本戦-9 二挺歓喜


『FIGHT』









 



 




「HELLO☆」

 

 ダァ──バババハッッ!!


「手厚い歓迎結構やなぁ!」


>さすが銃の射程

>ファインダーちゃんと相性悪いよなぁ…

>あれ待って三分割画面とか俺の頭が死ぬが

>脳を増やしといてよかった

>強化人間さん!?


 二人が現れたのはどこかの商店。レファは目前に人影を認識した瞬間に攻撃開始。対するファインダーは"光の知らせ"を受けて身を翻し、障害物の裏へ隠れたと同時。頭上を無数の雷鳴が駆け抜ける。いいや、それは弾丸だった。ただし、その速度は光条を残す程に速いものだが。


>見えねえw

>バレ様とは別ベクトルでやりたくねえ

>これがわからん殺しですか

>遠距離武器そういうところある


「ウチは一人やと遠距離への備えは何もあらへんのに……しかもレファはんの獲物、なんや多くない……?」


 チラリとあちら側を覗き込んでみた。一眼見る限り、SWORDレファは南国風の軽装。彼女のプレイスタイルから考えて敏捷性回避重視の装備だろうか。そしてその手に持つ獲物はあくまでも『アサルトライフル』。銃に明るくないファインダーにはそれがどのようなものか知る由は無いが……それでもあからさまな異常は誰でも見て取れる。


「どぉ〜よファイたそ!ウチぉ"ジャッジメント"!あははははッ!」


>強いやつってほんと楽しそうにゲームするよね

>オレもなー、楽しんでるけどなー

>十分条件ではあるけど必要条件ではないから…

 

 大輪の花のように美しいレファの周囲には、風に吹かれた花びらのように無数の雷雲が立ち込めている。しかも一つ一つから、ジャッジメントと同じ『銃口』がコンニチハ。単純な話、手数はファインダーとどっこいどっこい。なんなら制限のないレファの方が累計ならば上回っているかも。


「危ないのがようさん頭に来そうや…手加減してほしいわぁ」


>銃声鳴り続けてんすけど

>リロードタイムどこ…ここ…?

>ない…ね……

>ミラーラミにはあったのに!?


「ムリムリ、いくぁブッパしーってもファイたそにゃ牽制にもなんなぁーっしょ?」


>桂ぁ!今何発!?

>知らん

>一時停止ないからわかるわけないだろ……


 だがファインダーにだって有利な点はある。言うまでもなく一発逆転の『完全無敵』。あらゆる牽制は無為に帰し、最短ルートでぶん殴ってくるという点ではレファの天敵。単純な回避技術だけで無数の拳の弾幕を避けるしかない。


「無敵を使ってないウチはただのか弱い女の子。手加減がしてくれへん?」


「かぁーぃ寝言言っても意味なぁよファイたそっ!」


>かわいい…かな…

>殴打してくる女の子はかわいくなぃ

>語尾を可愛くしてもお前は可愛くないぞ


 遮蔽物の耐久力はもう限界。ファインダーは加速を起動して飛び出した。そして案の定無数の銃口がファインダーの頭をロックオン、掃射掃射掃射。その軌道には一つのブレも、微かな弾道落下も無く、ファインダーへと殺到。


「さぁ起きィシリウスはんっ!」


 周囲を漂っていたシリウスがファインダーの声に呼応して融合、ゲーミングと化したファインダーの身体に突き刺さる神の裁きは無効化。雷鳴が鳴る度、その光はゲーミングに呑み込まれて消える。


「──実弾やあらへんと」


 着地、瞬打、乱打並列起動。ファインダーの手数はついに危険な領域に突入する。真っ直ぐに駆けてゆくの八つ足。


>[ファインダー!ファインダー!レファにジェットストリームアタックを仕掛けるぞ!]

>四人いるじゃん…

>多い武器は強くなるからヘーキヘーキ

>予算ガタギリや…


「本気だしゅうんやぁら〜〜っ!」


 銃撃は一時中断。銃口は引っ込めた雷雲はレファの姿を覆い尽くそうと体積を増す。もしもここにシェリーが言ったらこう言っただろう。周囲に魂魄武装由来の何かを纏わせ、自分に有利な環境を作り出す能力──即ち『領域展開』じゃねーかと。


>ま た ス モ ー ク か

>回避型が持っちゃダメだろ

>攻防一体…ではないのか

>銃撃たないの怖いね

 

「生憎ウチは最初から最後までクライマックスや。せやから楽しゅうてしゃあない!」


 しかしファインダーはそれを分析できない。彼女は動画を見続ける通信教育でSWのことを学んでいる。だからその知識に"実感“がない。だから最適解はいつだって、無敵を以っての神風特攻。


「そこやァ!」


 飛び蹴り、追撃三連。乱撃八連。打撃数合計十二連。ただのDAが牽制どころか制圧、通り越して必殺に。暗雲を晴らす一動作は、滞りなくHIT。


「いぁ、っ……!」


 漏れ出た喘ぎと共にレファのHPが減る。漂うように軽い口調の彼女も衝撃を受ければ芯の通った声だって出る。


>えっ

>やめないか!

>被弾音可愛すぎる

>ファインダーちゃん!!!もっと!!!


「変態はんはあとで覚えとくん…よっ!」


 着地→しゃがみでスライディング、ヒットの手応えを追いかけて慣性そのままに下段回転蹴りブレイクダンス。全方位攻撃としてはかなり有用。隙は大きいが無敵な今は関係ない。


>くるくる〜☆

>そんな生易しくないだろww

>殺戮大車輪

>怖くて草

>オファニエルのこと言ってる?


「ひ、ゃんっ…!?」


「まだまだ行くでーっ!」


 当たればいい。次の位置がわかる。ペラッペラの紙装甲にはそれだけでいい。溜めもディレイも必要ない。今必要なのは、追尾。逃さないという意思。設置している手で跳ねて天地逆転、両手で作った握り拳アームハンマーを振り下ろす。十二連。


「よけぇら、ぁ〜〜っ!!!」


>ポヨンっ

>間違ってはない…w

>薄いからな、色々と

>俺の知るSWORDじゃない


 対応はできたが豊満なる胸部装甲が仇となり被弾、ファインダーに微かな青筋が走ったがそのままコンボ継続、前方に転倒する形になったレファを掬い上げるように、着地後は即ムーンサルト。鳩尾にクリティカル。


「だぁっ、はぁっ……!や、っばぁ…!」


>ギャルの悲鳴でしか取れない栄養素

>人生の肥料ですね

>違うが?

>非人道的だぁ…


 だけどレファのHPゲージはミリだけ残り。ファインダーの効果時間ゲーミングは遂に終打の時を迎えた。残像は収束し、その拳はドリルのように。


「終いは──もちろんっ!」


 打ち上げられ、落下するレファの真下で。溜めに溜めた一撃を、打ち上げる。それで、まずは一勝。


「終打ァァッッ!!」


「ロ──ッ!」


 ドバキバキィッ────。


>やったか!?

>フラグやめい

>いや流石にこれは勝っただろ


 モロに入った。拳が『硬いもの』に達した音。周囲の暗雲が少しずつ縮み、小さな個体に分かたれてゆく。レファの身体も地面とキス。ふぅ、と一息をつけば………?


「……なんでレファはんの身体、消えとらんのやろ」


 死んだキャラクターはポリゴンとなり消えるはず。それがソウルウェポンというゲームの法則。なら、ここに残っているレファの体はなんなのか。周囲に散乱する岩片に、未だ滞留する雷雲。もう、答えは分かりきっているような。


「──Bye☆」


>!?

>レファたその声!?

>死んだはずじゃ!?

>残念だったな トリックだよ


 ジャキンッ。暗雲からハジかれる雷鳴。文字通り無防備なファインダーの周囲を取り囲む神罰。背中には冷たい鉄の口が突き立てられて。


「ファイたそ、おつおつ〜☆ またぁ殺ろぉ〜にぇ〜♪」


>マジで生きとるやんけ!!!

>雲晴れた瞬間終わったわ

>これがホールドアップですか


「攻撃無効か…そりゃぁウチの攻撃も防げるわけや」


「わかぁの?でも一回だけぇよ、終打まで耐えらぁと負けとったし……あは、ハラハラしたぁ♪」


>防御なくてもカスあたりなら…

>ダメージは少なめにできるか。

>うわぁ、そうなのかぁ…


 相性が悪くても、それを覆すのはプレイヤー性能。鬼札を切らせたという点ではファインダーもよくやったが。


「……gg」


「ん、gg☆」


 無限の銃声。ファインダーはポリゴン片に還った。昆布巻きチームは残り二人。


>ううううう………

>逝っちまった…

>おかしい人を亡くした……


「さぁ〜……皆ぁ、どこ行ったかなぁ?」


 今日の天候は悪天候。曇り時々、神の雷霆にご注意ください。レファに充填、蓄積れた『電力』は、容易くその身を貫いてしまうから。



〜〜〜

Tips レファの魔核装備


──

[ロッカー・ブレス]

カテゴリ:腕輪(魔核装備)

属性:岩

スキル:ロック・ブロッカー

──

[ロック・ブロッカー]

一撃だけ攻撃を無効化する障壁を展開する。

CT:180秒

──

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