第45話 夜染真菰の試練 後編

カァッ(2話分の文字数になりました。お得ですね)

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「何か欲しいのある?」

「んーグミ食べたーい」

「おけ自分で買え」

「何で聞いたの!?」


今の絶対買ってくれる流れだったじゃん!


「まぁ俺はこんなもんかなぁんじゃちょっと会計してくるわ」

「行ってらー」


そう言って了真はレジに向かっていく

何でさっきからずっと嫌な予感が頭から消えないんだろう…え?そんなに負けるの?


ス○ブラ全敗するの?私


「おう買ってきたぞ」

「あっおかえり了…真?」

「ん?どうした?」


帰ってきた了真の胸には何か小さな柱が通り過ぎたかのような穴が空いていた


「なん…で?」


思い出した…思い出した思い出した思い出した思い出した…何で忘れてたの?前も了真がこんなことになって…私は…気を失って…


「どうしたんだよ真菰ー顔色悪いぞーお前」

「痛く…ないの?」

「え?何が?」


胸に穴が空いている事なんてなんて事ないかのような態度に背筋が凍る

それでも聞いてしまうそれでも言ってしまう

それでも夢なんじゃないかなと願ってしまう


「その胸の…穴…は、大丈夫…なの?」

「はっはっはっはっはっはっは」

「了…」

「ははははははは」


それを聞いた途端了真が豹変した。光のない目をギュルギュルと動かしながら狂ったように笑い始める


「この傷を…この穴を…つけたのはお前じゃないか、親友」

「え…?」

「痛くないか?痛いに決まってる。突然空から鉄柱が降ってきて…俺がどんな思いをしたと思ってるんだ?」

「何…を…」


私が…了真に…?

どう…やって…………どう…して?


現実味のないことで信憑性なんて1つも無いのに了真が言ってることは全て真実だと分かる


「なぁ…何で幸せそうにしてるんだ?殺人犯が…何で笑えるんだ?何で苦しまないんだ?何で死なないんだ?」

「え…ぁ…」

「教えてくれよ親友。何で俺はあの時死ななきゃいけなかったんだ?」


責めるような目が、責めるような口調が…私の心を深く…深く震わせる


何かが欠けた音と共に私は意識を手放した


最後まで了真は私を見ていた




─それから…また何も覚えずに目が覚めて…了真に異常が発生したら記憶が戻って…また何かが欠けて目覚めるを繰り返し続けた


何回も何回も何回も…どんな時も最後には了真に異常が生じて私が責められる


慣れる事は無い。これは慣れていい事では無い。脳の奥に仕舞われたようで思い出せない了真をそうした原因を思い出さなければいけない


忘れてはいけない忘れてはいけない忘れてはいけない忘れてはいけない忘れてはいけない


今回は了真が溶けて…私はいつものように意識を失った


また何かが欠けた音がした






「はっ!」


かけた目覚ましがなるよりもずっと早くに汗を滝のようにかきながら跳ね起きる


何かとんでもない夢を見ていたような…忘れてはいけない何かを見ていたような気がする


気が付けば私の目からは涙が流れていて…理由が分からず私はあたふたする事しか出来なかった



そんな朝を過ごそうと何も変わらずに一日が始まる


今日は了真は休みのようだ

了真に何か言いたいような…謝らなければならないような感覚に襲われていたのに悲しい


学校が終わったら家行ってみようかな



学校が終わって帰路につこうとすると神様から連絡が来る


《すみません鉄。今宜しいでしょうか》


(神様?どうかしたんですか?)


《そちらに怪人が出てしまったようなので対処をお願い出来ませんか?》


(了解です!場所は何処ですか?)


《■■■■■です》


(すぐ向かいます)


《ありがとうございます助かります》


私は高校に入ってから半年くらいたった頃に怪人に襲われたのを凛さんと咲良さんに助けて貰ってから魔法少女として活動している


魔法少女になると決めた時こう言うのは大人がやるべきだと凛さんと咲良さんは止めてくれたけど困っている人が居るなら見過ごす事はしたくなかった


私も救われたからこそ誰かを救える人になりたかった

幸い私には資格と言うものがあったそうで今の所は怪我をする事もなく頑張れている



そんな事を考えながらも被害が生まれないように急いで教えてもらった現場へと向かう


ようやく到着した現場で私は息を飲んだ


「俺じゃない俺じゃない俺じゃない!何で俺のせいにするんだ!何で俺を責めるんだ!俺じゃなくて全部全部全部あのクソ上司が悪いのに!俺のせいじゃない!俺のせいじゃない!」


ずっと自己弁護を繰り返す異形の怪人



こいつの能力は遠距離攻撃を別の場所に飛ばす能力で…私は…こいつに鉄柱を飛ばして…それで…それで…私は…私は了真を殺したんだ


全てを思い出した


今が試練中なことも含めて全部


なのに体に力が入らない

こんなの私の心が作り出した幻だって分かってる

それでも体が動かせない

それでも頭からあの光景が頭を離れない


死にたかった

生きたくなかった


結局別の種族になって生き返ったとは言え私は大切で大事でかけがえのない親友を自分の手で殺したんだ


了真は笑って許してくれた…許してくれたけど…私の心が私を締め付けて止まない


死んでしまいたい


ここでこの怪人に殺されたら何故だか現実でも死ぬると本能で分かる


もう駄目だ。駄目なのだ


了真は悲しんでくれるだろう恨んでくれるだろう怒ってくれるだろう失望してくれるだろう忘れないでいてくれるだろう


貴方を傷つけるだけ傷つけて勝手に死のうとしてる私をどうか許さないで欲しい


「俺のせいじゃない俺のせいじゃない!全部アイツが悪いんだ!全部全部!」


そんな事を考えていると怪人と目が合う


「お前も俺のせいにするのか!お前も!俺のせいじゃないのに!」


鬼気迫る表情で怪人が迫る


これで死ぬると思い…私はそっと目を瞑った


訪れる濃密な死の感覚を前につぅと涙が頬を流れる


死にたいはずなのに生きたくないのに…また了真に会いたいと願ってしまう


あまりにも身勝手でわがままだ


覚悟はしたはずなのに…それなのに口からふとこんな言葉が零れてしまう


「助けて…」


最後まで他人に縋ってしまう私は本当に駄目で身勝手な女だ


さようなら…了真…元気でね


心の中で最後の言葉を吐き…私は1層強く目を瞑った


攻撃を繰り出そうとする気配を感じたその時


轟音と共に怪人が吹き飛んでいく音がした


「何…が…」


そんな筈は無いこんな事がある訳ない

都合良く私の心が見せた幻覚の筈だ

それなのに私の前にいる人は本物だと言う感覚が消えない


目の前の人が私に声をかける


「大丈夫か真菰」


私の目の前には了真が居た


「何…で…?」

「なんだかんだあって魂が見れるようになってな…お前の魂が摩耗しまくってたもんだから精神だけ飛ばしたんだよこっちに」

「?????」


理解が追いつかない…本当に日本語か?


「まぁそうなるよなぁ…俺もなんで出来たのか分かんねぇし」


目の前の了真は本物だと理解出来る

理解出来てしまう


「んで…真菰」

「な、何…?」

「何で死のうとした?」

「っ…!」


思わず息を飲んでしまう…動悸が激しくなり震えが止まらなくなる。了真の顔が見れない


「…まぁ状況から大体何があったか分かるしある程度はメイが教えてくれたけど…俺は気にしてないって何度も言ってるじゃん…」

「それでも…」

「ん?」

「それでも!許されないことを私はしちゃったの!」


こんな事言うべきでは無いのに…抑えていた心が爆発するかのように言葉を垂れ流してしまう


「貴方は私の親友で!替えのきかない大事な人で!貴方を大切に思う人は他にも居て!それなのに!それなのに私のせいで!私のせいで死んじゃったの!許していいはずがないじゃん!許されていいわけないじゃん!許せるわけないじゃん!」


止まらない


「貴方には何度も!何度も何度も何度も助けられたのに!何一つ返せないまま!恩を仇で返して!傷つけて!苦しめて!迷惑をかけ続けて!私は!私は!」


思いついた言葉をただただ自分に吐き捨てるように叫ぶ

了真の顔を見ることが出来ない


どんな顔をしているだろうか。怒ってるだろうか、悲しんでいるだろうか、呆れているだろうか、苦しんでいるだろうか


「私が奪ったんだ!了真の人としての生活を!安寧を!ようやく心から笑ってくれるようになったのに!ようやく楽しんでくれるようになったのに!ようやく乗り越えてきたのに!」

「真菰…」

「私が…私が…死ねば良かったのに…私が…」


堰を切ったように涙が溢れ出す


言ってしまった。こんな事言いたかったわけじゃないのに…了真に当たりたいわけじゃなかったのに


「真菰」


そう思っているとそっと了真に抱きしめられる


「俺を見ろ」

「え…?」

「今の俺は生きている。過程がどうだろうとそれが全てなんだ」

「でも…私は…」

「まず悪いのはお前じゃなくて俺がさっき吹っ飛ばしたあいつなんだろ?恐らくだけど」

「でも…私が…原因を…作って…」

「まず聞いたことないんだけど俺どんな経緯でお前の攻撃に当たったん?」

「私が…さっきの怪人を倒そうと鉄柱を飛ばした時…あいつが能力で私の鉄柱をランダムな場所に飛ばして…それで…」

「んじゃあいつが悪いだろ。お前じゃねぇ」

「それでも…」


それでも私が貴方を殺したことは何も変わりはしな…


「んじゃもう苦しめ」

「え…?」

「俺の傍にずっといろ。俺の傍で俺に償い続けろ。これから辛いことや苦しいことなんて幾らでもあるだろうが逃げるな」

「…」

「俺がお前を幸せにしてやる。絶対に俺がお前を死なせない」

「了真…」

「だから死のうとするな…逃げようとするな。苦しんで苦しんで苦しみ抜け。俺が傍で助けてやる」


言葉が胸に染みていく

苦しめと言う言葉に救われる

了真がずっと傍に居てくれるという嬉しさが胸を支配していく


「うん…私、苦しみ続けるよ。貴方の傍でずっとずっと」

「あぁそうしろ」

「もう…大丈夫」

「迷いは無いな?」

「うん!」


もう迷いなんてない。私はこの人と共にあり続ける

この人の為に生き続ける


「まだ何ヶ月かそっちには帰れないだろうけど…待っててくれよな」

「病みながら待ってる」

「病むな……いやまぁ悪いとは思ってるから戻ったら何か1つだけ言うこと聞いてやるよ」

「本当!?」

「うっわさっきと違ってすんごい元気ぃ…」

「楽しみにしてるね!」

「まぁ元気そうだしいいか…うん、絶対帰るから楽しみにしとけ。じゃあな」

「ばいばい」


そう了真と言葉を交わすとガラスが碎けるような音と共に景色が崩れていく


段々と意識が暗転し…





気が付けば私は神様と会った所に戻っていた


「おーお疲れ真菰ー大丈夫だったか?」

「お疲れ様です真菰さん」


目の前には何故か焚き火を囲む凛さんと咲良さんがいる


了真の温もりを思い出しながら私は笑顔で2人の元へと向かって行った


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カァッ(モチベに繋がるので感想や星ください)

カァッ(語彙力と表現力の限界をひしひしと感じました。辛)

カァッ(ヒカリだけカタカナで浮いてたんで全部漢字に変えときましたよろしくです)

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