第7話 掃除の時間
まずは食器を発掘。一気にやればいいんだけど、(汚すぎて)精神的に無理なので何とか必要なものを見つけては水に浸ける。発掘したけど洗うのは後回しにするものは種類別に積み重ねていく。
その間に窓を開けに行こう。
廊下の窓を開け、光が入って風を通すだけで淀んだ空気が抜けていく。守衛さんがいるからセキュリティは大丈夫。あとは他の人の部屋も気になるけど、勝手に入ったらまずそうなので今日はなし。
「廊下くらいはやるかなー…〈
魔法で風が抜けるようにして、ほうきでどんどん掃いていく。埃が勝手に外に行くから非常に楽だ。天井の蜘蛛の巣も飛んで行ってしまう。
これは掃除が行き届いていない場所だし、建物が石造りだからできる。お屋敷は花瓶や絵画がかかっているのでやったら絶対に怒られる。
そして一階の廊下は二十分で掃除が終わった。二階も同様にして終わらせた。
「じゃあ次は…ダイニングかな」
ダイニングはさらに弱くした〈
「〈
一旦ダイニングテーブルと椅子を端っこに寄せて、濡らした床をブラシでこすって綺麗にする。手慣れたものよ。ついでにキッチンの床も綺麗にした。
「ユリアー…おっと。ちょっと外でお昼買ってくるね」
「はい。いってらっしゃいませー!廊下の床は無事ですからー!」
濡れてるところに突っ込みたくはないからね。ちゃんと言っておかなくちゃ。
あともう少しで終わりかな。〈
最後は〈
「……は?」
廊下の方に紙袋を抱えたアルトさんが呆然とした顔で立っていた。
「え?……ああこれ〈
いやそりゃ驚くよね。八人くらい囲めそうなダイニングテーブルをメイド一人がひょいっと持ち上げてたら。
◇
綺麗になったダイニングで、アルトさんと向かい合って買ってきたサンドイッチを食べる。
「〈
「昔、レイ様に教わったので。…お屋敷に勤めるようになった十歳の時に」
「あの人はなんてものを教えてるんだ…十歳の女の子に…」
驚愕を通り越した呆れ。私も昔はなんとなーく覚えちゃったけど、今振り返ってみたらとんでもないよね。
「いきなりあれはねー…驚くって」
「あはは…お屋敷は人手があって、魔法なしでやってたんですけど、ここなら丈夫そうだしいけるって思いまして…」
お屋敷にいた頃に魔法を使って仕事をするのは、たまにしか開けない倉庫の整理くらいだった。あとはちょっとした火起こしとか。井戸まで行くのが面倒になってバケツ一杯の水を出すとか。
「中級魔法までは使えるって聞いてたけど、これは逸材だな…」
「あ、でも上級魔法はできないんですよ?どの属性も」
彼のペリドットのような目がこちらを見つめた。
「ここまでできて上級魔法が使えない…?いや確かに中級魔法までは魔力量さえあれば誰でもできるけど、そこからはセンスの問題だし…」
「そうなんですよ。どの属性にも向いてない、としか言い様がないんですよね。これだけできればメイドの私としては十分なのですが」
メイドですから。別に魔法警備隊に来たけど魔法使いとして働くわけじゃないんですから。
「おかしいようには見えないんだけどなー…」
「私としても何にもないんですけどねぇ…」
「…今まで何もないなら、とりあえず問題なさそうだけど…。何かあったら僕に言ってね。一応これでも魔法医だから」
にこっと、上品な笑みを浮かべた。
メイド如きにも親切にしてくれるなんてすごいなぁ。生活環境は酷い有様だけど、労働環境はよさそうなんだよね、ここ。
―――――――――――――――
労働環境の良さはマジで大事。次も魔法使いますよ!
読んでいただきありがとうございます。
ブクマとかPVがじわじわ増えてて嬉しいです。
引き続き評価や応援などよろしくお願いいたします。
次話更新は今日の12:45です。ストック余ってます。ゴリゴリ行きます。
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