大会-6 始まりはいつも突然


>かっけぇぇぇぇ!!!

>綺麗なコンボだった…

>さすシェリ


『お、おぉぉぉー!!シェリー、やりました!二枚抜き!バレッティーナと合わせてワイプアウトを決めました!』


『バレッティーナの暴走させたショッピングトロリーによる不意打ち、アクセントの着地を狙った不可避のカウンター、そして……シェリーの特殊機能を生かした三次元機動と立ち回り。あの短い時間にここまでの技を見せてくれるとは、さすがRTA走者シェリーといったところでしょうか』


>クッソきめぇ走り方だった

>あれだけ低く走って問題ないの?

>忍者走りってレベルじゃなかったな


『シェリーのあの走り方は地滑りと呼ばれる走り方です。皆さんも見たように地面を滑るような低姿勢で走るので目視しにくいのが特徴ですね』


>地滑りなぁ

>普通は使わないけど使えるとたまに便利


『へぇ、私も習得してみましょうか』


>誰か教えてくれねえかなぁ

>この配信のアーカイブ何度も見直して見様見真似でやるのが一番だと思うぜ


『ただ欠点として速度がないと前に進めないことや、根本的に通常ではあり得ないような身体の動かし方をするので慣れるまでがかなり難しいということが挙げられますね』


>近距離戦闘好きなら数歩はできるようになるの推奨

>ひぇ……

>VR廃人でも苦手な奴は苦手だからなぁ


『つまり…』


>なんだよ

>なになに?


『シェリーは変態ということです』


>草

>えぇ…

>これ企業Chですよ?


『言っちゃいますか!』


『言っちゃいます。』


>そっかぁ…

>まぁ否定はできないな


『あはは……さて、第二ラウンド。第一ラウンドで両チームのリソース貯蔵の差が以降のラウンドにどう響くのか。ご期待ください』


>どうなるんやろなぁ

>さぁ?

>どういう効果が起きるか楽しみ


5


>溜め込んでたのってアイスと…

>薬局?


4


>薬か…

>何すると思う?


3


>わからん…

>なんだろ?


2


>見りゃわかるぜ

>そりゃそうか


1


>始まるぞ!

>wktk


──(視点変更配信画面→シェリー)


『GAMESTART!』


 ゲームのアナウンスが開始の合図を叫ぶが、まずは一服。


「ふぅ……」


 アイスの冷えた温度が味覚センサーを刺激する。……機械の身体サイボーグ人工肉体アンドロイドって設定だから合ってるよね?


「よし、問題なし」


 そしてピコンと点灯するアイスのアイコン。このアイコンの名前は『温度抑制』。


「おっしこれで暴れ続けられるな!」


「いやいや、軽減だから」


 効果説明にはその名の通り、"体の温度上昇を抑制する"って書いててなんのこっちゃかと思うだろうけど……


「オーバーヒート軽減できるたぁよーく見つけたなぁウチぁ〜♪」


 オーバーヒート……長い、OHゲージ。これは動いたり特殊機能を使うだけで上昇するまぁ……まぁ、スタミナゲージのような物。これがマックスになると簡単に言えば爆発する。なんで?


「レファが太らないからってモリモリ食べてたお陰で有能なのを探すの楽だったし助かった」


 私みたいな特殊機能バリバリ使う型は温度に気をつけないとヤバい。スターシャでいえば目は良いけどステルス迷彩はめちゃくちゃ温度を食う。私は…大きいのは少ないけど累積しすぎるとピンチ。特に静音はDPH毎秒温度量は低いけど長時間使うから油断すると、ね…二段もフックも乱用しすぎるとドカンするんだよね…


「ん、美味しかった。行くよ」


「ええ。ハーモニーをお出迎えいたしましょう」


 アイスを食べ終えた私は手持ちのコンバラリアをベルトのホルスターに入れ、ラウンジ前の吹き抜けから下を眺める。


「んー……流石にまだこっちには来てないかな」


 今のところ下の階は荒らされた形跡無し。逆側を探索しているのか、或いは再び会議中か。


「あっちは私たちを探す必要がある分、私達は大きく有利。攻める?」


「うーん……」


 とはいえ二度目の奇襲は通じないだろう。ハーモニーだって一応は学生チャンプ。真面目に戦えばそりゃ強い。


「ひとまず皆さんは威力偵察をお願いします。行動を掴めばこのままストレートで勝てるかもしれませんしね」


「おぉ、スタちゃんいつになくやる気ぃ♪うーしぃ、うちもヤル気だしちゃぉかなぁ☆ ノってるシェリちゃん、カモン♪」


「あいあい、やってやろーぜ!」


 レファとハイタッチ。となると組み分けは……


「んじゃバレッティーナと私だな」


「わかった。スターシャ、みんな、見つけたら共有よろしく」


 ま、こうなるよな。


「そっちこそ。突っ込みすぎて死なないでよー」


 なんて軽口を叩いて離れる。私とレファの相性は……実はすこぶるいい。軽戦士ライトファイタースタイルのレファがヘイトを稼いでくれてるうちに、暗殺者アサシンスタイルの私が相手の首を撥ね飛ばす、って感じに。


「エレベーターで降りぃよ〜」


「……ん」


 ただ、バークナイトのレファはその回避能力を機動系じゃなくて"才覚"だけで作り出している。こういう移動の時は尚更その欠点が浮き彫りになるなー。

 

『1階です』


 ポーンという気の抜けた音ともに開く扉。外に出たら…


「あっ」


「「「「「あっ!?」」」」」


 丁度、ハーモニー達がリソース探査をしている所だった。お互い目を合わせて硬直する中、レファがするりと前に出て。


「総員準備!」


「Present for you ♡」


 グレネードを投擲。でも私はさっきスタングレネードを……って、"色付き煙"!?


「カモン ベイビー♡」『うちの視界はチューニング済みだかぁ、シェリちゃんは裏から回って♪』


『あ、うん……えと、ハーモニー、見つけたよ!』


『承知しました……もしかして既に戦闘中ですか』


『ごめんね!』


 呆れ満タンのスターシャの声、耳が痛い……ってもしかして、レファのセンサーマシマシなのって"そういうこと"!?色付き煙を出してるのはチャフグレネードの上位品、ジャミンググレネード!一部の周波数以外のセンサと通信を無効化するインチキ兵器!レファは感覚増強したうえであの煙に最適化してる!


「……キャラ被り避けたのかな?」


 とは思ったけど、恐ろしいほど有効なアイテム。なんせこれは……


「何この煙、見えない!」


「くっ、そっ!C4が起爆しない!?」


 感覚補助も無線操作機能も死ぬんだよね。恐ろしいほど有効で笑っちゃう。ちなみにあの状態だとチーム通話もできないんだってさ。


「チャフ……いいやジャミングか!全員、この煙から抜けろ!」


「あーらら、知ってたかぁ……まぁ、逃すきゃぁなぁけど♪」


 タタタッタタンッ♪と小刻みに鳴るレファの銃声、パッドドドドッ☆と響く……え、クラスターグレネード!?いくつ持ち込んでるの!?


「回り込んでるから見に行けないのが悔しい……」


 念のため静音機動で走ってるから尚更戦闘音が聞こえてくるのがもどかしい。あと10秒、8、6──よし、見えた!


「なによこの煙、ジャミング…!? 気持ちよく撃たせてよバカっ…!」


 イキのあるカモを発見。P-P……かな。マシンガン持ってるし、マガジン持ちまくってるし。


「ちわーっす、シェリちゃんです♪死のお届けに参りました〜♪」


「な──」


[Shelly]Bleak[P-P]


 コンバラリアを斉射して一人撃破。この子がつけてたのは視界補助とオートエイムかな、耐久に振ってない分倒すのが楽で助かった。


「ピーがやられた!」


「喰らえグレネード!」


 お、っと。流石に仲間の位置関係くらいは把握してたか。フックで下がって、通路にあるヤシの木をバネに…反対側へ。見にきたAccentの頭上を飛び抜け……気づかれたか。


「リーダー、シェリーが後ろに回ってる…!」


「嘘だろいつの間に!?」


「くっはは…」


 ハーモニー達の驚いた声に、つい笑いが溢れる。だって、綺麗なまでに私達の作戦がハマってるんだから。


『アタシももう少しで着く!』


『待ってて』


「あっははぁ♪うちにぁぜーんぜん届いてないぜ☆」


 救援要請も通ったし、レファの声は全然余裕に聞こえる。ああ、これは……


「ようこそキルゾーンへ! 私はコンバラリアのシェリー!」


 調子に乗っちゃっても問題ないよね!二段ジャンプで空中を直角に折れて、着地、同時にスライディング。残念ながら爆弾が二連ちゃんで使い物にならなくなっちゃって可哀想なオラついてる子に急接近、少しだけジャンプして空中判定になった瞬間に二段ジャンプを再使用して加速。


「またかっ!」


「お迎えに来たよ!」


 コンバラリアを回転掃射、いくら避けようとしたって"当たる"撃ち方。全身に爆発物をつけてるなら、そのどれかに当てればいい。


「次はもっと撹乱に強くなってきてね!」


 そして私が放った弾丸が、FFの腰に下げたグレネードにヒット。周囲の商品がクレイモアのように吹き飛ばされる。


[Shelly]Bleak[FF]


 ……普通、子供はこんな極まった戦い方しないもんね。うう、私もこんな戦法が普通にできるくらい染まっちゃった……なんて考えてる暇はない。


「祭りの場所は──ここかァァァァァ!!!!!」


「煙、見えてるからね」


『配置完了です』


 味方は追いついてきてくれたけど。

 

「ごめん、私は温度やばいかも!」


 爆風の範囲内にいた私のOHゲージは明滅中。超過こそしなかったけど、もしかして焼夷グレネードも入ってた…!?


「隠れたけどダメだったみたい、後はよろしく…っ!」


「うちらにまかせぇい♪ "目"だけに頼ってる子は、仕置きぜぇ☆」


 ストトトトッ──♪って、レファの銃声ってなんか面白いよね……


[Lehua]Bleak[Accent]


「残り二人ぃ☆」


 そしてレファがワンキル。色付きの煙が晴れてきて……アリサが目視で目標をロックオン。


「みぃぃぃつけたぁぁぁ……!!」


「おま、ぁっ!?」


[A-RI-SA]Blake[Flat]


 ……哀れ。リーダーは一撃で爆散……って、やば


「……ふぅ、あぶないあぶな……」


「………」


 店のカウンター裏で隠れてた私と、入ってきた…多分Sharpと、目があった。ちなみに私はまだOHゲージが回復してないものとする。


「やぁ」


 気さくな挨拶。初めての出会いは挨拶から。


「お前だけでも殺す…!」


 おっとバットコミュニケーション、銃を構えて?うん、私に向けて……


「待って話し合いを」


「だが断る…!!」


 こんな死に方は嫌だーーっ!!!!


「アリサ助け──!」


[Sharp]Blake[Sherry]



〜〜〜

Tips グレネードの種類

・フラグ

・チャフ

・ジャミング

・焼夷

・タイマー

・スタン

・チャージ

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