第42話 灰崎凛の試練

───side凛


「何だこの門…入れってことか?…周りにゃ何もなし…と」


殺風景な部屋だなぁここ。門以外何もねぇじゃねぇか


にしても心と向き合う…かぁ


私別にトラウマとか無いんだけどな


そんな事を思いながら目の前にある門を開ける


光に包まれたかと思うと私は社会人なりたての頃までタイムスリップしていた


「ほら今日出社の日でしょ?遅れないように早く起きてご飯食べんさいよー」

「わーってるよ母さん」


口が勝手に動く

どうやら過去を追体験?しているようだ


にしても懐かしいなぁ母さん…


そこからどんどん場面が変わっていく


そうそう道端に倒れたおばあちゃん助けてたら遅刻したんだよなぁ会社に


ベタすぎて信じて貰えなかったけど結局そのおばあちゃんがわざわざ会社まで来てくれてお礼言ってくれたんだっけ…

嬉しかったなぁ…


最初は仕事も不慣れで…良く先輩に助けてもらったっけ…


…先輩って今何してるんだろうなぁ


毎日毎日失敗しながら頑張って仕事して…その度に周りが励ましてくれて…私もこうなりたいなって思わせてくれたんだよなぁ…


私が落ち込んだ時とかめでたいことがあったら皆で鍋つついてなぁ…楽しかったなぁ…


そんなに好きじゃなかった鍋が大好きになっちまったよ


そんな日々が続くと思ってたら先輩が転職することになってなぁ…うちは給料そんな高くなかったからもっと給料高いとこ行って富豪になるんだーって、嬉しそうに語ってたなぁ


高卒で社会人になってから色んなことがあって、コロコロコロコロ環境も変わって…辛いこととか楽しいことがいっぱいあったなぁ


貯金貯めたくて実家で暮らしてたけど母さんも父さんも優しく受け入れてくれたよなぁ


もっと親孝行したかったな


嬉しそうに、楽しそうに両親と接する過去の私を見ていると心が痛む




それからも色んな過去の光景を見て…あるだろうなと思ってた光景を見せられる


ドォン!


あれは車でご飯を食べに行こうとしてた時だった。突然赤信号なのに車が突っ込んできて…吹き飛ばされた先で電柱に当たって電柱が倒れて…意識が朦朧としている時に胴体が泣き別れた父さんの姿とぐちゃぐちゃに潰れた母さんの姿が目に入った


赤信号で突っ込んで来た車は飲酒運転でなおかつ寝てたらしい。ふざけるなよって思った

そいつは捕まったけど母さんや父さんが帰ってくることは無かったから


それから事情を話して会社をしばらく休んだ


ご飯を食べる時以外はずっとぼーっとして過ごした

段々段々生への執着がなくなっていった


だから台所から包丁を取りだして喉を…


そこまで見ているとふと体が動いた

衝動に身を任せ包丁を掴む


「大丈夫だぞ私…後少しだからな…」


結局この時は喉を刺せなかった…勇気が出なかったから、生きる理由なんて何も無いのに死ぬのが怖かったから


そんなある時真夜中にふらっと公園に行くことにした。なんてことは無い思いつきである


少し気分転換にでもなればいいなと思った




そこで私は救いを得た



公園で私は胡散臭い笑顔を浮かべる中学生に出会った


彼もただの思いつきでここに来たと言った


何だか親近感が湧いてしばらく話をすることにした


久しぶりに心から笑う事が出来た


そろそろ帰らないとなぁと言った彼に私はつい尋ねてしまった。生きる意味がないがどうすれば良いのかと


彼は言った


「うーんお姉さんはそう思う何かがあったんだねぇ…顔見れば分かるよー。でも俺が言えることなんてそんなにないよ?俺も死にてぇって毎日思ってるし」

「そうだね…」

「でも俺が死んだら悲しむ人が居るからさぁー…それに…」

「それに?」

「明日は良いことあるかもしれないじゃん?折角この世に産んでもらったからさー…俺の親は最悪な人らだけど…それでも腹痛めて金かけて育ててくれたわけだし、死んだ時に楽しかったっつって笑って言ってやりたいのよ」


妙に大人びた中学生のそんな言葉が私の心を救ってくれた


未だに親が死んだ時を夢に見るけど…それよりも多く親と笑いあった楽しい日々が夢に出る


私も死んだ時は2人に楽しかったって笑って言いたい。そう思った


「ありがとね少年」

「ん?あぁ清々しい顔をしてるね…何かあったかは分かんないけど力になれたなら良かった」

「私頑張ってみるよ」

「うん頑張れ。またいつか会えた時は笑ってお話しようね」

「おう!少年も頑張れよ」

「勿論。じゃあねお姉さん」

「じゃあな少年」



そう言って私は不思議な少年と別れた後、会社に復帰し好きなことを全力でやって楽しい日々を過ごした


友人が怪人になった時助けてくれた神様の力で魔法少女になってからも楽しい日々を過ごしている


そこまで見ると私はいつの間にか神様と会ったあの場所に戻っていた


過去の追体験しただけだけど良いのかね

あの少年のおかげで乗り越えられたからなぁ今更見せられてもって感じだ


そんなことを思いながら周りを見渡すと看板が立っている


看板にはご近所トラブルに対応してるからそこで少し待っててと書かれていた


その言葉に従ってこの場で少し待ちながら体から湧き上がる力の制御を試みてよう

次は誰が帰ってくるかねぇ


────────────────────

カァッ(もっと短くなると思った凛さんの試練が長くなったので咲良さんの試練は明日投稿します)

カァッ(僕の語彙力ではこれが限界でした)

カァッ(モチベに繋がるので感想や星ください)

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