第16.5話 執務室にて


「――色々考えてみても、やっぱりあの子は何者なんでしょうかね」


 ある日の魔法警備隊基地・執務室。

 そこにはソファで向かい合うスレイアとアルトと、後ろに控えるエドガーがいた。


「全属性が十分に使える中級魔法。三つかけ合わせても問題なく使える無尽蔵の魔力量。それに属性が反映されていない容姿…言い方に問題はありますが、どれを取っても”異常”ですよ?」


 アルトが留守番をしつつ、魔法警備隊に来たばかりのユリアを見ていたのには理由があった。

 人当たりが良くて紳士的なところはもちろんだが、色々と不可解な点のあるユリアのことを魔法医であるアルトに見てほしかったからだ。


「…そうでしょう?私が引き抜いた甲斐があったわ。あの子だけは、絶対に手元に置きたかったの。あの子は特別だもの」

「その時は旦那様と奥様をしっかり説得なさいましたしね」

「そうよ。あの子にはそれだけの価値を感じた…」


 少しだけ目を閉じて、かつての姿に思いを馳せる。

 初めて孤児院で見かけたあの時。

 当時五歳か六歳かのユリアから迸る魔力に圧倒された。そして同時に神様が懇切丁寧に作った、天使のような愛らしさを一目で気に入った。

 それから少しだけ魔法を教えてみれば、教えたことがすぐにできるセンスがあった。

 今では、スレイア自身が得意とする水や氷の系統以外ならユリアの方が使いこなしているだろう。


「でも、努力家で真面目でかわいいところは、あの子が元から持っているところよ」

「お嬢様、かわいいって…」

「性格もかわいいじゃない。真面目だけどたまに抜けてるところがあるのがかわいいわね」


 気の抜けた雰囲気になったところで、アルトの咳払いによって元の話に引き戻される。


「…とにかく、魔力量とか色々調べちゃっていいんですよね?」

「ええ。あの子も物事を理解できる歳になったわ。自分のことは自分が一番知りたいはずでしょう?何か検査をするとしても、ちゃんと説明して同意があればいいわ」

「もちろんです。僕も常識と良識はわかっていますよ」

「ユリアの人生は、ユリアのものよ。くれぐれもそれを忘れないようにしなくちゃね」


 その会話は、この一言で締めくくられた。



―――――――――――――――

短めです。これで一章終わりって感じですかね。


読んでいただきありがとうございます。

よろしければ応援よろしくお願いいたします。


キリがいいのでまた来週から毎日更新再開します。

次話更新は8/19 12時頃です。

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