予選-3 接敵=死
『予選開始より10分が経過しました』
『10分生存ボーナスを付与します』
プァァンッ!!
『イィィィィEEEE────!!!!』
「──!?」
振り抜かれる三日月の
>最早人語を介さなくなってきた
>音圧は低いけどな
>何を感じてるの?
「に、にげr」
全身を構成するポリゴンをたった一撃で吹き飛ばされた仲間の姿とHPバーを認識し、逃げ出そうとする一般プレイヤー。しかし、彼らはもう助からない。
「オファニエル殺戮便いっちょあがりぃっ☆」
ギィィィャギャギャギャギャギャャァァッッ!!
「ァァァァ!!??」
>屋根の上から落ちてくるのはもうホラー映画なんよ
>廃墟エリアは上空奇襲式天誅に気をつけよう!
>オファニエルは天使モチーフ…なるほどね?
>月に代わってお仕置きよ
残ったもう一人の仲間に声をかけようとしたのが運のツキ。全身を棘々しい車輪に刺し貫き挽かれDead-End。痛覚遮断を入れていて本当に良かった。
「なん、まだ離れてた、ず……!?」
>あっ
>まぁ……
>奇襲ってこういうものだよなぁ
>Take10
そして最後のチームメンバーも逃げられない。何故ならば、今、彼は、肩を──掴まれているから。
「悪いなぁ、ウチらのバフ──結構溜まってるんよ」
乱打、瞬打、並列起動。効果時間の未だ残る
「ぁばぼがべぶずまばぁっ!?」
打打打打打打打打打打打打ァ──ッ!
>いたそう
>痛いだろ…
>ここだけ別作画で草
「終いや。終打」
拳舞の行き着く末はハイキック。アッパーで打ち上げられ無防備を晒した彼に助かる術はもう、ない。頚椎に踵を叩き込まれて全滅。
>GAMESET
>必殺技っていいよな…
>ぶっちゃけえr
>それ以上はいけない
『30KILLボーナスを付与します』
現在彼女らが居るのは平原エリアに隣接した廃墟エリア。ファーストキルを決めた後プレイヤーエネミー問わず虐殺した結果フィールドボスの大狼が出現。それを当然のようにぶち殺したので人の気配を感じるここにやってきた、というわけだ。
>次のバフは何?
>キルボーナス15区切りか
>5チーム伸したらってことだなー
「んー、次は……」
──
[特殊付与]
-自動回復(小):ファーストキル
-打点上昇(小):15KILL
-加速効果(中):フィールドボス(平原)
-体力増強(小):10分生存ボーナス
-打点加算(小):30KILL
──
「ktkr打点加算じゃん」
>これバフ盛りすぎと違う?
>アリサが加速してるのが一番ダメだと思う
>物理ダメージが目に見えてて上がってんのほんと草
>運営ちゃん調整ミスかぁ?
「うちはどっちにせよ火力上がるし嬉しゅうわぁ」
なおファインダーは固定打点でない連続攻撃+高倍率の単発攻撃を持つためちゃっかり両方の恩恵を受けている。
>軽く言ってるけどさぁ……
>その瞬間火力、タンクが見たらどう思いますか…?
『さァァ、次は……見ツケたァっ!』
だがアリサはそんなことを気にしない。剥がれかけの石畳を踏み割って加速。縮地の要領でカッ飛んだ。
「速すぎるんだけど、ほんと」
「速うて強いんはアリちゃんの特権やなぁ」
>そんな特権を振われるこっちにの身にもなれ
>配信見てる時点で不戦勝なんだよなぁ…
>明日仕事だから参加できんかったんや…
『Zeeeeeeeeiiiiiii!!!!』
アリサの狂刃に当てられて、
>鉄vs鉄
>ロボゲーでも生身で戦ってそう
>いやいやそれは…あるか。
『ドロップァ……鍵ィ?』
そしてトライヘルメスはエネミーを倒した際にドロップ品として消費アイテムを獲得できる。主な種類はポーションのような回復アイテムだが……今回は"鍵"らしい。
「となると近くに何かあるのかな」
「宝箱みたいなんかなぁ」
単純なモノでないのには何か理由が?少し見渡してみるが壊れた扉に崩れた壁とわざわざ鍵を必要とするオブジェクトは発見できない。だが折角の特殊アイテム。生かさない手はない。
>いつも変なもの引くな
>探索系のプレイヤーもどうにかできるのか
>まぁ…戦闘狂が入手しやすいんですがね…
それを見て一泊。疑問符が浮かんだせいで狂化がマシになったアリサに向かってシェリーは宣う。
「アリサに命ずる!」
「………んだよ」
「これの鍵穴探してこい」
「…………アイアイマァァァム!』
>またやる気スイッチ入れてるよ
>さすが幼馴染
>[ファインダーちゃんの呆れ顔好きだ…]
とはいえアリサは考えて動くのには根本的に向いていない。本能と理性が結びつきながらも即座に
「あーあ…アリちゃん一人で行ってしもうたやん」
リアルスキル『野生の勘』をフル活用。闘気ムンムンサードムーンとアリサは大きな建物の見える方へと向かっていった。シェリーはそれを見てうんうんそれでこそだよと頷く。
「大丈夫大丈夫」
バガァァァンッッ!!(建物が爆砕される音)
ドガァガガカララァァッッ!!(瓦礫が落下する音)
ギャァァァァァ!!!!(新たなプレイヤーの悲鳴)
「ほらね?」
「いやちゃうちゃう。アリちゃんが一人で無双してしもたら取れ高無くなるで」
>私達ボコられる側のことを考えてください
>止まらない感じるこの予感は
>The new enemy
「ま、私らは取りこぼしがないかだけ探してようぜ。暫くしたらアリサが教えてくれるでしょ」
「…何でよ?」
「咆哮」
「やりそうやから何も言い返せんわぁ……」
『予選開始より15分が経過しました』
『残存チーム数は55組です』
『これよりエリアの縮小を行います』
「やっべ」
>流石に始まるか
>でもまだ55いるのね
>半分くらいだしこんなものだろ
アリサの暴走で2チーム、シェリーとファインダーで1チームを殺したところでこのアナウンス。流石にアリサを呼び戻した方がいいかと再検討を始めたシェリーだが……廃墟と化した街の中を、一つの音が支配する。
『『あぁぁぁったぞぉぉぉっっっ!!!」』』
「でかしたっ!」
「ホンマに咆哮で言いよった……」
>ワロタ
>うるせえww
>またスピーカーの座標がおかしくなってる
>運営の想像を超えてくる系暴走娘
シェリーとファインダーは二人で音源の方向へ。同時に上へと瓦礫をぶん投げたのが目印になってわかりやすい。
「お待たせー……おおっ、見つけたのね」
『こぉぉのシャッタァ……空いたぜェ……!』
デカイ屋敷の横に置かれたコンクリガレージ。無駄に頑丈そうに作られたその扉を、アリサは勢いよく開放する。
「……うぉう」
「うーん……見応え、ないなぁ」
雑多に並べられた工具のど真ん中。仰々しい宝箱が三人をキラキラとしながら待ち構えていた。
>アンバランスで草
>どっかの没データでも再利用したのかな
>宝箱の設置は後からだなこれ…w
「……開けよっか」
エイッと開封。シェリーは中にあった瓶を取り出した。
「見た目のわりにシンプルな奴やねぇ」
「…………つまんねー」
>レアアイテム?
>うん…?どこかで見たような
>私は全くないわ
「草」
──
[再誕の雫]
主神の御力が祈りによって凝縮され瓶に封じられた聖なる雫。死亡したキャラクターにこのアイテムを使用すると対象のHPを全回復する。
──
「蘇生アイテムです」
>[蘇生ktkr!!??]<
>検証班!!!!!!検証班を呼べ!!!!!!
>すみません今は他の仲間とは話せないのです
>そうだったぁぁーっっ!!
「取れ高ゲットやな!」
「手のひらクルクルすぎるぞー、ファー」
「ウチはこの配信が面白ぅならばヨシ、や!」
>ブレないww
>ツッコミアリサ貴重でたすかる
>暴れる事以外は常識がある
「ふっ、ふっ、ふぅ……♪」
これはこれで悪用ができそうだ、そうシェリーが再び悪巧みをしていると……
ガキヤァァンッッ!!
>!?
>何の音ぉ!?
無防備なシェリーの背中を狙って、人知れず襲いかかってきた無音の『矢』をアリサは済んでのところで弾き落とす。あと数瞬遅ければ逝ってた。
「っふぅ…………油断すんな。危ねェぜ、シェリー」
「助かった。ありがと」
「不意打ちとは許されへんなぁ」
>5分前の行動を思い出して欲しい
>補給物資狙いは基本か
>開かないシャッターに目はつけてたんやろなぁ
これまでの悪行をあげたらキリがない。しかしそれらは自分たちがするのがいいのであって、他人にされると腹が立つのは間違いない。それも遠距離攻撃ともなれば尚更、こんなしょうもない死因で予選敗退とかプライドが許さない。視聴者は大爆笑確定。
「狙撃の位置はわかる?」
「悪りぃ、流石に"見てなかった"」
>見えてたら怖いわ
>もう隠れてるだろうな
>位置は移動してるだろう。スナイパーなら
「しかし変やなあ……ウチ、ちゃーんとそっちの方向見とったはずなんやけど」
「ふぅん……見えない矢か。面白くなってきたじゃねェか……」
「昆布か魔核かはわかんないけど、銃じゃないってことは『産業革命』程は強くなさそう。ふふっ……よし、やってやろう」
未だ見えぬ、刃を差し向けてきた
「テメェらァ!チキン潰すぞォォォッッッ!!!」
『YeeeeeAAAAAA!!!』
「やったるわぁっ!」
>ぶっころ?
>ころころ
>弓なぁ…
>有名な奴ではなさそう
〜〜〜
Tips 再誕の雫
一応通常プレイ中にも入手可能な超絶レアアイテム。
プレイヤー達が一番"楽"に手に入れる方法はヴァーサ様を祀る教会へ1MCの寄付を行ったときの返礼品として。しかも数量制限があるので一人当たり一ヶ月に一個しか入手できず、また大きな教会でないとそもそも生産できる者がいないので貰えない。
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