#50 【終結】グランドフィナーレは斯く鳴り響く【会場粉砕】
パチパチ パチパチ
パチパチ
パチパチ
パチパチ
パチパチ
パチパチ
「………」
返答は喝采で。座る観客共は立ち上がって張り付けたような不可視の笑みをシェリーに向けて空虚な賛辞を投げつけてくる。
>ブラーヴォ、おおブラーヴォ!
>不気味だなぁ
>正気を感じられん
──
HEAT
L[■■■■■■□□□]H
──
早くかかってこいよと苛立ちを隠せない。そうこうしているうちにヒートゲージは進行。シェリーの纏う蒼炎も橙へと還りつつある。
>弱体化入った?
>熱いの慣れてきたのか
>苦痛に慣れたら弱くなんの???
「…………」
掌を眼前に差し出したまま前進。一歩、二歩、三歩……停止。透明な壁に阻まれて観客席まで進めない。
>パントマイム始めてんだけど
>どういうこっちゃ
「行けぇオファニエ…ルッ!?」
ギャリィ──ガァキィンッ!
まさかの登場。物理演算へとオールレンジ喧嘩を安売り吉日をキメる、掟破りの『
>!?
>刺さらない!?
>嘘でしょ
「……………マジかよ」
固定打点の棘さえも弾くイカレポンチ。強固なる『壁』は舞台上に在る如何なる者も破ることはできない。なぜならそれは存在しない筈の虚構であり、そもそも耐久力が設定されていないから。
>どうすんだよこれ
>ここまでの理不尽要求して来んのかよ
>通常ルート民の終わり方教えて
>クーリエ助けてENDだよ
「となると、単純な力技じゃダメか」
シェリーは目を閉じて思考に耽る。これまでのストーリークエストの追憶を開始。本来、
「ちょっと通常ルートの方を詳しく聞かせて?」
>おう
>クーリエを助けたら感謝されて本来の公演を見て終わり
>報酬は金と冒険者ランク関連
>というか本来3-3は負けイベント説が濃厚
>俺は勝ったと思ったら逆転勝利された
>私もHP削り切ったのに食いしばりされててキレたわ
>四話で観客達を帰らせる為にパフォーマンスする
>羞恥心で死にそうになったよね
>ふざけんなって思った
>それで第五話でまた戦う
>観客居なくなってるんだよな
>クーリエしか舞台にいない一騎討ちはエネミー専門にはキツかったゾ…
これがストーリークエスト3-3〜3-5を辿る通常ルートの話。倒し方や話の流れを参考にするが……シェリーは一つ引っかかる。
「ねぇ……報酬、本当にそれだけ?」
これまでの必須アイテムは何もクエスト報酬だった。流れはいくらか強引だったが何もストーリークエストを熟すうちに手に入っていた。ならば。
>金と、ランクポイントと、その公演の
>……今確認したらプレミアチケットだったわ
>俺も確認した
>すぐ消費したから気づかなかったな……
「正確な情報寄越せよ!!!」
>すまんな
>ええんやで
>お前が許すのか
シェリー、怒りのインベントリ操作。取り出したるは"カレイドシアターのプレミアチケット"。
「私の座席は……ふふっ」
空いている。前列に近い正面の席に、一人分の空席が存在している。
「いいじゃん、特等席で」
シェリーが『演者』である限り『観客』には危害を加えられない。だけど。
「私もそっちに行かせてもらいまーすっ!!」
チケットを握っている間は、まごう事無く同じ場所にいる『観客』だ。
>おおおおーー!!!
>バチバチいってる!
>パントマイムは終わり!
チケットを正面の
「立体偶像版英雄シェリー、舞台を飛び出して遊びに来たぜー!!!」
目前の『化物』達へと、オファニエルの棘をぶっ刺し挽き殺す。嬉しいことにコイツらは自己領域の中でのみ使える特殊能力に全ツッパしているから戦闘能力はからっきし。こうなってしまえば板の上の鯉。逃げ惑う彼らは我先にと扉へと向かうが、開くことはない。
>謎解きってこういうもんだっけ
>難しいとアクションゲーじゃなくなるし…
>逃げ惑う無辜の市民を虐殺する英雄
>姿だけだから……
「おいおい私の
──
HEAT
L[■■■■■■■■□]H
──
散々辛酸を食わせられた奴らを一網打尽にできるとあってシェリーは
[Battle-Result]
A-udometer
貢献度:Solo
評価度:Amazing
タイム:00,04,18,52
報酬
-アクト・グラディアトル(初討伐特典)
-異世界の宝飾(FA特典)
-異世界の艶布(LA特典)
-異世界の艶布×3(最速討伐特典)
-異世界の宝飾×3
-ロック・ロック×2
-異世界の艶布×5
-蠢く肉塊×1
-フォレストクロウ×2
-フランベ鉱石×3
-宵闇の羽×2
-砕けた魔核×2
称号
-[傍観者を初排除せし者]
-[傍観者を単独排除せし者]
-[傍観者を最速排除せし者]
-[傍観者を排除せし者]
-[ステージブレイカー]
-[独壇場]
<ワールドアナウンス>
『シェリー』が単独で『[A-udometer]』を初排除しました。タイムは4分18秒52です
「おお、お久しだねワールドアナウンス」
全員を殺し切ったところで戦闘終了を告げるバトルリザルトが出現。『雫』は勿論ボイリング・ブラッドは解除、シェリーを後ろからロケット推進で押していた興奮も消え去った。今の彼女はパーフェクトにクリーン。
「ふぅん、ドロップ品は再戦した奴らのやつも混じってるんだね〜……んけほっ」
>咽せたな
>たすかる
>明日のお弁当にする
速攻でクリエナを摂取し綺麗ではなくなったところでキラキラのエフェクトとなってこの
「うわっ眩し」
>目がァー!
>お前ら耳も目もイカれてて大変だな
>網膜の替え用意してて助かったわ
「おー……っと、戻ってきたのか。元の劇場に」
そして視界が戻るとシェリーは"本来"の舞台裏に居た。そう確信できたのはスタッフの格好をしたNPCの存在があったから。
「貴方は…!?」
「ああ、あなたは英雄シェリー様……クーリエ様も!?」
「英雄クーリエ様、起きてください…!出番です…!!」
「あぁ、うぅん……」
>これが社畜ですか
>ちがうでしょ
>眠そうにしてるクーリエたんかわゆす
>わかる
「わ、ぁっ、待って待って私これから館長の元まで行かないと──!!」
>疲労溜まったシェリーもかわいい…
>なんでも可愛いって言うな
>かわいいものはかわいいのでかわいい
慌ただしく舞台裏を走るスタッフの波をどうにか掻き分け階段を登って館長室へ。ゼェゼェと息を切らしながら扉を開く。
「……館長さん……クーリエ、見つけたよ。もう舞台に立てるって」
「それは、それは……よかった。英雄シェリー様。心よりの御礼申し上げます。貴方様のおかげで今日も無事に笑顔を届けることができます」
>館長も可愛い
>まじで見境なくて草
>逆に尊敬するわ
心配そうに右往左往していた館長は、シェリーの報告を聞くとすぐに駆け寄ってシェリーの両手を握って深々と感謝を述べる。
「……このまま引き止めてしまっては申し訳ない。シェリー様にも我が劇場自慢の演目を是非ご覧いただきたい…!」
「お、いいの?」
「勿論です。既にシェリー様はプレミアチケットをお持ちですが……これからも、いつでも、ご覧になってください…!!」
>嬉しそうだねぇ
>まぁ助けてよかったって感じ
>俺らは何もやってないけどな!!!
──
3-3-EX2
[ユメなら覚めないで]CLEARED
観客たちは満足していない。この『舞台』はあなたのためのもの。あなたの強さを観るためのもの。あなたの全盛期を消費するためのもの。もう一度ここに立ったあなたには、演じきる義務がある。あなた自身の、活躍を。
CLEARED:あなたは演じ切った末、この劇場に巣食っていた傍観する異世界の化物を排除した。お待ちかねの大舞台にはもう、邪魔な観客達は存在していない。
報酬:30000C+冒険者ランクボーナス(大)
──
そしてシェリーは報酬を受け取って入り口のメインホールへ帰還。スタッフオンリーと書かれた扉を裏から開けたところでイベントエリアからは脱出。微かな
「んん〜〜っ……よしっ、それじゃ早速クーリエの演劇観に行こっか♪」
可愛く目を閉じて腕を天に伸ばしてストレッチ。衣装も相まって今ならクラスで二番目くらいに可愛いと言われるかもしれない。一番は華蓮。
>今日の配信残りは?
>このまま演劇見るのかな
「ま、そうだね。あとは雑談配信ってことで、一緒に芸術鑑賞楽しもうぜ!」
>あーい
>ポップコーン買ってくるわ
>スパチャ口座おろしてくる
「はいはい、まだ時間はあるしほどほどにね♪」
チケット係にプレミアチケットを見せれば席までは素通り。ドリンクはリアルで飲むクリエナ。今日のシェリーの昆布巻き配信は、彼女が満足するまで続くのだった。
〜〜〜
Tips [A-udometer]
今回のボス。第一話第二話の二人がかなり脳筋よりだったが今回はクソめんどくさいギミックボス。多分文章だけだとわかんないと思うので超簡単な説明を入れます
まず、コイツの『本体』はあの空間そのもの。観客達は今回の劇場の概念に呼応して現れたナニカに過ぎない。
能力としては外部からの干渉拒否と内部に対する強制付与。
入り込んできた者に対して演者概念を与え、自身の用意した演目を演じさせ観客である自分達へと干渉できないようにして弄ぶ、まぁ普通に害悪でしかない化者です。
うん
気になるところがあったら聞いてください
次回の日常回が終了すると
PS:ここまで読んでくれた皆さん星とかコメントとかください♡
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