#22 【出店作成】店番ってなんだか楽しいよね♪【素材放出】
「はるばるオーストよりこのビオーレまでようこそお越しくださいました、英雄様」
「はるばるやってきました!」
>はるばる(ちみどろ)
>洗濯しなくても時間経過で綺麗になる仕様で良かったね
>普通なら蜜まみれや
ここはビオーレの冒険者ギルド。またしても何も知らないシェリーはとりあえずストーリー進めるならここだろって事で殴りこ……いや、挨拶にやってきた。
「クエスト一覧見せてくれい!」
「はい、どうぞ」
と言った感じで出される本…と上に追加で出るウインドウ。デイリー、ウィークリー、サブ……
「…………あれ、メインないじゃん」
>がんばれー
>これちょっと罠
せめてキークエとかないのかと色々見てみるも、あるのは普通の依頼だけ。だけど格闘すること3分。
「……ないじゃん!」
>シェリー敗北
>LOSE
仕方なくクエストリストを閉じるシェリー。そんな言葉に反応したか受付嬢が一言。
「お仕事は見つかりませんでしたか?」
「……うん」
「それでは、気分転換も兼ねてビオーレ市場へと向かわれるのはいかがでしょうか」
「へ?市場?」
「はい。きっと素敵な品が見つかると思いますよ」
──
ストーリークエスト
2-1
[ビオーレ市場にようこそ!]
特異な依頼はまだ冒険者ギルドには存在しないようだ。この街の名所、ビオーレ市場に行ってみよう。
報酬:?????
──
「は?」
>おめでとう、メインクエストだよ
>順当な見つけ方だな
呆気ないストーリー進展に唖然とした顔を晒すシェリー。メインクエスト第二話の受注条件は、ビオーレの何れかのNPCの存在する施設を利用する事。武器屋でも料理屋でもなんなら門番でもいいが、とにかく話すことが重要。『いいから市場に行け!』という運営からの"圧"が見え隠れしているような。ないような。
「……行けばいいの?」
>うん
>ネタバレするとそう
「そう言うネタバレは許す」
>許された
>おめでとう
>次やったら牢獄な
「そんじゃー、いどうすっよー」
流石にオファニエらずに、ギルドを出て市場まで徒歩で向かうシェリー。オーストと比べると多い人通りに目を奪われそうになるが、市場はそれ以上の存在感を放っている。
「……最早市場の周りに家があるってレベルだな」
>街全体が商店街みたい
>あながち間違っちゃない?
オーストの露天エリアがフリーマケットだとすれば、ビオーレ市場はまさにバザール。オファニエルですっ飛ばした盆地に住う
「ん、クエスト更新きた」
>驚くなよ
>初見笑った
──
ストーリークエスト
2-1-2
[ビオーレ市場にようこそ!]
特異な依頼はまだ冒険者ギルドには存在しないようだ。この街の名所、ビオーレ市場に行ってみよう。
2:ビオーレ市場は今日も活気に溢れている。ここならいいものが見つかりそうだ。あるいは、手持ちの素材をお金にできるかも。
購入:0/10000C
売却:0/10000C
報酬:?????
──
「オイ」
というわけでストーリークエスト2-1は完全に『市場に貢献しろ!』という内容。
>やったねシェリー、素材が売れるよ!
>[資金ができましたら是非Fald-Smithまでお越しください]
>商魂逞しいな
「……こっちに店移したのね」
ピコンと現れるミーシャのスパチャ。その顔に軽めのジト目を含ませつつシェリーは市場の中に足を踏み入れる。
>職人プレイヤーとしてはこのクエストで荒稼ぎさせてもらってるからマジでありがたい
>10000Cは周囲のマップで狩りすれば稼げるレベルだからな、俺がコミュ障という点を除けば素晴らしい
>可哀想
>NPCの店行けばいいのに
>[クエストに書いてあります通り探索することをお勧めします。蜂蜜であれば料理プレイヤー達が欲しがるでしょう]
「……これはいい指示厨」
>ちなマップ見たら場所はわかるぞ
>かなり楽
>おかげで迷わずに済んでるぜ……
「あほんとだ。モールみたいなマップ表示出てきたね。料理エリアは……あっちか」
ミーシャの提案を受け入れさらに移動するシェリー。通り過ぎる店先からは様々な口上が聞こえてくる。
「鉄インゴットが安いよ安いよー!」
「薬草束買います1スタック2000C」
「いやもっと高く買ってくれよ」
「ミスリル鉱石入荷!!早い者勝ちー!!」」
「数打ち武器はいらんかー?牽制にも使える投げナイフがあるぜ!!」
「………冷凍魚 あります」
>ミスリルー!?
>おいシェリーミスリルあるぞミスリル買えって
>……
>うわ鉄マジで安いじゃねえか買いに行くか
>薬草相場高いんだよな…供給以上に消費が増えた
>今作昆布でメイン武器は事足りるけどたまに武器じゃない昆布のやつもいるから鍛冶屋はやっぱり大事
>もっと増えてくれないかなぁ
>それよりは防具だろJK
>なんだかんだ良バランスだよな
>待って冷凍魚?????
「ははは、みんなアイテムに飢えてるね〜…カメラ回すから今の状況勝手に見ちゃってー」
>[マジ助かる]<
>ありがたい
>出先だから今ログインできねぇのにァァァァ
>[……すみませんシェリー、少し店を空けます]
「出先ニキどんまーいっとあ、うん。ミーシャも行ってらっしゃい?」
そしてたどり着いた食材エリア。ビオーレの台所。シェリーは…NPCのやっているらしいカウンターに肘を置いた。
「ヘイ凛々しい兄ちゃん。はちみつ売りたいんだがどこが良いかね?」
「はっはっはなんだ嬢ちゃん変な話し方だなぁ。そうだな……おお、今なら丁度空いているスペースがあるぜ。1時間2000Cだが、構わないか?」
「OK!」
シェリーは取り出した硬貨をピンと弾き、NPCがそれを掴む。この行為に意味はないが支払いは完了。シェリーの素材放出屋──[Sherry's-Counter]が完成。鼻歌まじりにそのスペース内へと滑り込む。
>映画で見るようなカウンター滑り
>場所把握
>蜂蜜放出!?
「ふふーん、そうだよ〜、蜂蜜放出!というかさっき手に入れた素材放出かな。ローヤルゼリーは数量限定なので気をつけてね!」
ウッキウキで手書き看板を作りながらそう話すシェリー。インベントリの中に眠るアイテムらをカネにしたい。あとメインストーリーを進みたい。そんな考えはあるが…女の子なのでお絵描きも好きなのでついつい凝ってしまう。
>ハウンドベアの素材欲しい
>スタッグ……
「………他の素材はうーん」
>[工賃で20000C頂きますがクイーンビーの女王針とハウンドベアハンド、スタッグビートルの顎を一つずつ加工させてください]
>はやい
>レア素材じゃねえか!
「りょ」
>持ってるのかよ!
>うーんガバ運
>何作るんですかね…
「じゃ、それ以外の素材も早い者勝ちで!Sherry's-Counter開店ね!」
>着いた
「早っ!?」
開店直後来店したのは禍々しい全身鎧に大剣を背負ったプレイヤー。早さもそうだがその姿でも驚かせてくる彼はこう言った。
「はちみつください」
「………1つ300でいい?」
体格の割に篭った若めの声が聞こえてきて微妙な顔になりつつシェリーは価格を提示。相場よりは少し安めの値段だ。
「10瓶ください」
「持ってきなー」
トトンと瓶が置かれて取引成立。彼はウインドウだけで支払いを済ませて去って行った。
「……え、みんなは実物置かない派?」
>面倒だしなぁ
>カッコいいのはいいんだがな
>見る分にはいい
「え〜そっかぁ〜…あ、らっしゃーい」
次にやってきたのはザ・冒険者といったいでたちの男。茶色の外套に皮と金属の軽鎧を中に着て、腰には銀色の剣を提げている。
「熊爪2蜂針30 幾らだ」
「何がいr……はいはい。合わせて4500でいいかな」
「問題ない」
「毎度ありー!」
「助かる」
超速取引。この間たった10秒。
>もう4500稼いだのかよ
>早すぎて草
>……今のaか
「知っているのか!?」
>シェリーとは違う方向で有名なやつ
>ソロ攻略が趣味の仙人
>剣が昆布ってことだけ知ってる
>シェリーと同じような能力ってのは風の噂で聞いた
「えー、片手剣で固定打点?そりゃないでしょ」
>なんでさ
>別にシェリーだけの特権じゃないだろ
「ああうん言い方悪かったか。特徴ってのは武器種だけじゃなくて見た目にも出るからさ。"あの見た目“で固定打点はないなって思ったの」
>でも幽霊をぶった斬ってるとこ見たが?
>物理無効だもんな
「……それ耐性貫通じゃないかな。固定打点の弱点は無効持ち。無効だとまず攻撃が不成立でダメージ通らないんだよね」
>なるほど
>参考になる
>PVP始まったらそういう分析能力は必須になるだろうなぁ
「ああ、PVPねぇ…そのうち実装されそうだけど。次のイベントあたりで実装かな」
>[シェリーさん、前を見てください]
「ん、あ、ミーシャじゃん。まだ金はないけど?」
どうなることやらと笑ってみたところでスパチャが出現。カウンター越しにミーシャが声をかけてきた。
「素材を先に貰っておきます。私が作ったものを20000Cで購入していただければクエスト条件にはなりますので」
「あぁ、了解。いつもありがとね」
「ふふ、構いませんよ。こちらもおかげさまで稼がせてもらっていますから。ついでに蜂蜜を15瓶いただけますか。甘いもの、好きなので」
「いいよー、4500ね」
「ふふ、ありがとうございます」
シェリーは瓶を。ミーシャは硬貨を差し出しまたまた取引成立。
『メインクエスト2-1の条件を一つ達成しました』
「…………チョロいな」
「ええ。第二話は二つ目までは簡単だと思いますよ」
「何その言い方…」
「なんでもありません。シェリーであれば"面白い"ことになるでしょうから、期待しておきます」
「……視聴者の期待には応えましょうかね!」
>ワロタ
>そろそろ着くわ
>ローヤルゼリー欲しい!!!!
「では私はここらでお暇させていただきますね。ローヤルゼリーは一つ5000Cあたりが適正ですが、そこらはシェリーのお好きにしてください」
「ありがとねー、んじゃ、後で!」
>あー余計なことを〜!
>狙ってるやつ多いな!?
>うォォォ間に合えェェェ
「………ちゃんと並んでね!?」
そして、シェリーはストーリー進行に必要な分を大幅に超える収入を得たのだった。
〜〜〜
Tips ひきころ小話
ビオーレ市場:SWORDの中でも有数の商業施設。元々周囲で取れる豊富な資源を直売するために作られたが今では加工品も売られている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます