大会-10 常識外は勝ち筋のこと


『1-1』


「……はぁ」


 ナメてた。油断してた。カップ麺が走行中のリンゴでもブチ抜けることを忘れてた。これは私のガバ。


「それに」


 サッサとリボルバーで殺せばよかったのに。オバヒで殺せば面白そうと思ったから時間がかかった。これも私のガバ。


「ほんっと……」


 というかもっと早く走れただろ。二段多用してジェッパ吹かせればッ!私のガバガバガバっ!


「だぁぁぁっ深テンぶっ殺すっ!」


「八つ当たりやめとけよー」


「八つ当たりじゃねーよ!!!!」


 多分な!


「…はぁ〜……」


 先の事は悔やんでも仕方ない。とりあえず外の様子を見てみよう……うるさっ!?


「目論見通り、警察とギャングが衝突中です。先のラウンドは拙も不意を突かれやられてしまいましたが、その分の価値はありましたね」


「ヒュゥッ♪ポリ公の白黒が吹っ飛んだぁ♪」


 ナイスロケラン…ってね。隅っこに置いてるラジオも『ホークネストとBCPMケイサツが戦闘中』ってほざいてるし。


「アリサー、バイク出せる?」


「おう、溜めてたからな!」


 となると……よし。


「じゃ、私はまた突撃するからアリサとバレっちはそれに乗って着いてきて。レファはスターシャの護衛よろしく!」


「任された!」


「では拙は俯瞰狙撃に徹します。騒乱の中の拙は無力ですので」


「適度にNPCのドタマぶち抜いてくれるといい感じにヒートアップすると思う!」


「……スラスラと非人道的指示が出ますね」


「RTA走者は最終的に合理性を突き詰めてしまうのよ……」


 最速装備が変態装備だったと分かった時のなんとも言えないあの顔は誰にも見せられない。思い出したくない……うう……とか言ってる暇があるなら準備完了を押す。当然。


『5』


「じゃアリサ、また投擲よろしく」


『4』


「あいよ。一応場所はわかってるけど行き過ぎんなよ?」


『3』


「善処はする」


『2』

 

「うぉい!?」


『1』


「ガバだけは、しないようお願いします」


『GAME START!』


「釘刺されてやんの!」


 あっスターシャに言われると傷つk ちょ待て投げるの早


「あーーーーーっ!!!!」


 時速100キロで吹っ飛ばされてるような気がするけど二段で回転着地、着地判定がついた瞬間ジェッパで浮いてもういっちょ二段踏んで推進力に転換。


『誰か見つけたら教えろよ』


「そっちこそ」


 大通りは走り幅跳びの要領で。ジェッパ吹かし飛距離伸ばして二段で調整。


『お互いに、ね』


「情報共有は大事。古事記にも…っと、まもなく到着かな」


 乾いたハンドガンの音。飛び交う男達の怒声。撃たれたと叫ぶ悲鳴。無機質に告げる殺害報告。


「おぉ〜やってるやってる……よし。幼女を目視で確認したよ」


 ガレージらしきシャッターは空いてるけど、とりあえず3人は建物の中にいるらしい。となると出立したのはビールと誰かか。


「グワーッ!」


 ……そして今爆発が起こったから枝豆は残留濃厚。哀れ三下。よく私の役に立ってくれた。


「となると突撃は怖いかな。アリサの二の舞になりたくないし」


『うぉい!?』


 言い逃れ場できないでしょうがこのおバカ。


「バレっち、跳弾で爆弾潰せる?」


『もちろん』


「じゃお願い!」


 窓ガラスを割って飛んできたマグナムを避け、ポテチの残留を確認。


「こりゃ立て篭もりと外回りの挟み撃ちかなぁ……」


 ビールはほぼ確定で乗り物を持ってる。ガレージから伸びているタイヤ痕を見るに……トライクか。え?なんで?


「得意武器を考えると……コーラはないから、逃げたのはカップ麺か?」


 バイクに乗りながらシャッガンとか憧れるけど、わざわざ2人を使うほどのシナジーはない。となると、スナイパーライフルしかないな。レースゲーじゃないんだから。


「スターシャ、逃げたビールとカップ麺探して。乗っているのは多分トライク!」

 

『了解──発見次第始末します』


『こっちぁまかせぇよ♪』


 それじゃ私は集中しよう。シェリーアイは透視力──


『着いたぜ!』


『まずはどこ狙う?』


「──入り口に視線誘導用の赤外線地雷。そして死角になる場所にプラスチックが一つ。その先の階段にはないだろうから入って大丈夫」


 初見攻略のススメ、その一。ド定番の戦法は全て抑えておく。山と言えば川。足払いといえば大技。定石ってのは効果的だからこそ有名なのであって、知っておかないと簡単にハメられる。ちなみにこれを守れてないゲームは大体クソゲー。


『BANG BANG』


 二重に聞こえる爆発音ダッドォンッ!。一発目でクレイモアを誘発し、階段で跳弾した二発目が起爆させた音。


「ナイス、アリサは適度に道で暴れて。手榴弾は私が潰すから。バレっちは突入よろしく」


『承知!』


『ん』


 飛び出したアリサがギャングを遮蔽ごと薙ぎ倒し、指名手配を見つけたBCPMが殺気立つ。そして両勢力がアリサに首っ丈になっている間にバレっちは無事に敵拠点に潜入。


『罠なし。次は?』


 私も上を飛んで拠点の横へ。階段上横の窓から中を覗くと…ドアか。


「開けたら爆発するヤツかな。センサーが紐かはわかんないけど、どっちもある前提でよろしく!」

 

 初見攻略のススメ、そのニ。迷ったらどっちも気をつけろ。その罠はどちらも両立するから。そして、跳ねる弾丸達はは左上右下と一周回って扉にシュート。バレっちは爆風に巻き込まれないように身を伏せ──成功ドガァン!


『損傷軽微。中は見える?』


「ん〜……横倒しにしたテーブルと、皮張りのソファー。あとはパーテーションとかかな。爆薬は確認できない」


『ありがと』


「逆側から突入するからタイミング合わせてね」


 飛んで回って屋上へ。階段で降り……ずに。


「3、2、1──!」


 飛び降りて窓枠切り裂きながらの急襲。初見攻略のススメその三。わざわざ罠がありそうな場所は進まなくていい。回り道をしろ。


「おっ邪魔しまーすっ!!」


『制圧開始』


「えぇーー!!??」


「嘘っ…!?」


 室内に入るなり遮蔽に隠れてたポテチと枝豆を確認。コーラはバレっちを角待ちしてた。


「こっち来ないで!」


 当然私に向けられるマグナム。当たれば普通にヤバいけど。


「悪いけどこの距離なら見えるから」


 弾道を予測して弾丸をまたまた弾く。そのまま直進して、さっきのお返しとリボルバーを握る。


「枝豆っ!」


「ごめんっ!」


 そして飛んできたマグナムの次弾とグレネード。確かに普通なら避けられない必殺のタイミング…だけど。


「フリーズ!」


 リボルバーを抜いてグレネードを撃つ。すると……氷がグレネードを覆っちゃった。これが対爆発物の切り札急速冷凍弾。ダメージを与えない代わりに温度を急激に下げる、意外と用途の多い改造弾。


「よそ見したでしょ!」


 けどマグナムの射線からは外れなかったから容赦なく飛んでくる次弾次々弾を……真っ向から受ける。


「バーリアっ♪」


 しかしここでバリア発動。たった1秒だけ展開できる使い捨てのバリア発生装置。けどこれでマグナムは乗り切った。


「サヨナラ!」


「こっの……!」


[Sherry]Blake[ポテチ]


 まずはワンキル。喜ぶ暇もなく着地と同時に後ろに飛びながらこっそり投げられたパイナップルを冷凍。二段の勢いでスライディング。加速しながら接近。


「ツーキルっ!」


「もうダメ……」


[Sherry]Blake[枝豆]


 そして案の定置かれてた置き土産は冷凍して無力化。怖い怖い。さてバレっちは…と


「どーなってんだその身体操作っ!」


「観察。予測。回避……それだけ」


 ショットガン連打相手に跳んで滑って撃ち尽くしてリロードして、すごい……変態ムーヴしてる。


「ああ流石はプロだな──ッ!」


「ヒット」


 けどこっちも漸く決着がついたらしい。あらぬ方向から飛んできた跳弾が脚部にヒット。回避にミスって片手にも当たった。閉所でシャッガンに勝つって何なのよ、ほんと。


「乙」


[Bulletina]Blake[コーラ]


「よくやったバレっち〜♪」


「当然」


 そういうドヤってるバレっちの雰囲気、割と好きだよ。


『そちらは終わったようですね。拙もたった今トライクを発見したところです。一発で終わらせますね』


「えっ、なにその宣言」


 終わらせられるものなの?


「スターシャはクイックエイムだから」


[Stasia]Blake[ビール]


『先程のシェリーさんの意趣返し、ということでヘッドショットで片付けさせていただきました』


「わーお……」


『トライク、もーすぐ壊れんよぉ♪』


 そりゃ運転手無くしたからね……


『あ!?アタシの活躍は!?』


 ……NPCどもに対する陽動、かな?


[Stasia]Blake[カップ麺]


『ROUND3 勝者:産業革命』


『2-1』


 今回はストレート勝ちにはならなかったけど、次ラウンドも…続けて勝てるよう考えよっか。


〜〜〜

Tips 急速冷凍弾

使用用途とかは本文中の通り。

温度をブチ下げて凍らせるサイバー版ヒャド。

ちなみに元ネタとしてはMG2の爆弾凍らせるやつ。

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