第16話 だいたい攻略
午後はキッチンをさらに綺麗にして、完全復旧させた。
かまどのあたりが爆発の影響で真っ黒だったけど、ブラシでとにかく磨きまくった。煤と油で汚れてるから、大変だったよね。〈
「洗濯物取り込…む前に、着替えなくちゃね」
私の手は真っ黒だし、袖をまくったはずの腕も黒い。多分顔にも跳ねて黒いのがついているだろう。
流しで顔を洗って、洗濯に回すものはまとめておこう。
◇
外に出ると爽やかな春らしい風が吹いていた。もうすぐすれば暑くなって夏になるのだろう。
「〈
大物は乾きにくいから、しっかり乾かす。タオルとかもたくさん洗濯したので、石鹸の柔らかい香りが風に乗ってくる。
「そうだ、籠忘れてた」
昨日から忘れてたけど、ちゃんと元の場所にあった。取り込んでは籠に入れる。洗濯ばさみはポケットへ。これは無事だったんだよね。
全部取り込んだら屋内へ。そのまま長い廊下を歩いてリネン室の方へ。
「リネン室が使えないとどうにもならないんだよねー…」
置く場所がなければ、掃除をして使えるようにすればいいんじゃないの。というわけで掃除。ここにあったものを全部洗濯に回した時点で大分マシになったから、床を掃いて棚を拭いて、籠の中身をチェックするだけ。
…全部じゃないかって?そこまでやるのが仕事ってものよ。まあメイド歴六年ですからさっさとできますよ。しかもお屋敷ほど広くないし。
綺麗になったら今度はタオルやシーツを置いていく。使用頻度と数を考えて置くのが片付けのポイント。
「――よし、終わり!」
部屋には汚い気配は一切なく、石鹸と陽だまりのにおいがするだけだ。そう、この心地よさがリネン室なの。
◇
「帰ってきて覗いてみたら全部きれいになってるじゃないですか! あの黒焦げかまどもリネン室も!」
「気づくのが早いわね、アルト。そうよ、うちのユリアは優秀でしょう?かわいいし仕事も早いし真面目だし~」
子どもにするみたいに頭をなでられてほっぺたをむにむにされる。
「ちょっ…レイ様、私はもう子どもじゃないんですからー…うぁぁ…」
ここではその振る舞いを注意してくる侍女の方も執事もご当主もいない。ニコニコ見てないで注意してくださいよアルトさん。あなたもそういう振る舞いがよくないってご存じでしょう?わかってますからね私。
「ユリア、すごいネ!」
「ユリアはもうメロー家の技を完全に覚えてるな…」
パチパチと手を叩いてくれるユぺさんと感心しているエドガーさん。
さっさとレイ様に注意してくださいよ特にエドガーさん。あなたそれも仕事のうちじゃないんですかねぇ!お屋敷の副メイド長のフィアさんに言いつけますよ!確かいとこだって聞いてましたよ!
「ってかアルトさん黒焦げキッチンって…」
「事実じゃないか、ジャン。あと僕は黒焦げかまどって言ったよ」
そこ!そんなのどうでもいいからさっさと助けてくれないかなぁ!
「…うぁぁ…お嬢様ぁ……お嬢様おやめくださいぃ……」
「あら。やり過ぎちゃったわね」
お嬢様、気づくのが遅すぎます。あと周り!周りも注意してくださいよ!
――こうして、魔法警備隊に来て四日。これでやっと料理と洗濯は普通にできるようになった。
よく頑張ったよね、私。
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短めです。次にも短めのがあります。
読んでいただきありがとうございます。
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次話更新は8/12 12:12です。
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