本戦-12 Good Game


「はい緊急回避ーッ!」


 ブロックロックで大ジャンプ、宙に返って鏡写しの死から逃れバーニングリープ。からの装備変更ロッカー・アーム→フォレストチェイサー!


「からの喰らえやバレっちー!!」


>さっき避けられたからな

>インチキステップ

>ランスは持ってないだろ

>双剣でもないが??

>銃だもんね…


「…ッ!」


 ハンティング・ジャーは放たれ──着弾!身を捻り躱そうとしたバレッティーナの柔肌を切り裂いて牙が深く噛みついた。たらり滴る血は減りゆくHPの証。


>ズッ友フックショット

>フックというよりは……

>気にするな!


「スキル条件達成だぜバレっちィィィィ〜〜ッッ!!!!」


>うぜぇww

>好きな子に悪戯する男の子みたい

>シェリーって本当に女なの?

>多分…おそらく……きっと………メイビー?

>たまに怪しくなる


 シェリーはそれを見て再装備変更。口角は近似的新月にまで引き上がり、胸部には肉鎧を装着。これでお互いに逃げる事は叶わない。逃げる気なんて起きない。オファニエルが石畳を削り舞わせた煙で変身バンク。


「「真──☆──髄──☆──解──☆──放ォ──☆──ッッ!!!!」」


>\\[伝統芸能]//

>[知ってた]

>まぁ……

>#[勝利確定]#

>[お前ら興奮しすぎwww]

>スパチャ早打ちしてるオマエモナー


 ミラーラミの吐き出した弾丸は意味を無くした。煙を突き抜け見えたのは膨れ上がる肉。鋸。棘。何よりも体積。間に合わなかった事を理解したバレッティーナはホルスターに相棒を収めた。だらり腕を下ろし。ゆらり揺れて回復姿勢。


「──ッフゥ……」


>エッ

>#[バレ様!]#

>なんでお前こっちのコメント欄いるの?

>バレ様に殺されたいしバレ様を倒したいので

>あっ、ふーん


 こうなっては止められない。止まらない。だから休む。幸いにも今回の変身は時間がかかるらしい。カッツカツだったスタミナが満たされていく感覚を享受しながらも、視線と思考はクリーンかつスマートに。


「フッ、フッ、フッフッフッ……あはははっ……」


 煙が蟠を巻いた。中心に在りしシェリーの魂へ、クリエナの火が灯る。天まで登る赤き御柱。祝いの祝詞は無論いつもの、よりも酷い。


 ギャギャギャギャッブブブッッッボォギャァァァバグァァァ────ッ!!


>耳

>一文字でわかるのやめろ

>自動鼓膜張り替え機能が役に立った

>なんでそんなニッチなもの持ってんの?

>いや待てそもそも売ってるのかよ仮想研馬鹿か??

>お値段プライスレス(表記なし)


 真髄解放アクセル、全開。

 

 情熱機関エンジン、臨界。

 

 多段攻撃ホイール、戒天。

 

 固定打点タイヤ、走破。

 

 仮想身体ボデイ、変態。


「お待たせ死ねェーッ!!」


 爆熱戒天オファニエる英雄シェリーが、バレッティーナに急速接近。狩りの時間ハンティング・ジャーからは逃れられない。振われし鋸刃、刺々回る棘の禍焔に呑まれては……シリウスでもなければあっという間に焦熱地獄刑期満了に違いなし。


「もうほんとこの…変態…!」


>罵倒が可愛い

>おら、横みろよ

>いやです……

>もうやだよぉ俺あれ直視したら死ぬよぉ……


 フォレスト・チェイサーは肉の中に飲み込まれた。絡み増殖しゆく爆燃細胞は、シェリーの身を覆い尽くし。荒れ狂う影レイジングシャドウとなった彼女は例えるならばそう、『生きる焔』の具現か。つまりは視聴フィルターをOFFっていた視聴者達はSAN値チェック1d10/1d100。死ぬが良い。


>

>マ"ッ"

>幸先の空は悪天候

>あ〜………可愛い

>精神分析(物理)やっとく?


「絶対に逃がッさァーんッ!!」


 下段薙ぎ払い。オマケで燃える血が飛び散って、地面に着いた途端に軽い爆発×n。固定ダメージに飽き足らず、地形ダメージまでシェリーは持ち出してきた。彼女の進化は何処へ向かうのか。ランクIVの火力では到底ない。


「ぁ──っぶない…!」


>なにこれ

>パーフェクトしないと死ぬゲーム

>譜面わからんけど


 後ろに跳び、着地で靴先スライド。"嫌な予感"を信じて全力で退避したバレッティーナは命拾い。視覚で認知した最低限に居たら確実に逝ってた。そして知見を得た。シェリーの姿は旧支配者もかくやといったものになっているが……シェリーは柄を握っている。つまり『回転鋸オファニエル』、そのものは分離している。


「──ェッハァァアァァァ!!!」


>声ェ!

>アリサとは違う方向で声がやばい

>ギャグ映画でしかきょうび聞かない声

>その表現も聞かねえよ馬鹿


 正面突き、そして地表走り派生で昇天撃。舌打ち混じりに加速まで切って避け、探るは『部位』の境界。一時でも破壊できれば、あとは格闘戦。文字通りの無手と鍛えたガン=カタ、どちらが強いかは一目瞭然。そのチャンスまで、絶対に被弾するわけにはいかない。


「あ、ぁっ、も……うっ!」


 なのに無秩序に振り回される攻撃判定。どれもこれもが固定ダメージ。地形ダメージ。防御力なんてなかったんや。回避型でなければとっくに死んでた。変身バンクの余波で決着付いてた。なんならバレッティーナだから生きているまである。


>お前ら避けられる自信ある?

>無理

>変な質問するな

>ファインダーちゃんならできる

>完全無敵がよ…


「ライト、レフト、ライト、バックッ!」


 意思持つ死、ソレそのものは脅威でしかない。だが手繰る思考を紐とければ、このように。刻々迫る真髄解放のタイムリミット。バレッティーナは勝利条件ゴールテープまで逃げ切れるか。


「思考が口に出るの悪い癖だぜバレェェっちィィ!!」


>無意識なのかな?

>だと思う

>ロールプレイ中にはよくある


 ここでシェリー選手転調。フェイントで自傷開始、身体を貫く事でショートカット成功。火力増し増しの一撃が迫る。当然当たったら死。


「ほんとに馬鹿シェリィ…!」


>青春してるわねぇ

>お前は親なのか

>馬鹿はお互いだよバレ様

>鋸キチvs銃キチ

>勝手に戦え


 全力逃亡。CT明け速攻で酷使される転移技。闇は焔を通り抜けて背後へ──そして隙。起動されるは[アナザー・マジック]。4つの銃口が一点を指し、四角錐のキルゾーンを為す。


「放てェ……!!」


>また増えた!

>はい火力

>凄いなこれ

>制御どうなってんの?

>異形系VRやってこい

>酔ったからやだ


「んにぃぎゃぁぁんっ!!??」


 現れし鏡の悪魔は96体。振り向く前に当てきって。パーツは腕は無残に吹き飛んで。戒天を支える手は今は無い。さぁ蹴り飛ばせ、バレッティーナ。


「これで──終わり!」


 アナザー・マジック効果終了、ミラーラミリロード。接近して、杭を打つよう回し蹴り。


>蹴ったぁー!

>完全にシェリーやられたろ

>怪人の死に方

>やったか!?


 数枚重なりし棘を持つ真髄解放オファニエルは容易く吹き飛んだ。肉体中心をブチ抜いてしまったシェリーは動けない。血を流す腹の痛みをさするバレッティーナは…「あ」…反応が遅れた。


「……ブロックロックゥ……ノリだけで私が動いてるわけェ……なーぃじゃぁ〜…ん……」


>こいつ……動くぞ…!

>なんで死んでねえんだよ

>……ああ周囲に散らしたダメージか

>は?

>直接攻撃じゃなくてもいいからな…


 バレッティーナの足が、石畳に飲まれた。残念ながらシェリーのスタミナは融合した情熱機関により無尽蔵。最大速度で足を埋めるくらいは容易い事。そしてデッドイーター・真髄はその崩壊を未だ防ぎ続けている。


「じゃあ……死のうか、バレっち…ふふ」


 臓腑の崩壊により減った体積のおかげで表情が良く読める。晴れやかな笑顔。文字通り心に風の吹いたいい心地。心頭滅却すれば火もまた涼しとはこのことか。


「やめ、待って、流石にっ、この負けは…!」


>慌て顔可愛すぎる

>燃えてるんだぜ…これ…

>何度?

>お風呂の温度は39℃


「負けは負けだぜバレっちィィ!!潔く負けなぁぁ!!」


 捕らえられたバレッティーナは女の子ヒロインのように泣き叫び。地に斃れたシェリーは悪役ヴィランが如く笑い叫ぶ。勝敗は決した。もう、助からない。


「や、ぁ、ぁぁぁ、ぁぁぁぁぁぁ………!!!」

















『決勝戦 終了しました』

 


『昆布巻きの勝利です』

 


『英雄シェリー、英雄アリサ、英雄ファインダー』



『第一回トライヘルメス優勝』



『おめでとうございます』


 


〜〜〜



──K O──


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