大会-12 結実と帰還
「よっしゃぁぁぁぁ!!!!!!」
試合が終わり、ホログラム・ディスプレイに勝利の合図が浮かぶのに遅れること数十秒。飛び起きるようにしてシェリーが吠える。腕をカチあげて、戦果を誇るようにして。
「勝った勝ったッッ!!今日はカツ丼だッッ!!」
同じくアリサも現実に帰還。バグじみた肺活量で勝鬨の咆哮を振り撒いて、シェリーと一緒に喜びを分かち合う。
「勝利。当然」
その点優勝するのが当たり前、一つの通過点と思っているバレッティーナの喜びようは二人と比べたら薄いが、エキシビションとはいえこの大舞台で二人と戦えたことが嬉しいのだろう。"バレッティーナ"を演じながらもほのかに顔を紅潮させている。それを察してかレファが後ろからスターシャ共々まとめて抱擁した。
「よぉくやったなぁっ、みんなぁ♪」
笑いながら、そして讃えながら。感情発露激しく言葉から行動でまで喜びを表している。
「……レファさん、暑苦しいです」
「いぃーじゃんっ、お祝いはお祝いだじぇ?」
「…ありがと」
『白熱した戦いの末、今年のエキシビション・トーナメントの勝利は産業革命チームが掴みましたぁぁっっ!!』
『最後の戦いに相応しく、文字通りの騒がしい戦いでした。おめでとう!』
>おつおつおつおつおーつっ!!
>\[アリシェリktkr]/
>[おめでとー!!!!]
>きゃー!!百合の花が咲いてるわ!!!
そして繋がる二つのチャンネル。シェリー達の視界に、再びスタジアムの風景と流れるコメントが帰ってくる。目にうるさくて心地の良い眺めを投げつける観客達に、一つ笑いを投げてオファニエルを召喚。
「私の、私らの活躍、バッチリ目に焼き付けたな!?」
>当たり前だよなぁ
>もちろんです。プロですから
>超早い手の変えよう。俺でなきゃ見逃しちゃうね。
『ええ。ジェットパックで空を飛ぶシェリーの活躍は見ていて痛快でした』
「ハァ〜……負けた負けた」
「跳弾解せぬ」
「ヨーイドンはきついぜよ…」
「居酒屋行くかぁ」
「カラオケも予約しておく」
向かいからはゲーム内とは似ても似つかない深夜テンションの面々が現れる。いつも通り、普段と変わらない様子だが楽しかったという雰囲気はあからさまに醸し出している。
「Good Game、深テン!」
そこに近づいていくシェリー。背格好だけを見ると犯罪臭が香ばしいが一応合法である。
「シェリーちゃん、次は当ててやるからな〜……というか何故斬れるし」
「予測。アリサは完全に勘だから対策しようが無いけど、私は銃口からどこに飛ぶかは見れるから」
「怖すぎて草」
>まぁシェリーだし
>走者ならそんなもん
「てめーらなぁ……ほんと……」
「次はシャッガン当ててやる…だぁーっ、慣れてねーんだよなぁスラッグ弾」
「急速冷凍弾とかまじやめろほんとやめろ」
「なーんでうちの運転にジェットで追走してくんだよぉ……」
「……次も当てる」
その言葉に頭を抱えるポテチ。コーラは腕に悩み枝豆は懇願するかのように冷凍弾はやめろとメタ装備潰しの構え。ビールは自信のあるはずの技能で追いつかれかけたことを恨み、カップ麺は再度の挑戦機会を楽しみにすると静かに語る。
「はははははオタクの負け惜しみは気持ちいいな」
>煽りよるww
>草
>これは負ける
「ま、いいか。金のために来ただけだ。負けた俺らは退場するぜ〜……じゃあな」
「おう、お疲れ〜!」
「……シェリーたんの労い、心に染みるな」
「おうさっき煽られたこと忘れてんじゃねえぞカップ麺てめーの奢りでカラオケにすんぞ」
>へんたいどもめ
>カラオケいいなー
>店で歌うのとVRで歌うのはちがうよな…
そして深夜テンションの一行は退場し、ステージの上には産業革命、シェリー、アリサが残る。中央が競り上がりお立ち台に。意図を把握しているのか5人が登ると、祝いのエフェクトが増す。そして……
『改めて、産業革命withシェリー&アリサ優勝おめでとうッ!全員には賞金100万と副賞が送られる!好きなものを選んでくれよな!』
>100万かぁ
>はー、マジ羨ましい
>あの戦いで勝てんのかお前?
>無理でーすww
そして現れるウインドウ。シェリーは……
『そして……トロフィーの授与だっ!』
>デカァァァイ!
>チームの事務所、これが並んでるの見たが壮観だった…
天からの贈り物のように、ゆっくりと降りて来る黄金のトロフィー。バレッティーナはそれを愛しく迎え抱え。配信にとって映えるように姿をキメる。
「応援、ありがとう。私達はこうして勝てた」
>ええんやで
>跳弾やばかった
事務的なコメントながらも軽い笑いを添えて嬉しさを綻ばせるバレッティーナ。
「みんなみんな、大好きぃよぉ♪」
>俺も!!!
>ガチ恋しそう
派手な見た目と同じく、笑いも手振りもリアクションも大きく配信に映るレファ。その姿は大輪の花のように。
「これからも拙達、産業革命をよろしくお願いします」
>当たり前だよなぁ
>言われなくてもっすよスターシャさん
スターシャはお辞儀をしつつ、クールだけでなく可愛さをチラ見せして見た目年齢相応の魅力を見せる。
「あっずるいぞ!?私の昆布巻き配信も見ろ見ろ見ろーーっ!」
そんないい雰囲気に割り込むように、シェリーはオファニエルを携えながら宣伝を叫ぶ。
>知ってた
>もう見てる
「アタシのチャンネルもよろしくな!!!!」
ついでにとアリサも反対側から挟み込むように割り込んで、カメラに向かってそう叫んだ。
>あるのか…あったな…
>……普通に面白いぞこれ……
『それでは!今年のエキシビションマッチは以上になります!参加者の皆さん、お疲れ様でしたぁっ! 次の演目まで、少々お待ちください!
>おつおつ!
>ピザ食うか
実況のそんな宣言と共に、スタジアムの照明は一時光り止むのだった。
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