#32 【フレアドライブ】まぁ私美少女配信者なのでぇ〜??【環境破壊】

「はいというわけで着いたね第七層」


>存在しないはずの7層目

>トイレ行けねえんだけど

>でもピッケル振る手止まんねえんだけどww


「ナイス採掘」


 現在地、バッティラ坑道第七層。数分ぶりに地に足をつけたシェリーは改めて周囲の環境を確認……


「いやマジで明るっ!?」


>そう。明るいんだよ第七層

>光るツタとかいう変なののせいでな!

>ちな第八層の壁にも張り付いてるし第九層の天井までびっしりいってる


「降りながらやけに光強いなって思ってたけどガチで明度高すぎて笑う」


 例えるならば某箱庭なクラフトゲームで敵性Mobが湧かないくらいの明るさ。ゾンビにスケルトン、蜘蛛とかは湧かなさそう。ついでに例の蝙蝠も。


「それでさー、敵ってどういうの出るのー?」


>それがなー、ちょっと特殊でなー

>何だよその喋り方w

>動く武器に炎の車輪、高速で突っ込んでくる船のラジコン


「……え?ラジコン?」


>そ。ラジコン。

>ぶっちゃけここ美味しくないからさっさと抜けたほうがいいよ

>これはガチ

>早く二桁まで逝け


「言い方ぁ!」


 妙に急かしてくる視聴者達。普段なら何煽ってんだよーとキレるところだが今回ばかりは下調べなしの突撃隣の地底遺物。先人のアドバイスに従ってオファニエる。


 ギャャャリリリガガガッッッ


>安定してるなぁ…

>その移動法羨ましいわ

>乗り物系の昆布っているのかね


 地面に叩きつけられたオファニエルは文句も言わずに光る洞窟を突き進み、次層への入り口を探す。


「私は見たことないかなぁ」


>いるぞ、さっき銃を買いに来た子が車椅子だった

>車椅子????

>ええ…


「車椅子で銃ってなんだよ、いや戦いたくないなそれ」


>俺もお前とは戦いたくねえわww

>いや待て、シェリーは近づいてくるだけマシでは…?

>近づかれたら真髄が終わるまでずっと挽かれるんだぞ

>どっちもどっちか……


「オイこら視聴者 オファニエられたいなら最初からそう言えよ、な?」


>ヒェッ……

>すんませんマジ勘弁して下さい

>許してヒヤシンス


「しょーがないなぁ……っと、来たね」


 ふわりふわりと浮遊する武器達に、回る火の輪がこちらを見つけてアクティブ化。追突で止めてこようとするパトカーみたいに遠慮はなしで突っ込んでくる。


「よぉーいっしょぉっと!」


 なのでアクロバティックに機動モードから飛び上がって空中から薙ぎ払い。比較的小さいこれらは固定打点+棘の影響で目に見えて削られてゆく。


>武器破壊(力技)

>火の輪、俺すっごい苦労したんだけどな…

>物理効きにくいみたいだしね

>固定打点の楽なところ出たな


「うっははははぁっ!」


 流石に硬い盾のエネミーには圧迫面接。容赦なく削られ割れてドロップ品に。古代の遺物があったので早速鑑定──


──

【壊れた遺物】

カテゴリ:古代の遺物

属性:音

効果

<『偽』属性の攻撃が強化 II>

──


「ゴミぃ!」


 ベシイッ!


>草

>まぁいらんわな…

>虚属性とか何???


「うーん…すごいニッチな英雄が持ってたかなくらい珍しい属性だったと思うよー」


>ニッチな英雄とかいうパワーワード

>名は残ってるのにな……


 人気投票でも低域を彷徨い果てにはコレクション商品には未だ登場していないくらいにはニッチ。そもそもSWシリーズにはあまりにプレイアブルキャラが多すぎるという話ではある。


「あんまりパッとしなかったんだよねぇ、加入時期が遅くて………お、また穴見つけた。他にルートってあるの?」


>なくはない

>ただ第八層に普通の道なんてないぜ

>シェリーはさっきと同じ要領で降りた方が楽なはず


「……マジで?」


>炭坑夫は嘘つかない

>嘘つくのはチーターだけだ


 第七層は見ての通り光る洞窟と呼ばれている。そして第八層の俗称は繁る風穴であり、今度は様々な生物の集合住宅を直下していく。シェリー、先程の再放送にはならないぞ。よかったね。


「……ちなみにもしかしてだけどランタンっていらなかった?」


>いらなかったね

>後でいるから安心しろ

>シェリーならどうにかするだろ…


「信頼が厚くて嬉しいね!」


 そう言って穴の先を覗き込むシェリーの目に写ったのは遥か先まで導く蔦光の坂道。ただし勾配は九十度を超えているものとする。


「……虫がいるなぁ……」


 シェリーの嫌いなもの10位は節足動物。見かけるだけで潰したくなるくらいには嫌悪している。9位は羽虫で8位は夏に刺してくる蚊。

 

>大丈夫!駆け降りれば追いついてこないから!

>再生でがんばれ

>火力はそこまでよ


「RTA案件ってことね!」


 しかし嫌いと言っていても進めない。蝙蝠は倒し飽きたからそれよりマシだとオファニエルを叩き起こして穴の中に飛び込んだ。


「紐なしバンジーRTAはーじまーるよー!」


 ブレーキなんてない。自由落下の勢いそのままに壁に張り付いたオファニエルは下へ向けて全力回転。曲芸師でもなかなかやらないようなアクロバティックロッククライミング(下り)を見せつける。


>ほんと自由自在

>神殿を穴ぼこにしただけのことはある

>ヴァーサ様見てますが、これが英雄筆頭の姿ですよ


 音に惹かれ向かってくる矮小なる虫をジャァリリリッと擦り潰して、もっと、もっと深く。最高の遺物を求めて坑道の腹の中へ。


「──ってやっぱり気持ち悪いんだがーー!?」


 重力と蔦に従って最短経路を下るがそれは地元走りと同じ掟破りのEXルート。小さい卵が引き裂かれ液体になってシェリーに掛かる。しかもそのベタついた肌に千切れた蔦が張り付いて不快系数爆上がり。クリエナを飲んでも流石にこのイライラは治らない。


>ひでぇ格好

>ジャングル走ってもなかなかこうはならない

>美少女配信者の姿か…これが…?


 今のシェリーを例えるのなら超文明の利器を手にした原住民。草と岩でできた化粧は鬼の形相のシェリーにはよく似合い、黒光りするはずの身体装備は色とりどりの液体が滴っている。


「ブッ飛ばせ私のフラストレェェェショョョォォォンンンッッッ!!!」


 ギャァァァァンンンンッッッッ!!!!


>シェリーが咆哮を取ってなくて良かった

>うるっせぇ!

>ギアが変わっただとぉ!?


 そんな魂の叫びに応えてオファニエルの速度が増していく。エンジンに焚べているのはシェリーのパッション。殺意の炎を噴き上げて自然の中を突き進み、シェリーを覆い尽くしていた原始は燃え流されて灰となる。


「ィィィ──────ッッッフゥゥゥ!!!」


 火傷の状態変化は再生で相殺。身を焦す熱気は魂にも伝わって、クリエナまで完璧にキマった。


>お前無属性だよな

>無…?

>火属性涙目

>自分焼いてんだよな


「邪魔だぁぁぁーーーっっっ!!」


 飛んで火に入る地底の虫。ロックフェスにはまだ早い。勾配が百三十度を超えて終点近く。ブロック・ロックがインターチェンジで別の壁へと吹っ飛ばす。


>乗り換え上手

>ノンストップシェリー

>これはWR


「攻め攻めチャートはテメェらには真似できないだろ〜っ☆」


 ロケットのような推進力を得て。音さえも置き去りに。光の螺旋の先。第九層まで走るように落ちてゆく。


>気づいてるか…これ……真髄解放使ってないんだぜ…

>マジじゃん

>え?なんで?


「うぉぉらぁぁ!!てめっちょうど良いところにぃぃーー!!」


 飛んでいた大きな甲虫を棘で串刺しに。勢いそのまま落ちていき、甲殻へと徐々にオファニエルの車輪が沈んでいく。


>通りすがりのカブトムシさーん!?

>可哀想すぎて草生えた

>なんの恨みが…


「そこにいたからだぁぁぁぃっっっ!」


 大熱量の尾を引いたままシェリーは白く光る第八層の終わりを迎える。そして眩んだ視力を一瞬で取り返したシェリーの目前に映ったのは。


「──草原!?」


 地底にもかかわらず広がる広大な草原と、ポツポツと見える原生生物の群れの姿だった。


〜〜〜

Tips クリエナ(多分その2)

正式名称はクリーチャーエナジー。シェリーはいつも定番の緑色の缶を飲んでいる。普通に合法だけどシェリーは異常にガンギマる。


アリサはゼロコーラ、バレッティーナは意外と煎茶。ファインダーは珈琲を飲むと強くなる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る