第2話 魔法警備隊の惨状


 魔法警備隊。

 それは時折出没する「魔物」に対抗する、このサントロワの軍隊の中の一部隊である。

 魔法という特別な力が使いこなせる者がここに所属し、街を魔物から守ることを仕事にしている。ここは平和な方だからあまり強い魔物は出ないけど、必要な組織だ。


「ここに来るのは初めてよね?」

「はい。お屋敷ほど広くはなさそうで安心してます」


 魔法警備隊の隊舎を見上げる。堅牢な石造りで、見たところ二階建てだろうか。長いけど、勤めていたお屋敷ほど大きくはない。


「そうね。ユリアにはそう見えるのね」

「メイドでございますゆえ」


 私は十歳からの六年間、屋敷メイドとして掃除、洗濯、料理、さらにはちょっとした庭の管理まで一通りできるようになった。

 高度な魔法が使える者は少ないので、魔法警備隊は常に人材不足で、家事まで手が回らない。さらに最近ここで勤めていたコックの方も引退することになった。とりあえずその打開策として、家事一通りができる私がここに来ることになったのだ。

 一通り外観を眺め終え、いざ中へ入ってみると、


「うわぁ…」


 隅に溜まった埃、天井に巣食う蜘蛛の巣、淀んだ空気……早速だけどもうなんとも言えない。


「風は通すようにしてるけど、掃除までは手が回らないのよね…」


 申し訳なさそうに言われる。メイドとしてこの状況はとても許し難い。お嬢様はこんな環境で暮らされていたのかと…。


「とりあえず荷物を置きましょう。ユリアの部屋も用意したわ。必要な家具は運んであるし、ある程度はユリア好みに変えてもらって大丈夫よ」


 そうして案内された部屋はというと、


「うーん…」


 多分掃除はしたんだろうけど、まだ隅に埃がうっすら見えるし、ベッドメイキングもなっていない。一度自分で掃除して、快適な部屋にしようと早速心に誓った。



 とりあえずトランクだけ置いて他も見て回ったけど、本当にメイドとして、いや、人として看過し難い状況だった。

 廊下は玄関と同様埃が積もっているし、壁に蜘蛛がいてぎょっとした。その上暗いしジメジメしているのが何とも嫌な感じだ。

 台所も覗いたけど汚れたお皿が山積みになっていて、本当に目も当てられない惨状だった。空っぽの食料庫もネズミがちょろちょろしていないのが奇跡だと思う。いや、むしろ何もなさ過ぎてネズミも寄り付かないのかな…?


 ざっと見ただけでこんな状況なら、一体他はどうなっているのだろう。

 それを想像しただけで私は軽く眩暈がしそうだった。だけどそれをどうにかするのが私の仕事なんだから、と自分を鼓舞した。



―――――――――――――――

かなりヤバいところからスタートです。


読んでいただきありがとうございます。

良ければ応援よろしくお願いいたします。


次話は8/2 12:30に出します。

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