」
「僕はサナだよ、よろしくねー。」
アニとサナはそう僕に言ってくれた。
その言葉に僕は胸を撫で下ろした。
良かった、ルカの言っていた通り良い人たちそうだ。
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