第76話 VS魔王④

「取り敢えず結構離れたし降ろすぞ」

「う、うん」


了真に捕まりかなり後方まで下がると背中から降ろされる。少し悲しい


「そんな長くは落ち着けんだろうがしばらくはあいつらが抑えてくれる筈だから少しだけ話するぞ今から」

「話…?」

「お前がなんで魔法使えないのかのおおよその推測と活躍出来ん理由の話」

「わかるの…?」


了真の真剣な眼差しが私を射抜く


「まだトラウマなってんだろお前。魔法使うことに」

「え」


なんで分か…


「なんで分かるのって顔してるけど当たり前だろ?親友なんだからさ」

「私…」

「そのトラウマが枷になって本来の威力が出せてないんだよ多分。イクシオンの力はそれぞれ大小の違いあんま無いって言ってたし…」

「イクシオン様の力?」


何の話だろ


「あれ聞いてない?魔法少女がイクシオンから貰った魔法って元はイクシオンが持ってた能力なんだよ」

「そうなの?」

「色々あって使えなくなった能力を適性がある人に渡してるって感じ」

「ほへぇ」


そうだったんだ


「いやまぁそれは置いといて…まぁだからトラウマさえ無くなれば皆と同じように戦えるって訳だよ。お前だけが何も出来ないことは無いから安心していいぞ」

「なん」

「まぁ親友だからな」

「理由になってないよ…」


なんで知って…と言おうとするも言葉の途中で何故か食い気味に了真が親友アピールをしてくる。なんで?


「でも正直俺にはお前のトラウマをどうにかしてやる事は出来ん!」

「めっちゃ正直になるじゃん急に」

「まぁそこら辺は本人がどうにかするしかない問題だからさ…だから俺が取り敢えず言える事は安心して欲しいってくらいだな」

「安心?」

「お前の事だから仲間に誤射とか何らかの理由で攻撃しちゃったらとかそれで消えない傷を負わせちゃったらどうしようとか考えてんだろ?」

「なんでそんなに私の理解度が高いの???」


一言一句違わなかったんだけど…え何?私のこと大好きすぎない?両思いだね


「だから安心しろ。そんな事は俺がいる限り絶対にさせない。誤射した所で着弾する前に叩き切るし何らかの要因で誤射させようとするやつは俺が先に八つ裂きにする」

「まぁ了真なら出来そうだね」

「おう、だから安心して魔法を使え。俺がいる限りお前を殺させはしないし仲間に傷も負わせない」

「でも…」


頭では分かってるんだけどどうしても無理で…


「うん、まぁ分かってる。俺にはそんな心を救う劇的な一言なんて言えはしないしな。だからちょっとずるい手を使わせてもらうな」

「ずるい手?何そ…ングッ」


………え、何?え、え、え…今…え?キ…


「これで少しくらいは安らぐかなって…て驚きすぎじゃない?初めてじゃないじゃん別に」

「素面の精神状態だと初めてだし…え?」

「そんな動揺する?…まぁいいや今なら届くかもしれないし俺の思ってることぶつけていい?俺不器用だし文法とかぐちゃぐちゃかもしんないけど」

「ふぇ?」


思ってること…?


「何度でも言うがアレは不幸が重なった事故みたいなもんなんだよ。結果論として俺は生き返ったからぶっちゃけもう俺はあの件はどうでもいいんだよ。今めちゃくちゃ幸せだしさ」

「…」

「だからお前にも気にしないで欲しいわけよ。お前は笑顔が一番似合うんだからさ、絶望顔なんて似合わんよ?」

「ふふ…何それ…」

「だから気にすんな、前向いてくれ。申し訳ないと、罪悪感を感じてしまうって言うならその分俺に笑顔を見せてくれ。その方がありがてぇんだわ」


了…


「てかなんなら前線戻って欲しくないし俺」

「え?」

「正直俺お前に傷ついて欲しくないもん」

「え」

「戦わないで平和な日常を笑いながら過ごして欲しいって思ってるし…正直俺が守るから傍から離れんで欲しいし…」

「え」


怒涛の了真の暴露にえとしか言うことが出来ない


「でも誰かのために戦ってるお前の顔があんまりにも嬉しそうやからさ」

「あ…」

「いつやったかはよう覚えとらんけどお前が明るくなりだして人助けに楽しみを見つけ始めたのって俺と一緒に迷子の子供の親探してからやん?」

「そう…言えば…」


夏祭りの時だったかに了真と遊んでたら迷子の子供を見つけて…無事親に会えたその子に笑顔でお礼を言ってもらってから私は変わろうとしたんだった…


「そんなお前に戦わず守られてろなんて言えんのよ俺は。だからこれしか言えんねん。頑張れって、辛い時は寄り添ったるからって」

「了真…」

「辛いのは分かるし、苦しむのも分かる。それでも自分が何を思って戦ってたかだけは忘れちゃあかんよ」

「戦う理由…」


そうだ…私はただ友達皆とかけがえのない親友が幸せで居られるために戦ってたんだ。なのにその親友を傷つけて何のために戦ってたのか分からなくなって…でもその親友は生きていて私に前を向いて欲しがってる


パンッ!


自分の手で強く自分の頬を叩く。クヨクヨするのはもうやめよう、心をガラッと入れ替えよう。今了真は生きている。クヨクヨするくらいなら今の了真のために戦えばいい


後ろじゃなくて前を見ろ、私


「…覚悟は決まった?」

「うん。まだちょっと苦しくはなるけど…今の了真のために精一杯頑張ろうって思えたよ」

「それは良かった…頑張れよ」

「うん。全部終わったら沢山褒めて…沢山、たーくさん、私を使ってね」

「おうお…ん?」


私の言葉を聞いて相槌を打っていた了真の顔に疑問が浮かぶ。どうしたんだろ…あっもしかして使っての所に疑問持ったのかな?


「吹っ切れたとしてもドMなのは全く変わんないから帰ったら皆と一緒にたっぷり虐めてね、了真」

「今そんな話の流れじゃなくない!?」


驚愕する了真に笑顔を返しながら魔法を使う。もう、迷いなんて何も無い


「機甲神」


迷いが無くなった途端頭に思い浮かんだ機械神装のバージョンアップ版を使ってから最後に了真に一言告げる


「行ってきます!」

「…行ってらっしゃい」


手を振る了真に手を振り返しながら前線へとかけていく。今戦ってる皆の為にも!操られちゃってる魔王の為にも!私へのご褒美の為にも!全力で戦うぞ私!


後ろから聞こえた頑張れの言葉にまた速度が上がった


────────────────────

カァッ(モチベに繋がるので感想や星ください)

カァッ(VS…魔王…?タイトル詐欺かな?)

カァッ(不器用なりに思いを込めた言葉はしっかりと真菰に届いたようですね。流石やで了真君)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る