大会-11 ノるだけノってトんじまえ!


「さぁ……キメるぞー!!」


 殺意を貯める気合一発。腕も背筋も足も伸ばして叫ぶ。


「言い方がやべーぞ?」


「気のせいだよ」


 第四ラウンド。成績は2-1。つまりコレに勝てば終わり。舐めてかかっちゃダメなヤツ。


「戦法は先程と同じ……ではいけませんね」


「うん。奇襲が通じるのは一回までだからな。今度は……みんなで突っ込もうぜ」


「"みんな"ですか」


「ウチぉカチコミぁ好きぃよ☆」


「運転は……私かな」


「攻撃は最大の防御ってところ見せてやる!」


「ま、具体的手段としては車かな。だから…コスト、余ってたりしない?」


 ちなみに私は素寒貧。切り札にコスト回したら死んだ。


「ん……アームズに回さなかったから、少しは」


「アタシはミサイル捨ててるから結構あるぜ!」


「拙もこの銃を除けば使い道がありませんので」


「ウチぁない!ごめぇんよぉ♪」


「了解……ならどれなら買えそうかな──」


 ビークル高いけど悩むだけの価値はある。だって……楽しいし、ね♪





「よし、コレで行こっか」


 そんな訳で購入したのは急造装甲車。正しくは……


「……ひでぇ見た目だな」


 ただの乗用車にそれぞれ出せるコストで追加の装甲を購入、無理矢理貼っつけただけの強引なもの。


「ははは、風情が出てて素晴らしいな!」


「……走破性は保証されてますし、受け入れましょうか」


「ウチぁワクワクしてきたぜぃ☆」


「……運転できる、けど…けど……」


「バレっちができるって言ったんだから、責任とってよね♪」


 ちなみに定員は4人なので私の座席はルーフの上。


「……準備完了、押すよ」


『5』


「拙は後部座席に」


『4』


「ウチぁ助手席でいーかなぁ♪」

 

『3』


「じゃアタシも後部座席だーなー」


『2』


「……席悩めるとか贅沢ね」


『1』


「自分から上に行った人が何か言ってる」


『GAME START!』


 ガレージが開いて──


「レッツゴーーー!!!」


 ──アクセル全開、フルスロットルでGO!


「道はもう覚えた。見つけ次第シェリーは追いかけてナビになってね」


「あいよっ!」


 実際私が機動力一番だからね。仕方ないね!


「上の調子はどうだー?」


「風がいっぱい」


 いやなんだろうね。自分で飛んでない時に感じる抵抗力と同じような抵抗力なんだけど。主観的心地よさが段違い。あーほっぺたがプルプルする〜……


「そーかー」


「緩すぎませんか…?」


「戦闘前なんてこんなものでしょ。常に気を張ってたら疲れるだけだし」


「うちみたぁにいつも楽しゅうやりゃぁいーんだぜぇぃ☆」


「……レファさんはもう少し真面目になってくださいね」


「むりだぁなぁ☆」


「レファはそれが平常運転だから。今更どうにもならないよ」


「……わかっていますが」


 うんうん、バレっちも仲間と仲が良さそうで何より。ほんっと、ゲームやり始めてから性格変わったよね……っと。


「……居た」


 なんと考えてることは同じだった。ただし彼方はマジモンの装甲車に乗っているものとする。


「発見発見はーっけーん!あの装甲車、深テンのやつだね!いやなんで4ラウンドであれ持ってきてんの?」


「拙らにとって最後にしたいこのラウンド。彼方に総攻撃を仕掛けてくると逆読みされたのでしょう」


「……なら仕方ないかぁ」


 嫌だなぁ


「それじゃ……シェリー。行ってきて」


「アタシと場所交代だぜ!」


「しゃーねぇ……ってくるか」


 走る車から左に飛び降りる。二段で飛んで……ジェットパック起動!一気に加速!


「切り札も使っちゃおうね!」


 隠し玉──フォース・ビット。つまりは無線式オールレンジ兵器。攻撃にも防御にも使える超便利アイテム。ビット操作はボディにつけなきゃなのにビット本体はアームズ扱いなの許せねぇ。


「来たよ!やっぱりシェリー!」


「飛ばすで!」


「こーなーいーでー!」


 マグナムこっわ。ファニングショットかよ。二段で下に跳んで接地、回数を補給しながら回避。


「アリサはちゃんと防いでよ!」


「たりめーだっ!」


 ガガガガガガッキィン!っていい音響かすなぁ、まったく。


「フォーメーションデルタヘドロっ!」


 そして正四面体にビット展開。シールド起動。


「抵抗は無駄だお縄につきやがれこのロリコン共め!」


「ロリだからロリコンじゃ…ない!」


「私は魂に叫んでんだよバーカ!」


 ファニングをシールド斜面で逸らし。


「シールドってのは貫きゃいんだオラァ!」


「じゃあ解除すんだよJK!」


 あからさまに削りにきてるコーラのドリルスラッグ弾は一瞬解除して。


「フォーメーショントランペッター!」

 

 私の後ろに四つ並べて銃口展開。ビーム発射。装甲の一部がが赤熱し溶ける。


「フゥーハハハ物理装甲など貧弱貧弱ゥゥゥ!!!」


「ウチもそれくらいわかっとるわ!エナジーシールド展開や!」


 なっ、クソッ。ビームは物理弾じゃないからエナジーシールドは破壊できない。だけど続行、そちらに回してくれるならありがたい。


「電力足るの!?」


「シェリーに好き勝手されるよかマシや!カップ麺、早う産業革命のタイヤ吹き飛ばし!」


「……いや、悪いがこの場所では難しい。僕は置きエイムが得意なだけだ。ああして車にスモークを焚かれて見えなくされてしまってはな」


「なんやのっ!」


 えっ……うわっ。マジじゃん。私らの車が煙吹いてる。スモグレ座席下に置いて展開してんのか。怖っ。


『ぉ〜♪ウチぉ買ってきたスモークちゃん役ぅ立っとぉねぇ☆カップちゃんの悔しゅう顔かわぃ♪』


『…ちょっと運転しづらいけど、やられるよりはまし。ありがと』


『拙は当てられますから……シェリーさん、ナビも追加でよろしくお願いします』


『あたぼうよぉ!シェリーはこっち気にすんなッ!!』


「あっ、はい」


 とりあえず前を向き直し加速。後怖いのは……来たな枝豆。両手に二つずつグレネードを握って私に投げるつもりなのだろう。けど。


「それの欠点は投げるまでの隙!フォーメーションコンダクト!」


 私のブレードの動きにビットが追従し、ビットはビームサーベルを展開。実質的に剣が延長されるから……


「わざわざ動かなくても斬れるっ!」


 爆風の中をくぐり抜けて、装甲車の下まで接近。後もう少しで"手"が届く。


「ポテチっ!どうするのよっ!あたしたちの攻撃全部防がれてるじゃない!爆弾だって斬られたし!」


「どうして私に言うの!?」


「……一つ一つは防がれてるから、僕達全員で一気に行こう」


「脳筋なオレ達にはお似合いな殺し方だな!」


「ウチは勘定から弾いてな!」


「「「「それは無理」」」」


「そんなけったいなぁ!」


「ああ本当にRPだけは完璧だなぁ!!!!」


 とか言ってるけど危険かも。私へ伸ばされる射線上にバレっち達が映らないよう、高度を上げる。


「私は回避に専念するから攻撃はよろしく!」


『ん』


『そのためのアタシ、だろ?』


『飛び出た頭はお任せください』


『ん〜〜っ、ウチぉ出番ない!?』


「ごめんねレファ!ってなわけで敵チーム総攻撃からの回避耐久はーじまーるよー!」


『……耐久始めるんだ。レギュは?』


「死ぬまで!」


 タイマーはないから視聴者の奴らに計測は頼んだ!


「あの変態、耐久とかほざき出したぜ!?」


「るっせぇなロリコン!」


 まずはフォーメーション…もう省略でいいやデルタヘドロッ!マグナムを防いで爆発物も防ぐ。マグナムは当たれば痛いけど弾丸自体は弾きやすくて助かる。けど。


「オレのことも忘れんな!」


「来た」


 次はスラッグとスナイプ。残念ながらビットはシールドの範囲外だからスナイプに対しても弱い。爆破は許容範囲。そして狙ったのは……ああそうだよな当然私!トランペッターに移行、攻撃して電力を使わせて、っと。


「行くぜ大回転!」


 二段アシのベクトルを上に、ジェッパアタマのベクトルを下にっ!手にはブレード目前には弾っ!


「オファニエルアターック!」


 スラッグもスナイプも諸共に切断両断大回転。。三半規管はリアルに置いてきた。この先の戦いにはついて来られないからな。クリエナ補充──


「こふっ」


 頭も目もなにもかもが冴えてきたっ!そのまま落下で


「大天空ッ!」


「「絶対違う!!」」


 私がそうだと言ったらそうなのだ!回避耐久だけど倒せば勝ちなので!


「当てさせへんよ!?」


『サイドドリフト…!』


 装甲車でそんなのやんのかよ!?車体がスライドした…ってそんな動きする???クソッ手を居合い抜きして先に接地二段を補給して回転停止っ、再跳躍再点火。しかしやばいな燃料が……


『OVER HEAT 90%』


「うん熱量もヤバいかも!」


『壊れるまで突っ込めシェリー!』


『動きが止まりましたね…今ッ!』


「おィ──」


[Stasia]Blake[コーラ]


『まずはワンキル、です』


「コーラがやられたっ!」


「ああもうそんなんわかってる!ウチかてキルログは見てるんよ!」


「よそ見してんじゃないよ」


 ハッチの中にリボルバーをバンバンッ。そして。


「バレっち"面"は作るから手伝って!」


 ビットを先行させて装甲の出入り口上にバリアを展開。マグナムだって弾けるバリア。って事は。


『人使いが荒い……BANG』


 バレっちの弾なんて跳ぶに最適。


「きゃぁぁぁぁーっ!!!」


「ああダメだ僕も死──」


 車内を飛び回る弾丸。一発当たりは弱くとも。その数はじわりと削るに足りに足る。


「勝手に死ぬとか言わないあたしが守ったげるからっ!」


「アカンて何すんのよ枝豆ちゃん!」


「あたしが耐久高いんだから、あたしの後ろに隠れてなさっぃ!」


 中身に目をつぶったらすごいエモいけどさ!こうしてる元凶私なんだよね!容赦なく殺してやんよ!


『……流石に撃ち止め。片手運転片手連射は困難』


「OK十分。流石にそろそろ…」


[Bulletina]Blake[枝豆]


 よしよし置き土産の心配は……


『OVER HEAT 95%』


「先に命の心配だったわ!」


 ビットを呼び戻してデルタヘドロ。怖いものは無くなった。


「ワレ 敵車両ニ突貫ス」


 気分はミサイル。


『逝ってよし』


『……バレッティーナさん最近スラング隠さなくなってきましたね』


 そして支援要請第一。


「レファ」


『やぁとウチぉ出番!インスタントオブジェクツセットぉ♪』


 車ごと近づいてきたレファが色々投げたら目の前にランプと壁が。お互いこれは…飛ぶしかないやつ!


「まずいこりゃ横に行かれへん!」


 いつのまにか横に並んだ深テン車も産革車もトんじゃって。自由に動けるのは私だけ。


『OVER HEAT 99%』


「アリサ、バッターオーケイ!?」


「任せな」


「それが聞きたかった!」


 軌道を捻って深テン車の中へお邪魔します。外はアリサがブレードを構えてる。


「『ぶった斬るッッッ!!!』」


「おじゃましまーーーっっっす!!!!


「ひゃぁぁぁぁぁ!!??」


「ロマンは……爆発だぜ」


「O M G」


『OVER HEAT』


 そして私の亡骸は、内に秘めた莫大な熱量を──!


[A-RI-SA]Blake[カップ麺]


[Sherry]Blake[ポテチ]


[Sherry]Blake[ビール]


『ROUND4 勝者:産業革命』


『3-1』


『貴方達の 勝利です』


 


〜〜〜

Tips バレッティーナのゲーマーステータス(脳内ネタ2)

零距離:E++(ガンカタは練習中)

近距離:D+(一番苦手な距離)

遠距離:B+(HGなので低め)

技術力:A++(跳弾に於いて追随を許さない)

運命力:D

持続力:B-

得意ジャンル:銃。特に跳弾のできるリアル志向系VR。リアル銃は反動制御が出来ないので密かに筋トレ中。

ゲーマースキル

・自己暗示:C++++

バレッティーナ── いや、九天華蓮本人の核とも言えるスキル。おおよそ他のステータスもスキルも元はと言えばコレ。本人の類稀な潜在能力は、彼女の思い込みからくるものである。

・射撃(VR):A+

まぁ、言う必要ないと思うけど……バレッティーナの銃の腕前そのもの。ちなみに本来武器縛りはないのだが好みと思い込みのせいで大体HGでフルオートしてる。

・BANG:EX

これはなんだよって思った?うん。そう思うよね。概略だけを言うとバレッティーナの本能的"演算能力"。ほんの一瞬、トリガーを引くときだけ。彼女の身体が、感じられる"今"を全て捉えてどう撃つべきかを身体自身が勝手に修正する…まぁある種の超計算による結果予測と修正。感覚データを理解しているほど精度は高い。

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