第46話 田辺晴の試練
──side晴
「うーん…門しか無いかぁ…」
意識を失って目覚めたら何か凄い大きい門が目の前にあったのでそれ以外にも何かないか1時間探したが何も見つからなかった
こう言う時隠しステージみたいなの何かあるんじゃないの?
本当に門しかないことある?
裏切られたよ私のオタク心
もう潜るしか無いのかなぁ…思い出すのも嫌なんだけどあれ…
まぁ潜らないといけないよなぁ…
そう思いながら門を潜り先へと進む
また眩い光に目を瞑りながら私の意識は暗転して行った
「晴ー!ご飯よー!」
「はーい今行くー!」
読んでいた漫画を閉じてご飯を作ってくれた母の元へと向かう
最近ハマっているラブコメは本当に面白い
キラキラとした青春が渦巻いていてどんな困難があっても乗り越えてくれる安心感がある
私もこんな青春過ごしてみたいなぁ
「あんた学校は今どんな感じ?大丈夫?辛くない?」
「うん!大丈夫だよお母さん!」
私のお母さんは心配性だ。お父さんが溜め込んじゃうタイプで体を壊してからそのきらいが1層増した気がする
でも小学校は楽しいし心配しなくて良いのに
「友達はいる?」
「この前も家に来た●●ちゃんがいるじゃん」
「お母さん心配で心配で…」
「大丈夫だって!」
本当に心配性だなぁ…
その後はご飯を食べ終わったので歯を磨いてお風呂に入って布団の中へ入る
明日は学校があるので早く寝よう
漫画でも早起きは三文の徳って言っていたし
……三文ってなんなんだろう
Zzz…Zzz…
ピリリリリピリリリリピリリリリ
「んー……朝かぁ…」
けたたましく鳴る目覚ましの音で目を覚ます
今日は学校があるし早く支度をしないと
通学路を歩いている最中●●ちゃんと出会う
「あっおはよう●●ちゃん!」
「おはよー晴ちゃん!」
●●ちゃんと話しながら学校へと向かう
4年になってから少し…まだまだ学校には慣れない…朝起きたくないし授業めんどくさい…
「今日何の授業あったっけ」
「今日は確かー国語と理科と算数と体育と音楽が2時間あるよ」
「めんどくさー」
「分かるー」
5時間で終わらないのかなぁ…
まぁそんなにボヤいてても何かが変わる訳もなく…普通に6時間授業を受け終わったので帰ろうとする
支度をして帰ろうとした時■■君に呼び止められる。何だか話があるみたい
■■君はクラスのムードメーカーで私と喋ったことはあんまり無かった筈だけど…何かあったのかな?後何で●●ちゃんはこっちを睨んできてるんだろう…何かしちゃったのかなぁ…
「好きです!田辺さん!俺と付き合ってください!」
「えっ」
まっすぐ■■君から好意を伝えられる
漫画で見てきたような展開に胸がときめくかと思いきや私の心はピクリとも動かなかった
まずあんまり喋ってないのに告白されてもと思うし…私も■■君の事あんまり知らないからなぁ
「ごっごめんなさい!私貴方の事あまり知らないので付き合えません!」
頭を下げながら話す
「……そっか。ごめんね田辺さん。じゃあこれからもっと知ってもらえるように努力するよ」
これで丸く終わったはずだ。それなのに●●ちゃんは私を睨んで離さない
「帰ろっか!晴ちゃん!」
「うっうん!帰ろっか!」
今日は何事もなく家に帰ってご飯を食べて寝た。寝るその時まで●●ちゃんのあの顔が頭を離れなかった
今日も目覚ましの音で起きて支度をして学校へと向かう。今日は●●ちゃんと出会うことは無かった
学校に着くと皆がこっちを見てヒソヒソと何かを喋っているような気がする
何かしたんだろうか…私…
そう思いながら自分の席へと向かうと
「何…これ…」
私は声を失った
机には『死ね消えろ人でなしカス学校に来るな』など悪口が無限に書かれていた
一体…誰が…こんな…
そうして机の前で呆然としていると●●ちゃんが近付いてくる
「どっどうしたの晴ちゃん!これ!こんなの書くなんて最低だよ!」
「そっそうだよね…」
私のために怒ってくれるなんて…●●ちゃんは良い人だなぁ…
それから机につけられた落書きを雑巾で拭き取ってから一日が始まった
私の地獄はそこからだった
毎日毎日机に謂れのない落書きを書かれ続けて何故か皆から無視されることが増えた
トイレで水をかけられた、教科書がゴミ箱に捨てられていた黒板に売女と写真付きで書かれていた
知らない上級生に殴られた蹴られた
これがいじめだって認識した頃には私の心はひび割れて壊れてしまっていた
何をされても耐えた。お母さんに心配をかけたくなかったから
耐えた。●●ちゃんだけはいつも私を庇ってくれるから
耐えた。お父さんも心配しちゃうから
耐えた。耐えた。耐えた。耐えた。
そんなある日●●ちゃんが委員会の仕事があるらしく1人で帰った
そんな時に忘れ物を思い出してしまう。それも結構大事な宿題の紙
戻りたくないなと思いながらも重い足を引きずりながら学校へと戻る
戻らなければこんな事知るはず無かったのに
聞いた、聞いてしまった
「あんた良くあいつの近く居れるよねー…あんたが悪い噂流して孤立させたのに」
「えーだって絶望してるのが特等席で眺め続けられるんだよー?さいこーじゃーん」
「好きな男が振られたからってあんた…まぁ私はどうでもいいけど…」
「てか明日の机に書く悪口一緒に考えてくれない?最近ネタが無くなってきて──」
聞きたくなかった
聞かなければまだ耐えられたのに
私はその日心が折れて
部屋から出ることはなくなった
「今日もご飯ここに置いておくからね…母さんは晴の味方だよ」
1年がたった。私はまだ部屋にいる。信じられなくなった、人が。仲良くしてた人が1つの事であんなになるなんて信じたくなかった
最近はずっとゲームをしたり漫画を読んで過ごしている
こんな事では駄目だと分かってる
なのに部屋から出ることが出来ない
一日が過ぎるのが遅い。もうこのまま消えてしまいたいのに、色んな理由をつけて生きてしまう
勝手に明日が来る。私がどんな気持ちでも
そんなある日ふと外に出たくなった
何故だか陽の光を浴びたくなった。何故だか何かが変わる気がした
大喜びしてくれたお母さんと話してからその辺を散策していく
遠くの方に●●ちゃんを見つけて離れるように歩いていった
逃げるように離れて離れて…気が付けば私は知らない海にたどり着いていた
少しだけ…ほんの少しだけ救われるような思いになった
波の音を聞いていると何だか心が落ち着いていった
そうやってぼーっと海を見つめていると声をかけられる
「なにしてんの?」
貼り付けたような笑みを浮かべた年上の少年だった
人と話すのは久しぶりだったけど何だかその人に親近感が湧いて…気が付けば言葉を紡いでいた
「ふと外に出たくなったから…いっぱい歩いて…気が付いたらここ」
「迷ってんじゃんそれ…帰れんの?」
「ふふ…無理…」
「えぇ…」
「お兄さんは…?」
「プチ旅行。家居たくなくてねー色々あったから」
不思議な人だった。何故だか親近感が湧いていつの間にか笑いながら喋っていた
そして気付けば私の事情を話してしまっていた
「……殺せば?」
「物騒すぎない!?」
「いやもう殺すしかないよそんな奴ら…何言っても聞かないと思うし…引っ越してくる?こっち」
「え?」
「そっち居ても中学行ったらまたそいつら居るし…だったら引っ越して他の中学校行った方がいいんじゃない?」
「でも…」
「親に言ってみれば?こっちつってもそんな大きく距離変わるわけじゃないしそのまま仕事も問題ないと思うよ」
「迷惑になっちゃうかもじゃんお母さんたちに」
「両親は君に幸せになって欲しいと思ってると思うよ?」
その言葉を聞いて最近全く思い出せなくなったお母さんやお父さんの笑顔が脳裏に浮かんでくる
ずっと…ずっと、幸せになってと願われていた気がする
私は決意を込めた目でお兄さんを見る
「うん!私お母さんたちに話してみようと思うよ!」
「ん、頑張れー一度に全部変えようなんてしても無理だと思うし最初は1週間に1回家出るとかを目標にして行こうな」
「うん!お兄さんはどっち住んでんの?」
「■■■の方」
「待っててね!」
「うん…まずは家ちゃんと帰らないとな」
「はっ!そうじゃん!」
それからお兄さんが持ってたスマホで道を探して頑張って帰ってからいっぱいいっぱいお母さんたちと話をした
そこからはトントンと話が進んでその月のうちに引っ越すことになった
ご近所さんに挨拶しに行ったらお兄さんが出てきた時の衝撃は忘れられない
それから偶に家を出れるようになってお兄さんと真菰お姉ちゃんと遊べるようになって毎日が楽しくなって行った
お兄さんには感謝してもしきれない
やっぱりお兄さんは最高で完璧でかっこよくて優しくて何処か影があってそこも引き込まれるような感じがして最高だし仲がいい人以外には見せない心からの笑顔なんてコロッと言っちゃいそうになるしこっちを気遣ってくれるし寄り添ってくれるし…それでそれで…
そんな事を考えているとパリンと何かが割れる音がしたと共に目が覚める
「おー?」
「あっおかえり晴」
真菰お姉ちゃんに声をかけられる
その先には凛さんと咲良姉さんが居る
私の大切な大切な人たち
私は笑顔で近付いて行った
「たっだいまー!」
ありがとうお兄さん。私は今最っ高に幸せだよ!
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カァッ(モチベに繋がるので感想や星ください)
カァッ(何か矛盾発生してたら教えてください直します)
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