日常-9 ファントム・ラン
10分だけの休憩を挟んで本日配信2本目に突入。クリエナタンクも3缶分
『俺の姿が見え、消え、また現れたら──』
「『Bang、お前は終わりさ』!んっん〜♪やっぱりカッコいいよなぁ〜♪」
私の心の友、ファントムの決め台詞に乗せてばっきゅーん。こいつはデコイやステルス迷彩で相手を騙す能力を持ってる。
>当然のように選びやがったな
>弱キャラなはずなんだけどなぁ
>シェリーの魂入ったこいつの動き好き
「ありがたいこと言ってくれるねぇ♪」
普通は三人チームを組んで乱戦の中に身を投じるバトルロイヤルなこのゲームだけど、今日やるのはキルゲーム。普段より小さいマップに飛び込んで、9vs9で殺し合うモード。
「ククク…私のスーパーなキルムーヴに恐れ慄くがいいわ…」
勝利条件は相手チームの殲滅。ワンラウンド制だからサクッと回れるのがいいルールだね。
>味方が弱いとボッコボコにされるんよなー
>萎え落ちとかやめてくれよな…
「そんなことしたら私の配信で晒されてるわけだから叩き放題だよ」
>よっしゃ
>砲撃用意
>特定は任せろ
「……ねぇ、私のせいにしないでよ?」
>わかってるわかってる
>バレないようにするぜ
「バレなきゃなんとやらって奴?せめて合法な手段でやってよ〜……っと、武器はこれでいいね」
しないでとは言わないけどさ。で、今回選んだのもいつもの組み合わせ。射程の長めな牽制用のARと脳天一撃必殺なマグナムを選択。ホルスターに入れた銃を早撃ちする時に感じる、"静止"の感覚って好きなんだよね。すっごくさ。
>何故ヒットマンを選んだし
>シェリーのメイン兵装ゾ
>狙撃はしないけどCQCはする
「ふふふ。まぁ見てなって」
今回のステージは崩落した都市──ラーヴィアシティ跡。瓦礫が多くて射線を切りやすいいいステージ。その分不意打ちにも気をつけないとだけどね、お互いに。
「いっちょやったりますかー!」
スタート地点と戦場を隔てる透明なバリアから少し離れてクラウチングポーズ。いつでもスタートの準備はできてるぜ。システム、バトル開始の合図をしな。
『3──2──1──』
>フォームいいな…
>ちょくちょく出てくる綺麗なシェリー狂おしいほど好き
>リアルでも何かやってるのかな
やってねーよ。私は万年帰宅部だーい。
『START』
「っしゃいぶっ殺してやんよー!」
ったから待機エリアから飛び出してまずは廃ビルの中に滑り込む。道路に向けてデコイを飛ばしておくのを忘れないように、索敵の代わりになるもんね。あ、撃ったやつをどうやって逆探知してんだって言うツッコミは野暮だからやめてね。わかんないから。
『もう一人の"俺“、やっぱイケメンだなぁ』
わかる。
>はっや…
>キャラ性能がプレイヤーの技量に依存したらこうなるといういい実例だな
>コントローラ民ワイ、もう再現不可能で涙
「大丈夫大丈夫!フルダイブ民とコントローラー民のマッチは分けられてるから!」
視聴者に叫んではみるけどこれは問題ない。このゲームは
『おっと、俺の美しさに釣られちまったらしいな』
「んー、スナイパーか…」
ナルシストな
>それ強いよな
>撃ってしまった時のデメリットができて強くなった
>逆に言えば撃たなきゃいいんだがな
「実戦だとそう冷静に対処できないんだぜ〜…?」
デコイのリキャストが終わったのを確認して耳を澄ませる。足音は……聞こえるな。通路の先にデコイを派遣。
「『騙されな』」
>シェリーのイケボ脳が溶ける……
>コレクションしてる
>\[今日もこれで頑張れます!]/
「ならよかったぜぃ」
ファンサはほどほどに、対して私は障害物に滑り込んで物陰から回っていく。ファントムの常套手段はやっぱコレだね、おっと銃声が…見つけた。
『アイツにゃ審美眼ってのが備わってないらしいな』
「だから私が仕置いてやんよっ!」
壁越しソナーで位置を暴いてくる狩人を後ろからヘッショ。背後をとったもん勝ちってのはいいゲームだよね。送れてもう一人分のキルログが流れたけど…
『ファーストキル。キラキラしてんなぁ、オレ』
>さっすがー♪
>セリフがいちいちクサいよなぁ
>だがそこがいい
ファーストキルは私のもの。これで9vs8……おっと相打ちで8sv7だね。ま問題ない。今の銃声で一人釣られてきたみたいだから、視線誘導用のデコイを設置。ちょっと曲がり角の手足の先だけをチラ見せしてね。
『デコイで恋しき悪の華。いや、俺は悪人じゃないんだが…』
>かわいい
>キリッとしてから脱力するこの感覚がたまらん
>いいキャラしてるよねー
その間に私は階段を登って2階へ移動。デコイが見える入り口の上に陣取って敵を…見つけた。成る程、次はよく見るアドレナリン漬けの突撃兵か。こいつの対処は簡単。
「動く前に撃つ」
『ヒュウ、頭に当てちまったぜ。こういうのをヘッドハンティングって言うんだよな』
>[ナイスショット]<
>ツーキル!
>ちっこいのによくやる
違うと思うけど。でもこうして話してるの聞いてるのは好き。さ、窓から飛び降りて左回りで行こう。
『こっちが優勢だな。ユーセイファントム、応援よろしく』
殺して殺されてまた殺して。割と右の方に固まってたのか今や6vs5になった。もう、私のキル数が減るでしょうが。
>試合展開早いなー
>キルゲームなんてこんなものでは?
>エイム練習によく回してるわ
「あー、わかる」
これもノンフィクションエンジンを使ってるゲームだから慣らしにちょうどいい。唯一問題を挙げるとすれば剣がないから剣のないゲームは別ゲーをやるしかないってとこだけど。パルクールで暴れる分には問題な……やっば
『喰らっちまった!?』
「いったたた…」
肩にヒット、ダメージは0.8倍だけど着弾の衝撃はキッツイ。痛いのは嫌なのでデコイで逃げようと思いま…っふ。
>煽られてんなぁ
>お前の位置はわかってるぞってか
銃声のした方向の様子を見ようと身体を出そうとした瞬間に足元に飛んでくる弾丸。早く出てこいよと痺れを切らしたのかな。
「……マナーがなってないねぇ」
同時にこちらのチームが一人減って5vs5。頭数がまた一緒になったか。しかもこれ、銃声と弾痕の大きさからして……次弾撃つには時間のかかるSR。となればこの手しかない。
『デコイを送る』
視線誘導。まずはコレでスナイパー野郎の気を逸らす。そして一拍遅れて逆方向に私は駆け出す。そして同時に。
『ファントム・ザ・ワールド。オレ"だけ"の世界だ』
私自身は透明に。周囲にたくさんのデコイが出現して、場を撹乱する。近距離戦なら私が思う中で最強のアルティメット。
「ふっ、ちょっと慌ててる」
ファントム、私は大好きなんだけど使用率は低いんだよね。最近強化されたとはいえ自分が強くなるわけじゃないから。なので初心者イキリがコレを見るといくらか焦るみたい。
『騙されたなぁ!』
アイツがデコイを撃ってる間に私は橋の先の建築物屋上にいるロボの元へと走る。っていうかこいつ最初に撃ってきたやつじゃん。マジで芋って碌なのいねーなっと効果時間間近。
「この透明化は次に攻撃するまでか時間経過だから急がないとなんだよね……」
>えぇ…
>ファントム相手に近距離戦したくない
>相手にいるとほんと厄介だ…
「ははは」
建物の下に入り込む寸前に、上にグレネード投擲。屋根の上に落ちて…
『ナイスキルだ、オレ』
「爆殺☆」
>お見事
>ハットトリックじゃん
爆破を背景にキラッとキメてはいピースっ。けれどサラッと殺し合いしてたらしくてもう3vs3。くそう、私もその争いに参加したいな。
「あちらから銃声が聞こえるぜヒャッハー!」
>ああシェリーが銃声に釣られクマ…
>オイオイオイ死んだぞあいつ
>どうせシェリーが勝つ
「わかってんねぇ!名前覚えといたよ!」
>やったぜ
>[褒めたら名前覚えてくれるんすか!]
>[シェリー最強!シェリー最強!]
「後追いはちょっと……っと見つけたね」
さっきの爆発で一人はこちら側も警戒してるみたいだけど、二人は向こう側を向いてる。そして撃ち合い中。だから私はこっち見てるワープ女を撃ち殺そう。
>多いよなぁこいつも
>ほぼ二大巨頭なところある
>ね
『オレに任せる』
デコイを前に出し、私はビルの裏を走って横に回る。そして見えた頭を……撃つっ!
『小さい的にあててやったぜ!縁日の射的屋台で粘った甲斐あったなぁ』
「よっし!」
再びワンパン。わざわざ使うってことは慣れてるってことよ。
「流石に活躍しすぎちゃったから…手加減してあげよっか」
ARを装備、ガラ空きの胴体目掛けて乱射乱射乱射。
「ふっふ〜♪腰撃ち楽し〜♪」
>トリガーハッピーだ…
>ジュウの顔
狙いをつけずに撃ちまくるのってほんっと最高。程よい反動が私の心を撃ち抜いてくる。
「あとはよろしくね!」
焦った敵二人は遮蔽物から逃げようとして、仲間に撃たれてジ・エンド。私たちの勝利だ。
『WINER REDTEAM』
>おめー
>まぁいつも通りね
「当然。それじゃ次の試合いっくぞー、そのあと参加型でバトロワも行っちゃおっかな!」
勝利に喜ぶMVPの
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