第17話 火柱02
──彼らも誰かの友人であり、恋人であり、家族だった……。
レインは
「「「ウルデンウォルフが出たぞ!!」」」
衛兵たちは遠い砂丘を指さしている。レインとロイドが視線を向けると砂丘の頂上に馬よりも巨大な狼が出現していた。最初は一頭だけだったが、一頭、また一頭と数が増えてゆく。やがて、砂丘と星空の境界線は狼の群れで埋め尽くされた。
狼たちはウルデンウォルフと呼ばれている。ウルド砂漠に住み、
「ち、父上……」
レインが後ずさるとロイドは微笑んだ。
「恐れることはない。彼らは友軍だ」
「友軍……」
「そうだ。よほどのことがない限り人や馬を襲わない。友として尊重し、縄張りを犯さなければな」
ロイドの言う通りウルデンウォルフはこれ以上近づいてこない。レインが安心しているとロイドは親しげにウルデンウォルフを見つめた。
「きっと、彼らも友を見送りにきたのだろう。義理堅い連中だ。レイン、中心にいるウルデンウォルフを見てみろ」
「……」
レインは群れの中心を見つめた。そこにはひときわ体格のよいウルデンウォルフが逞しい四肢を大地に伸ばして立っている。豊かな毛並みは満月の光を浴びて銀色に輝いていた。星空を背負う姿は神々しく、天狼星に住まう
「あいつは『キース』という名前だ。キースリング家の名前が由来となっている」
「父上が名付けたのですか?」
「いや……」
ロイドは遠く馬上のサリーシャへ視線を送る。サリーシャもまたキースを見つめていた。
「名付けたのはお前の母親だ」
「母上が……」
「そうだ」
レインが意外そうに言うとロイドは大きく頷いた。
「面白いことを教えてやろう。本当の『
「じゃあ、父上もキースの背中に乗ったことがあるのですか?」
「あはは、俺には無理だったな。俺はキースに乗ったことがない」
ロイドは少し残念そうに笑った。
「キースが背中を許すのはたった一人。サリーシャ・ウォルフ・キースリングだけだ。サリーシャこそ『
「……」
レインもサリーシャを見つめた。サリーシャは昔を懐かしむようにキースを眺めている。優しげな横顔はどこか嬉しそうだった。
「そろそろ行くぞ。お前もリリー殿下が待っておられる」
「はい、父上」
ロイドはキースや炎に背を向けて歩き始める。レインは父の背中を見つめながら歩いた。
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