2章 攻略済みのところで油断は禁物
第17話 二週間
「今日も早いな」
「エドガーさん!おはようございます。今日も朝から早いですね」
今朝も朝市に行って帰ってくると、エドガーさんが走り込みをしている。魔法も使えるけど、一応騎士だから身体を鍛えるのは当然のことだとか。感心である。
買ってきたものを食料庫に持って行って、朝食に必要なものだけを取っていく。
「昨日はジャムだったし…その前はハムチーズだったし……」
この時にメニューも決める。
「よし、ベーコンエッグにしよう。レタスも新鮮なのがあったしね」
それから今朝も食料庫の魔法陣に触れる。毎日少しずつ魔力を供給しておくのだ。忘れると困るからこの時にやる。
魔力がいい感じに満ちると、最初に見たときのように石の隙間が青白く光る。それを確認したら、必要な材料を取ってここを後にするのだ。
「…んーふふー…」
鼻歌まじりにレタスの葉をちぎる。外側の葉っぱはアルトさんの植物園の肥料にするということで使わない分はまとめておく。
ユぺさん作の包丁が優秀過ぎたので、パン用の包丁や野菜用の包丁、肉用の包丁など、いくつか作ってもらった。嬉々として作ってくれた。
本人曰くそれぞれの包丁のことを、『枝も切れる、カボチャも切れる、骨まで切れる』と言っていた。ユぺさんがカボチャをかなりー硬いものだと思っていることは分かった。
ベーコンも人数分切ったところで、ダイニングの方から人が来る。足音からして一人。
「おはようユリア。今日は…ベーコンエッグかな?」
「おはようございますアルトさん。正解です」
彼は朝からきっちりと身だしなみを整えていて、爽やかな感じがする。毎朝植物園を散歩してきているそうだ。非常に健康的である。
「…あ、ユぺさんおはようございます」
「アルト、早いネ」
「ユリアとかエドガーさんの方が早いですよ」
「あら、二人ともおはよう。早いわね」
カウンターの向こうの平和な会話。カウンターキッチンっていいね。
そのころにはベーコンを焼いて卵を割り入れている。じゅわぁぁぁっと美味しそうな音がする。
お屋敷では当番制だったし、私はキッチンの手伝いをたくさんやってたわけじゃないけど、最近は料理の楽しさに目覚めつつある。料理長のベルナトさんみたいな高級な感じのものはできないけど、量があって美味しいものは作れます。
「…はよう…ございます」
「ジャン、遅いネ!」
そして足音はこちらに来て、
「ユリア…おはよう…」
「おはようございます。もうすぐですから起きてください」
眠たげなジャンさんは寝ぼけているのか意思があるのかわからないけど、なぜかキッチンまでちゃんとあいさつしに来るので不思議である。そんなことしてもベーコンの厚みは変わらないのに。
そして最後にお皿にスルっとベーコンエッグを盛り付けて、出来上がり。
「できましたよー!」
そうして持って行ったものを喜んでくれるまでがワンセットなのだ。
◇
「…あの、前から思ってたんですけど、料理も掃除も出来るようになったし、ちょっと余裕が出てきたので皆さんのお部屋のベッドメイキングに入ってよろしいですかね?」
ここに来てもう二週間。
一人でも魔法が使えて普通のメイドより効率的にこなせているので、今度はまだできていない範囲の仕事に着手したい。
「そうね…みんなはどうかしら?」
「僕はいいですよ。前にも聞いてくれたしね」
アルトさんが真っ先に頷く。この人は常識人だし、周りからの信頼も厚い。
「俺もいいですけどー?別にユリアちゃんが元々やってた仕事なんでしょ?俺は助かるし、やりたいって言ってるならいいんじゃない?」
ここで意外な人間が参加。ってかいいんだ。しかもド正論なんだけどもしかして明日雨とか降る?
「ユぺさんはどうですか?」
「…他のところ触らないネ?」
「もちろんです。元々そういう仕事ですから。ベッドシーツと枕カバーを替えて、終わりです。頼まれれば棚の上を拭くとか、花瓶の水を替えるとかはしますけど」
「それならいいヨ。他、何も、触らないネ」
ユぺさんもサクッと了承していただけた。話せばわかる人だ。
「エドガーさんは?」
「元々そういう仕事だろう。負担にならないなら異論はない」
とすればあとは…
「レイ様、いかがですか?…レイ様?聞こえますよね?」
エドガーさんが問い詰めると、彼女は観念したように言った。
「わかった。みんないいならわかったわよ…」
よし、言質を取りました。
「それじゃあお一人ずつやりますね。覚えるのが大変になっちゃうので部屋の並びでいいですか?それで毎日やって、最後は医務室のところでちょうど一週間ですから」
それで異論はなさそうなので、早速今日からやっていくことにした。
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2章入りました。よろしくお願します。
200PV超えました!ありがとうございます!
これからも応援よろしくお願いいたします。
次話更新は8/20 12時頃です。
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