第8話 皿の山攻略
食べ終わったところで、午後は食器洗いをやろうと思う。
「あ、そうだ。石鹸とかありますか?」
「あるよ。こっち」
流しの近くの棚から買い置きの石鹼を見つけた。この棚は確認していなかったけど、買い置きがあるだけでまあいい。タオルとか置くべきだね。
「で、それで何を?」
「洗い物ですよ」
私は歌うように言った。
◇
まずは下準備。
さっき手に入れた石鹸をナイフで四等分。そのうちひとかけらを細かく削る。それは適当なコップに入れておく。
そして外に出て、魔法陣を書く。単純に場所の固定なので、式はわかんなくても大丈夫! というか私が魔法式なんて知らない!
「何で魔法陣描けるの…?」
「レイ様に教えていただきました。あれは十二の頃でしたね」
「何やってるんだあの方は…」
なぜかついてきたアルトさんが頭を抱える。そういうのは過去の話ですからもう何とも思ってないです私は。…あくまで私は。
頭を抱える彼を横目で見てから、魔法陣に視線を向ける。
「この世に暮らせし精霊たちよ、我の力と引き換えに、その力を貸し給え…〈
そしてそこにさっきの石鹼の粉を投入! 泡々でぐるぐる回る水の塊ができました!
「何するつもり…?」
「これに…」
私は隣に置いてあったたらいから食器を掴む。
「入れるんですよっ!」
食器を投げて突っ込む! こうすれば勝手に洗ってくれるね!
「うん、いい感じ。アルトさんよかったらお皿拭いてもらえます?ちょっと集中してないと無理そうなので」
「…わかったけどちょっと待ってて!」
彼はどこかに走って行ってしまった。それでも私は続けるだけだ。
球体の側面にお皿を当てても洗えそうだとか、コップは一個ずつ入れた方が良さそうだとか試していると。
「お待たせ!これ入れてみたらいいと思うんだけど」
彼が手にしていたのはまんまるのスポンジのようなもの。
「これ、丸ヘチマの乾燥させたのなんだ。入れてみたらスポンジでこすったみたいな感じになりそうだと思って。余ってるから使って!」
「いいですね。投げてください!」
そして洗ったものを見ると、かなり綺麗になっている。これなら一枚当たりの時間をもうちょっと短くできそうだ。
「さあ!どんどん行きますよ!」
――三十分後。
たらいにいっぱいあったお皿を全部洗い終えたので、やっと魔法を解除した。結構疲れるね、アレ。
「ああ…もう新しい皿の供給が止まるんだ…」
「お皿はまだ残ってるのでどんどん拭いてくださいね」
「はい…」
しょんぼりするアルトさん。
彼はお皿を拭くのには慣れてなさそうで、最初は見ていてかなりヒヤヒヤした。量こなせば少しは慣れたみたいでよかった。何よりもね、量なんだよ、量。
私も布巾でどんどん拭いていく。お屋敷でやってたパーティーの時より楽でいいね。
「早っ…しかもあんな複数掛け合わせた魔法を使った後に…? おかしすぎるって…」
「あれは前から考えてたんですけど、初めて使ってみましたね。魔力消費が中々すごいです」
「……」
彼はもう何も言わずに手だけを動かしている。そろそろ私も集中してやろう。
集中してやれば十五分ほどで全部拭き終わった。
「いやー、アルトさんのおかげで早く終わりましたよ。ありがとうございます」
「うん…うん…そっか。よかったよ…」
彼はそのままふらふらと建物内に戻っていった。お疲れ様です。
「あとは片付けかな」
拭いたお皿は午前中に綺麗にした食器棚にしまっていく。種類や棚の高さ、用途に合わせてしまっていく。高いところは椅子を使う。
これで棚一つ分は埋まった。残り半分は明日以降。
「次は…食料庫かな」
食料庫は、キッチンと繋がっている小部屋である。昨日ちょっとだけ覗いたけど空っぽだった。
「人が入ってないからそんなに汚くなさそうだけど…綺麗にしますか」
窓が小さいので魔法無しで普通に掃除する。棚の上を拭いていたら、瓶が置いてあった跡もあった。まともに使われていたらしい。
蜘蛛の巣が残っていないかと壁を見ていたら、あるものを見つけた。
「魔法陣?…式はやっぱりわからないや」
何でここに魔法陣があるんだろうね。式もわからないからあとで誰かに聞いてみるしかない。魔法陣は一旦後回しだ。
狭いのでそれほど時間はかからないし、空っぽなだけで他に比べれば案外綺麗だ。前の料理人さんが引き揚げる時に綺麗にしていったのかな。助かります。
ダイニングの時計を見ると、時刻はもうそろそろ四時。
夕方には他の人が戻ってくるそうだから、今のうちに買い物に行こう。
―――――――――――――――
ユリアはこの後も色々な場所を攻略していきます。
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次話更新は8/7 8時ごろです。10話くらいまでガシガシ出します。
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