第18話 ソロ・ダンジョン(2)
よっ、ほっ、はっ、と。
カタカタと歯を鳴らして掴みかかってくるスケルトンの腕を
ダンジョン第二階層にもかなり慣れてきて、徘徊している単独のスケルトンなんかはルーティン的に決まった手順で倒せるようになってきた。
「でもこのスケルトンはアイテムを落とさないんだよねー。魔法道具同好会としては、もう少し収穫がないとひよりに申し訳が立たないなあ。そろそろ下に降りてみようか……」
第三階層からはコボルトなど群れを作る魔物が出るらしい。ソロプレイでは厳しいことになりそうだけど、パーティを組むあては今のところない。
「初回だけでもヒコに頼んでみるか……」
各階層の地図は購買で無料配布しているけれど、階層到達者の称号がないとその階の地図はもらえない決まりになっている。称号システムってこんなところで役立っているんだね。
ただ、地図が手に入らないと新しい階層のリスク度合いが判断できなくて困る。ほかにもいろいろと口コミを集めたり、みんなの感想を聞いたりして情報収集しているけど、ほかの人が魔物と戦っているところを見たことがないのでいまいち難易度が実感できない。
ボクができるだけひと気を避けて空き部屋の探索をメインにしていることもあるけど、そういえば第二階層って部活をやっている闘技場周辺以外では人を見かけないよね。
ちょこっと第三階層に下りてすぐに戻ってくれば、称号が手に入って地図がもらえるといえばもらえるんだけど、ここは慎重を期してパーティを組んでから挑戦するべきかな。まだリスポーンを経験したことがないからどのくらい痛いのかは知らないけれど、敢えて試す必要もないことだし。
このあたりの通路は何度も
「あ、でも最初のところの罠はジャンプして通り抜けたからそのままだっけ」
トラップ解除の練習を兼ねて通ったところの罠は全部トラップリシンダーで解除しているのだけれど、さすがに何度もやっている最初の罠は面倒になってきて解除せずに回避したっていうこと。帰りに踏まないように気をつけなきゃ。
そんなことを考えながら帰り道を進んでいると、誰かが言い合いをする声が聞こえてきた。 曲がり角からそっと覗いて聞き耳を立てる。
「イタイ、痛いって」
「がっちり挟まってる。引っ張るから我慢しろ」
「……っ、最悪。足が動かねぇ。折れたか、クソッ」
「おかしいな。このまえ来たときは罠が動かなくなってたんだけど。ほら、ポーション」
「だからって、わざと罠を踏むことないだろう」
「悪かったって」
ポーションを何本か飲んで動けるようになったみたいだけど、怪我をした足を引きずるようにして階段部屋の方向へ戻っていく。
あれって、ボクのせいだよね。
ボクが毎日練習で罠を解除していたものだから、後からくる人が触れても罠が動かなくなっていたんだ。それに慣れてしまったところに、しばらくぶりで罠をそのままにしたからかかってしまったみたい。
隠れるように壁に預けた背中に冷や汗が流れる気分で反省する。
むやみに罠を解除して回るのはやめよう……
だけど、こういう不測の事態を考えると一人でダンジョンに潜るのはやっぱり危険が大きいことが今ので分かった。最低でも二人で行動すべきだな。
次の日、朝練終わりにヒコに相談してみた。
「いいよ」
「でも部活に出なくて大丈夫なの?」
「もともと闘技場での訓練は二日に一度なんだ。そのほかの曜日はダンジョンに潜って魔物との実戦が推奨されているし」
「でも、剣術部って毎日闘技場で対人戦やってるよね?」
「ダンジョンの魔物は割と動きが単純だからな。
「剣術部って、なんていうかバトルジャンキー?」
「そりゃあ、こんなもん振り回して相手を倒すことだけ考えてるんだからな」
ヒコが右手の直剣を掲げて苦笑いする。
そりゃそうか。剣道なんかはスポーツだからルールの中でポイントを取る技を磨くけれど、剣術部は相手を動けなくすることを考えて技を磨く。ダンジョンの床は石畳だから無理だけど、土だったら目潰し代わりに相手の顔に投げつけることくらい平気でやるだろう。だからかな、うちの学園には剣術部と剣道部の両方があるけれど、犬猿の仲だって聞いている。
「下まで降りるのに手間がかかるから、最近じゃだんだん行かなくなってみんな闘技場のほうに通う感じになってるけどな」
ダンジョンが寂れているのって、こういうところなんだろうね。サ終間近のソシャゲみたいでやだなあ。
「じゃあ、今日の放課後は大丈夫だね」
「ああ、時間になったら購買部の前で落ち合おう」
よし、今日の放課後は第三階層にチャレンジだ。
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