第3話 怪我
その後、ルカは僕を何処かに座らせて、今僕がどんな状態なのか2人に説明してくれた。
「えぇっ!? それって結構やばくないか!?」
「メグ、大丈夫ー?」
2人は口々に僕を心配する言葉をかけてくれた。
先程まで僕は2人のことを少し怖がっていたので、少し罪悪感を感じてしまう。
「今はルカが助けてくれるから………大丈夫。」
心からの言葉だ。
出会って間もないのに変かもしれないけど、ルカは必ず僕を守ってくれるという確信があった。
「それでさ、こっからメグも一緒に連れていこうと思うんだけど、2人とも大丈夫?」
「勿論!」
「もちろんだよー。」
「2人とも…………ありがとう!」
出会ってからの期間で言えば3人とも殆ど変わらないはずなんだけど、ルカと違ってこのまだ2人を完全に信頼する事は出来ない。
いつになれば信用できるようになるかも分からないけれど、それでもできる限り信用できるように頑張ろうと、そう思った。
「そう言えば、みんなの旅の目的って聞いてなかったよね?」
「あ、確かに教えてない!」
「えー? 旅の目的教えたから連れて来たんじゃないのか?」
「おっちょこちょいさんだねー。」
「ごめんごめん! えっと私達の旅の目的はね…………。」
ルカは少し唸り、何かを考えたあともう一度話し始めた。
「なんて言ったらいいか分からないんだけど、簡単に言ったら怪我を治す旅かな?」
「うん、それでいいんじゃないかなー?」
「怪我を治す旅?」
こうやって話している感じでは3人とも何処か悪いなんて到底思えない。
ルカは元気よく走ってたし、アニとサナに至っては凄い高さから落ちてきても平気そうだし…………。
「あ、別にみんな今怪我してるって訳じゃないよ? 実はもう大体治ってるんだよね。」
「そーそー、元々サナは手と耳を怪我してたし、あたしは足と目を…………ってそうだ!」
アニはそう言うとガサゴソとしだした。
「そうそう、これこれ! メグ見てよ、メグも目が治るまでこれ使えば何とかなるんじゃないか!?」
アニは今僕の前に何かをだしているみたいだけど、見て、と言われても僕は目が見えない訳で、何も見えないんだけど…………。
「えっと…………見えない……かな?」
「あ、そっか、ちょっとまってて!」
次の瞬間、目の周りがひんやりするような感覚と共に、チクリとした痛みを感じた。
「痛っ!」
思わず声が出てしまった。
びっくりして目の周りを触ってみると少し冷たい板のようなものがあった。
「えっ!? どうしたの、大丈夫!?」
「アニ、君は痛覚が無いから気をつけてよー。」
「そうなのか…………本当はこれ痛いのか…………。」
アニたちは何かを話していたが、今の僕には一切聞こえていなかった。
何故なら、ものの輪郭が何となくだが見える様な気がするからだ。
僕が周りをキョロキョロしていると、何かが僕に近づいてくるのを感じた。
「メグぅ〜、本当にごめんねぇ!」
僕はその近づいてくるもの、アニを咄嗟に避けてしまった。
アニは僕が座っていた場所の背もたれの部分に激突していた。
「あっ、ごめん。」
僕はアニを心配したが、アニは特に何も無かったのように頭に付いたホコリを払っていた。
…………そう言えば痛覚がないとか言ってたよね。
って、そんな事より目の事だ。
僕は周りをキョロキョロとした。
依然として視界は暗闇に包まれている。
しかし、何故か近くに何があるのか何となく分かる。
色とかは殆ど分からないし、何ならほんの1メートル先はもう何が起こっているのか分からない。
しかし、地面がどこにあるか、前に何があるか、それだけが分かれば少なくとも出来ることはぐっと増える。
僕は座っていた所に手を置いて、力一杯押した。
「…………立てた。」
フラフラはしてはいるが、先程までと比べたら大きな進歩だ。
僕の口角が自然と上がっていく。
「アニ……ありがとう!」
僕はアニに抱きつこうと思ってアニに駆け寄った。
「うわぁっ!」
次の瞬間、僕はまた周りが見えなくなった。
それと同時に頭部に走る激痛…………僕は派手に転んだみたいだ。
「うぅ…………。」
僕は何とか起き上がり、地面を再認識した。
周りを見渡すとアニよりも少し小さいシルエットが僕に近づいてきた。
「大丈夫ー? 」
優しく僕の頭がポンポンと撫でられる。
この声はもしかしてサナだろうか?
サナのシルエットは何だかちんまりしていてとても可愛い。
ひとしきり撫でられたあと、痛む頭を押さえながら立ち上がり、僕はルカを探した。
ルカは僕のすぐそばに居た。
ルカのシルエットは僕達よりも少し身長が高く、とてもシュッとしていてかっこよかった。
今見てる感じだとみんなとんでもなくスタイルがいい。
…………ちょっと羨ましい。
みんなの姿を確認した後、今度は転ばないようにアニのもとへ行った。
「アニ…………本当にありがとう!」
「うん、喜んでもらえて嬉しいよ!」
アニはそういうとニコッと笑った。
…………その時だった。
急に僕の体に力が入らなくなり、意識が朦朧とし始めた。
「メグっ!」
ルカが駆け寄ってきて僕を支えてくれる。
安心した僕はそのまま意識を手放した。
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