#30-β 【依頼完了】いつも死んでおらへん?【再合流】
「いくでぇーーっっ!!」
>カッコいい…
>ケモナー歓喜
>戦争が起きるからその単語は禁句
極彩色に光る狼となったファインダーが吠える。それに返してか蝙蝠の壁もキィキィうるさく鳴くものの、駆け出したファインダーの身体に当たった場所から崩れていく。
「楽で速くて助かるわぁ!」
>無敵ってそういう….
>ダメージ0だけじゃないの??
>嘘でしょ…
特性"完全無敵"の基本的な効果はダメージの無効化。これはキャラクターのHPが減少しなくなるというだけでなく、"装備の耐久力"まで減少しなくなる。ということでファインダーの装備は耐久を切り詰めてまで攻撃力に特化したものになっている。
「……マチェたん、ちゃんと着いてきてね」
「は、はい!」
「退きや!退かんかったらウチのツメで引き裂いてまうからな!」
シリウスと合体したファインダーにはこの効果が全身に掛かるので、その効果を悪用する為全身の装備が無耐久の効果特化にカスタムされている。
>四足歩行上手くね?
>お前のような初心者がいるか
>これが噂の通信教育ですか
>シェリーの配信見てたらこんなに強くなるのかよ
だが、"完全無敵"には更なる隠れた効果が存在している。リアルの物理法則を再現するというノンフィクションエンジンの中で完全なる無敵を再現しようとした場合、"当たり判定"が非常に特殊なこととなってしまうのだ。
>…なんか蝙蝠後ろから近づいたやつも死んでね?
>たしかに
>攻撃する側から…なんでだ?
実は星を取った配管工が敵に触れた側から弾け飛ぶように、彼女の全身は超強力な『攻撃判定』で覆われている。その威力は、見ての通り化け物の眷属程度であれば触れるだけで弾け飛ぶ程。ちなみにこれは真髄解放或いは魂魄暴走時の様な特殊な状況下でもない限り
「ウチらの行方を塞ぐには柔すぎるでっ!」
「は、はやすぎ……」
「……おんぶしたげる」
>うぉぉぁぁ
>こんのガキャァ……
>ずっっりぃっ!!
護衛対象は
>見ろ、蝙蝠達がゴミのようだ
>ただの環境物
>おれここスッゲェ苦労したんだけどな…
「わんわーん!」
本来ならば低耐久とはいえ数が多くて攻撃力の高いこの眷属蝙蝠の群れを切り抜けるにはパーティ全体の協力が必須だろう。だが触れるだけで敵が吹き飛ぶ高機動のヤベーやつがいる為それの必要は無くなった。だって、走れば消えるから。
「……もうファイ一人でいいんじゃないかな」
この惨状を想い、バレッティーナが悲しそうにそう呟いた。彼女の
>それは思った
>バレ様…
>いやバレッティーナがいないとクエストクリアできなかったでしょ
主に護送的な意味で。マチェを守れても運べなければ意味がないから。
「ありがと」
「見えてきた!第一層!」
「もう少し、ですね…!」
遂に三人は太陽の光が薄く滑り込んでくる地点まで到達した。外へ連なるメイン坑道までは数十メートル。だがその前を一際大きな一つの影が塞ぐ。
『KII────NN!!』
>黒板をツメで引っ掻いた音ー!
>嫌ダァ
>たすけて……
化け物本体──レベルまで成長した眷属が行手を阻む。本物と遜色のない金切音がドーム状の空間を埋め尽くす。こいつこそが本来の3-3のボス。……つまり、今頃シェリー達と戯れあっているあの化け物は3-4で色々集めてきてからバフと共に倒すべき相手なのである。閑話休題。
「……撃つ」
背中に子供を背負ったままバレッティーナはミラーラミを放つ。フルオート射撃で放たれた鏡像は眉間に48発。すぐに出せる瞬間火力は仲間内では随一。
>…オカンじゃん
>母は強し
>よく当たるよなぁ……
『KIIUU────!?』
無論見た目以外は劣化品なので大ダメージに思わず怯んでしまうデカ蝙蝠。機動力を失ったが為にすぐ側に這い寄るキンキラキンのオオカミ。
「邪魔やーーっっ!!」
狼拳が腹を貫いて、続いた身体の攻撃判定で腹に風穴が開く。内臓が消し飛んだせいでHPがゴリッと削れる。
「リロード & ショット」
そしてリロードを終えた合わせ鏡より放たれた実像が再び体内で跳ね回り、結果は爆散。全ての障害は取り除かれた。
>後続来る前に終わらせてて草
>全員無事だな!ヨシ!
「相手にもならんかったな!」
「ん。先を急ぐ」
「え、ええ…一瞬で……」
戦いとも言えない障害物競走を終えた二人は、カレイドの街まで急ぐのだった。
「やぁ」
道中でシリウスとの合体が切れ、徒歩でカレイドの南門にたどり着いた三人を迎えたのはボディースーツを着込んだ女──詰まる所シェリー本人。
>シェリー!?死んだはずじゃ!?
>残念だったな トリックだよ
>いや違うだろw
「シェリはん!?先着いとったんかい!?」
「……いや、まぁ……クエスト報酬、的な、ね?」
EXα、即ち化け物退治の報酬はカレイドの街噴水へのワープ地点解放。死んだあとクエスト画面を開いたら書いていたのでこちらまで飛んできた。遅れてアリサも合流完了。
「いやー、シェリー、見事な死にっぷりだったな〜♪」
「死にっぷりってなんだよ死にっぷりって」
「え?そんなオモロい死に方しはったんシェリはん??」
「アーカイブ、楽しみにしよ」
>期待しとけww
>例に漏れない素晴らしき死に姿であった
ファインダーの過呼吸による救急搬送の未来が確定したところでマチェが街に入った為クエスト完了。全員に報酬が支払われる。
「今回は本当にありがとうございました…!」
――
ストーリークエスト
2-3-EXβ(CLEARED)
[異世界の化物から守り抜け]
異世界の化物、[B-adrenaline]と対峙した。奴から逃げ、護衛対象の命を守り抜け。
CLEARED:護衛対象は無事に守り抜けたようだ。彼は貴方達に深く感謝している。
報酬:25000C+冒険者ランクボーナス+成長上限解放(IV)※パーティ全員に適応
――
そして与えられたのはCとランクボーナス……だけではなく。念願の『成長上限解放』。
「……成長上限解放…やと」
「なるほど」
「ロックかかってたのかー」
「これでスキルが増えるって訳だな」
これにより四人の昆布のランクが更に上昇するようになった。ここまでの経験値量は残念ながら計算されていないので色々無駄にはなっているがそこはご愛嬌。そもそもそこまで要求量は高くない。
>\\[おめでとー!!]//
>進化が楽しみだ
>シリウスの進化は予想がつかない
「……レベル上げで暫く配信回数稼げそうだな……」
「ほなその分ウチはゆったり編集できそうやなー」
>本当かなぁ
>それなんてフラグ
クククとわざとらしく悪どい笑みを浮かべるシェリーを見てファインダーは汗を拭うが……
「撮影班を逃すと思うな」
「えっ」
肩を掴まれ視界がシェリーの笑顔にズームされた。
>[百合センサーが反応しました]
>シェリ×ファイか…どうなん?
>割とあり
>箱推し故問題なし
「シェリーの視聴者、変態多いよな」
「ね」
自分のことは棚に上げてそう曰うが狂戦士と二丁拳銃士。どこが変態でないと言えるのだろうか。一応カメラにはその音声はギリギリ拾われなかったのでセーフ。
「えー……じゃあ、もしかしてウチも……」
「毎回じゃなくていいからまた暇な時は遊ぼうぜい☆」
「何のためにアタシがパワーレベリングしたと思ってんだよ」
「結局私に働かせたんだから次は私が働かせる番」
>暴走するのが増えたのでよし
>こっちの方ch登録しといた
>配信二枠開いたら収入二倍だぞ
「よっしゃウチも頑張るかー!!」
友人の激励よりもやる気が出るのはカネの匂い。心の欲望は何よりも優先される。
>現金すぎる
>金に正直
>お前もう株やれよ
「為替って怖いんよな」
「……一時期ぬとねの区別ついてなかったのってそういうことだったの」
その時は丁度テスト期間中だったので補習回避の為に死に物狂いの勉強会が開かれたことは言うまでもなかった。
>経験済みで草
>やらかし済みだったかこの女
「ミーシャァ!」
>腕だけはいいんだよな
>素材オレ達にも回してくれよ……
いつものダイレクトマーケティングを仕掛けられてキレ芸を披露するシェリー。元よりその予定だったがある意味これもファンサービス。
「はぁ〜……」
「ほな今日の配信はこれで終わりやな〜。ほらほら全員ウチの横に集まってな〜♪」
「え急にどうしたのそんな……配信カメラ2個ない?気のせい?」
>イェーイシェリーみってるー?
>気づいてなかったのかよ
「撮影班や言うくらいやからうちも始めただけよ、気にせんと早う早う」
「えぇ〜……」
といいつつもムギュッと集合。小さいアリファイが前でバレシェリが後ろ。門番は早く入らないのかとこちらを見ている。
「ご視聴お疲れさん、今日の配信はここまでやでー!」
ファインダーが元気よく腕を振り上げ
「んじゃまた次回☆」
シェリーはいつものウインクピース。
「アタシの動画もよろしくな!」
アリサは野性味あふれるサムズアップで。
「以上、私の活躍でした」
バレッティーナは功績を強奪しながらクールに手を振……
「ちょそこは複数形だr」「まっ配信終れな」「重い重い重──!」
……と思ったら最後の最後で全員前倒れ。わちゃわちゃと地面の上で蠢いたあたりで配信は終了した。
>おつww
>草
>仲がいいなぁ
>次のアンソロ本のネタは決まった
>買うからはよ描け
>楽しみだ
〜〜〜
Tips 成長限界
はい。まぁ、見ての通りです。過度なインフレとかを防ぐためにメインストーリー進行でこの制限が上がっていきます。第二話でIVが解放されて第三話で……ってなもんですね。流石のヴァーサ様も初期エリアで延々とレベル上げしてカンストする英雄なんて見たくないんですよ
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