第4話 天使はプールを所望する
天使と暮らし始めて、早くも2か月が経過
早起きのセミが鳴き始めるなど、世間は夏の気配
仕事を終え帰宅すると、天使が小学生が着るようなスクール水着を着ていた
意味がわからず、はてな顔のあなた
「なんですかその顔は、セイナの水着姿ですよ。もっとよろこび、飛び跳ねるのが
「この水着ですか? 下の階のカナコに、プールの招待券と一緒にもらいました。小学生のときのやつだけどー、セイナちゃんなら着れるんじゃないかなー? と着せられました」
真下の部屋には、カナコという女子大生が住んでいる
天使と仲良くしてくれているようだが、少し変わった子だ
「どうですか! 5-1 ろくどうかなこ とカナコのネーム入りなことを除けば、結構いいんじゃないですか? ロリ似合う~♡ とカナコもご
悪い子とは思わないが、カナコはやばい子だ
スマホをパシャパシャは、注意しておいたほうがいいだろう
「プールに行きたいのかって? はい、行きたいです!」
「はい? いえ、わざわざ新しい水着はいらないでしょう。人界の子どもはこの学校指定水着を着るのだと、カナコも言ってましたが」
「似合いませんか? あなたはもっと肌の露出が多いのがいいですか? これがあなた好みの水着でないなら、マイクロビキニ……でしたっけ? カナコがそれを買ってくれるそうです。カナコ的にはそれもアリだそうです。そちらがよいですか?」
「あっ、はい。これでいいですか! これが似合いますか。そうでしょう。セイナもこれ、かわいいと思います」
「それでですね……プール、一緒にいってもらえますか? 一度いってみたかったんです。セイナは泳いだことがありません。天界では水中で遊ぶ
「あなたが一緒だと、安心できます。水に沈んでも、助けてくれますでしょ? セイナは人界では、あなたが一番信じられます、あなたがいないなら、プールはこわくて行けません。プール、行きたい……な」
天使が食べ物以外でおねだりするは初めてで、あなたはなんだか嬉しい
「いいんですか!? やったー! うれしいですっ」
「でもやっぱり、この水着はダメ? どうしてですか?」
せっかくならお古じゃなく、天使に新しい水着を買ってあげたかった
「はい……もっと似合うのを買いに行こう、ですか。いいんですか? あなたが選んでくれるのですか? かわいいのを。あなたが選ぶのですから、ピンク色でしょうか。あなたは、ピンク色の服が好きですものね」
ニコニコして、楽しそうな天使
「それもいいですね! セイナ、あなたが選んでくれる水着がいいですっ」
「じゃああなたの水着は、セイナが選びます。いいじゃないですか。ちゃんと選べます」
「楽しいです。楽しみですね♡」
「…………と思っていた時期が、セイナにもありました」
パシャバシャ(水が跳ねる音)
「水こわい、し、沈む……ちゃんとつかんでください。もっとギュッとしてください。やっ、やだっ! 天使は水に浮かばないのですよ、きっとそうなのです!」
「はなさいで! ずっとつかまえてて! ちっちゃな子が笑ってる? はっ! 笑わせておけばいいのです。他者の痛みを理解できない人類めッ、そんな種族だから自ら破滅を呼びよせっ……きゃっ! ぎゅ~ってしててっ。腰つかんで! しずむっ、しずむ~っ」
プールサイドに上がり
「……はぁ、はぁ、はぁ。セイナはもう、プールを卒業しました。ここは子どもの遊び場です」
「なに笑ってるんですか……楽しそうだねって、楽しいってどこがです! セイナが鼻水をたらして泣いてる、それのどこが楽しいのですか!?」
「深い場所じゃないから、足はつく? は? そんな余裕どこにあったと思うんです。見てましたでしょ。セイナは、セイナは……天界に帰りそうになってましたよ! 天使は人界で死ぬと、天界に強制送還ですよ! そして失敗天使として、それはもうおそろしいことになるのです!」
「ぐすっ……こわかった、本当にこわかったんですから! ちゃんとつかんでてって言ったでしょ!? 抱きしめてくれればいいじゃないですか! セイナは、あなたの天使なんですから!」
「……うっ、ごめん、なさい。プールに来たいっていったの、セイナなのに。だって、こわかったから。もっと抱きしめてほしかった、から……うえぇ~ん、ごわがっだよ~」
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