魔法警備隊のメイド【1000PV突破!】

葉ノ

1章 魔法警備隊の惨状と攻略

第1話 辞令は突然に

「魔法警備隊…ここだよね」


 私、屋敷メイドのユリアは、今日から魔法警備隊のメイドになります。


 先に断っておくけど、お屋敷を追い出されたわけじゃない。領地運営に困ってクビにされたわけでもない。そもそも御一家は健在で、領地運営もうまくいっている。

 これは転職というより、人事異動の方が正しい表現かもしれない。


 私はこの領を統べるサントロワ家のお屋敷で働いていた。そして今日からの勤め先になる魔法警備隊は、そのサントロワ家のものだから。

 たまに雲が浮かぶ青空をバックに目の前に聳えるしっかりした門は、権力とこの基地の重要さを物語る。


「君かい?ここの新しいメイドになるのは」


 門の前に突っ立っていたからか、守衛さんがこちらに来た。


「はい!ユリアと申します」


 守衛の人にも丁寧に頭を下げる。何よりも礼儀と真心が大事。これがメイドの基礎。


「ゼノ!中の人呼んで来ーい!」

「はいはい」


 ゼノと呼ばれた守衛その2の方は、冷静で投げやりな返事をしていたけど普通に走って行ってくれた。


「領主さまの屋敷から来たんだろう?」

「はい。本日からこちらの家事を担当させていただきます」

「それにしても…珍しいね、その髪と目。特徴を聞いていたけど、まさか本当に……ああ、見た目をとやかく言うのは失礼だったね」

「いえ。もう慣れっこですから」


 そうですよ。守衛さんも驚くような見た目ですよ私は。

 淡い紫の髪に、紫がかったマゼンタの瞳。人形みたいとか、本物なのかとか、どれだけ言われたことか。私の他に同じような特徴を持った人の話も聞いたことがないくらい珍しいのだ。

 上手いこと孤児院に預けられて、人攫いに遭わず、奴隷にもされず、娼館に売り飛ばされもせずにここまで生きてきた。正直自分でもかなりすごいことじゃないかと思ってるくらいだ。


「そうだそうだ、紹介状はあるかな?」


 あ、間違って紹介状もトランクの中に入れちゃった。どうしようかな…


「ユリアーー!!」


 そこで前から突撃を食らう。掃除洗濯で鍛えた体で何とか受け止める私。


「…うわっ……っとと、…お久しぶりでございます、レイお嬢様」

「ふふふ…久しぶりね、ユリア。もうこんなに立派になっちゃってー!」

「お嬢様苦しいですお嬢様聞こえますか」


 締め付けが強い。失礼にならない程度に背中を叩くと、勢い余っちゃった、とやっと解放してくれた。相変わらずだなうちのお嬢様は。

 さっと乱れたお仕着せを整えてから、一礼する。


「お嬢様もご存知でしょうと思いますが、本日よりこちらのメイドとして勤めさせていただくことになりました」

「ええ、よく来たわね」


 にっこりと聖母のような微笑みを浮かべるレイお嬢様こと、スレイア・フォン・サントロワ侯爵令嬢。このサントロワの領主一家の末のお嬢様だ。氷のような淡い水色の髪に、深い紺碧の瞳が特徴的な、私が見てきた中で一番美しい方だ。

 レイお嬢様は孤児院によく来てくださって、昔からとてもよくしていただいた。さらに、私のことをいたく気に入ってくださり、屋敷勤めのメイドとして引き抜いてくださったお方だ。私はこの方に一生頭が上がらないだろう。


「レイ様、このお嬢さんでお間違いありませんか」

「ええ。間違いなく私のお気に入りのユリアよ。かわいいでしょう?」

「一言余計ですよ、お嬢様」

「もう、そんなところは成長しないでいいじゃないの」


 『逆にお嬢様はそういうところこそ成長なさった方が良いですよ』という言葉は飲み込む。例え正論でも言っちゃいけないことはある。これもメイドの心得。


「さあ、案内するわ。エイデン、ゼノ、あなたたちもありがとう。仕事に戻りなさい」

「「はっ!」」


 私の後ろから、威勢のいい返事が聞こえた。




―――――――――――――――

始まりました!


読んでいただきありがとうございます。

のんびりやっていきます。

良ければ応援よろしくお願いいたします。


次話は8/1 18:30に出します。良ければ読んでください…!

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