大会-5 ショッピングに行こう!


『お待たせしました。準決勝Aブロックッ!対戦カードは多芸のプロ集う[産業革命]vsうら若き五重奏[ハーモニー]ィィッ!』


──

『産業革命』

Shelly

A-RI-SA

Bulletina

Lehua

Stasia

──

『ハーモニー』

FF

Shape

Flat

P-P

Accent

──


>\\[Foooooo!!!!!]//

>やってきたなぁ!!!

>そろそろ服着ていい?

>ダメ


 再び火がついたように盛り上がるスタジアム。カタリアの声は起爆剤となって、安まっていた観客達の心を叩き起す。

 

『そしてぇ、今回のマップは……こちらぁっ!』


 映し出さされたのは現代でも見覚えのある巨大商業複合施設。


『今回のマップは[カレイドモール]。5階からなる巨大建造物であり、店舗内の商品を利用して戦いを有利に進めることも可能なお祭りマップです』


>強盗プレイか

>これもまた楽しそうなマップだな

>荒野に交通事故、強奪とか…楽しそうだな


『商品を利用…?』


『はい。資料によりますと……スーパーマーケットの食材を摂取して回復したりスポーツセンターでバットを手に入れたりできるそうです。派手な戦いが期待できますね』


>なるほどね

>ふーん


『……約一名非常にふざけそうな人がいますね』


>誰やろなぁ

>わからん

>相棒をゲームから取り出した人なんて知らない


『ははは。それではナイスゲーム、期待しましょう』


>くるぞー!

>わくわく


──(視点変更実況画面→シェリー)


 マッチングが完了した私が居たのは……"カレイドラウンジ"。

 

「ということはカレイドモールか……」


「シェリーが一番楽しいって言ってたマップだな」


 ここは設定上、VIP専用の休憩スペースらしい。ドリンク飲めたり、ふかふかのソファーがあったり、マジで快適。多分一番のアタリ拠点。……そう、"アタリ"って事は毎回プレイするたびに場所が変わるってこと。カレイドモールの特徴は"ランダム性"。リスポーン地点だけでもたくさんあるし、店の並びだって一部を除いて完全ランダム。設定上でも店の移り変わりが激しい超商業施設って書いてるから…かなぁ?


「マップちょーだい」


「はい。


「ん、ありがとバレっち」


 ラウンジは位置が固定で、いつも五階の隅っこ。カレイド・ホールディングスの直営施設は一応場所固定らしい。品揃えも固定だから割と扱いやすい……代わりに面白みがない。だから近くの店から見てるんだけど…


「うーん飲食系が多いなぁ…」


「ウチぁ待ち伏せ中にモグれるからいいケド、強くぁないもんねー☆」


 店並びはランダムとはいっても、やっぱり階層ごとにある程度の偏りはある。五階はやっぱり飲食店が多め。なぜか食べると回復できたりするから怪しいモノが入ってないか心配になるんだけど……っし、発見。


「レファとアリサはアイスクリーム強奪してきて」


「OKだ」


「りょーかいっ♪」


「そうですね……拙は四階に降りて薬局へ向かいます」


「スターシャの知識が頼りだからよろしくー」


 未来世界の薬局は、色々と"やばい“。うん。ちょっと私は検証したくないレベルで複雑だし薬品の量が多かった。


「バレっちは私と一緒にアイツら襲撃するのに来てくれ」


 食料バフ強奪に向かうアリレファ、薬品リソース補充のスターシャ。そして捜索カチコミは私たち。これがラウンジスタートの黄金構成。


「そんじゃ作戦開始!」


「皆さん、頑張りましょう」


『おーーっ!!』


 武器はバラード。相手に金アーマーはいないから、バラードでも一応ダメージの通りはそこまで悪くないはず。ま、あくまでもサブ武器だしね…


『5』


「バレっち〜♪」


『4』


「何?」


『3』


「この戦いもすぐに勝ってさ」


『2』


「バレっち、絶対決勝に連れてくから」


『1』


「当然」


『GAMESTART!』


「シェリーは、そうでなくっちゃ」


 エンジンのかかったように走り出す私達。強奪部隊は右折、襲撃部隊の私たちは同じく曲がるけど通路の吹き抜けから一階まで一気に飛び降りる。


「よいしょーっ!」


 フックショットで五階分の高さを斜めに落ちる。


「ふっ、ほっ、やっ」


 バレっちが壁キックの三角跳びで降りてるのを見ながら、私は着地直前に二段ジャンプで落下ダメージを相殺。物理法則おかしいけど、そんなのは今更だし。


「すぅ……」


 スーパーヒーロー着地。膝に悪いけど私の体じゃないからよし。


「まずは一階を探そう」


「ん」


 リスポーン地点で一番多いのは一階。三つの入り口があるし、立体駐車場との接続口もある。地下駐車場から出てくる時もやっぱり一階を通るから、ここを探すのが一番効率がいい。


「ついてきてね、バレっち」


 全力で躯体を回し、店の並びを駆け抜ける。ついでに目ぼしい店を記憶しておいて、後の"祭り"に活用する。


「うん、うん、うん……よし」


「ほんと、シェリーはこういうの得意だよね」


「まぁね」


 RTAするなら即時の分析能力は必須。って、いいもの見つけた。このカレイドモールは大きいから、お客様用の移動手段が用意されている。そのうちの一つ、"ショッピングカート"。空港とかにある奴。


「乗るよ!」


「運転は任せて」


 エレガントに、そしてスキーキン。助手席に乗り込んで隣のバレっちに指示。


「ハンドル下の制御装置ぶっ壊せ」


「ん」


 キックで板を吹き飛ばして、中の基盤にくっついた灰色の機械をBANGBANG。


「ふふっ、やっぱりこの手に限る」


 セーフティの取れたモータが唸り、タイヤが回る。


「シェリー、ギアはどこ?」


「んなもんあるかい、ベタ踏みアクセルと急ブレーキしかないわ」


「ブレーキあるだけ上々」


 私たちが走るよりも速く爆走するカート。流れてゆく景色……は程々に、まえにちゅーもく。


「相手は子供だけど、何か予想とかある?」


 なんてことを聞くんだバレっち。相手はれっきとした学生チャンプなんだぞ。とは思うけど。


「そうだねー……まず、アイテム活用とかは苦手そうかな。プレイを見てる感じ、"できること"は確かに特化してるんだけど、型にはまってる。良くも悪くもセオリー通りって感じ」


 正面戦闘には強いからね。絡め手には弱いけど。


「スターシャと何か違うの?」


「スターシャはデータを知り尽くした上で、自分が得意なことを選択してると思うな。それで選んでるのが待ちの姿勢、攻めることはあんまりないでしょ?」


「確かに。それで活躍してるから何も文句はないけど」


「そ。だからスターシャは分析特化。得意不得意を見極めて、常に有利な手を選択し続ける。私みたいなノリだけで生きてる奴とは違うんだよねー……って、居た!」


 ハーモニーはマップを見ながら作戦会議中。広いマップだからって油断するなよ。悪い大人達に轢かれちゃうぜ。


「皆に業務連絡、敵は反対側の一階立駐連絡口の横!リスポンも立駐かなっ!」


『わかりました。こちらも今試合分の調合が終わりましたので合流致します』


『アイスはラウンジに入れといた!』


『アイテム保存可能とかぁ楽しいことし放題じゃんねぇ♪』


「ナイスっ!それじゃこのままケリつけちゃうからね!」


 カレイドモールのもう一つの特殊仕様は、"前ラウンドの状況"が引き継がれること。それは破損状況とか、だけじゃなくて、商品も何もかも全て。まぁその分建物の耐久力は高いんだけどね、柱とか。


「じゃあさリーダー、何するの?」


「このマップは広いからまずは敵の位置を知らないと。さっき聞こえた銃声的に、そこまで遠くはないはず……」


「……ッ!リーダー、アレ見て!」


「はぁぁいジョージィ!!!!作戦会議してんの!?私も混ぜてよ!」


 バレっちは速度を上げ、座って会議中の5人の方へとカートを突っ込ませる。


「最初のラウンドは盛大に爆発で始めようぜ!」


「んなぁっ!?」


「シェリー、跳んで!」


 ドリフトはできないからブレーキでスリップさせたカートは、ホワイトボード代わりのマップパネルへと容赦なく突っ込んでいく。私はジャンプでアクロバティック下車。


「全員逃げろ!」


 散開して仕切り直ししようとするハーモニーだけど。


「逃すか!」


 空中からなんか余ってたから買っといたショックグレネードを投擲。変な体勢でスタンしたから転けて、回避はきっと間に合わない。


「まずいオレから離れろ爆発す──」


「bye」


 バレっちも跳び降りて、遂に衝突。派手な爆発が巻き起こる。


[Bulletina]Blake[FF]


[Bulletina]Blake[Sharp]


[Bulletina]Blake[P-P]


「スリーキル」


 残り二人もかなりのダメージを受けた。バレっちも爆風の勢いで下がって、私の横に──


「今」


[Accent]Blake[Bulletina]


 ──くる直前で、タタタンッという銃声と共に爆散。バレっちは消える直前にこっちに武器を寄越してきてくれたけど……


「んまじかっ」


 たまらずフックショットで離脱、二階に移動しながら見えた敵影にバラードをばら撒く。フックショット万能すぎない?


「わちょぉっあぶなぁっ!?」


 空中にいれば使える二段ジャンプで身をかわしたが、回避してなかったらコアを打ち抜かれてた。銃声からして、バースト射撃がプロレベルなAccentの仕業じゃないかな。


「ま、関係ないか。倒してやんよ。配信者様に勝てるわけないだろ!」


 二丁拳銃は"バレッティーナ"だけの専売特許じゃない。私の大好きな"ドレイク"だって二丁拳銃だ。


「これが受け継がれる意志ってやつよ!」


 バレっちの跳弾と、ドレイクのガンカタ、どっちも生かして戦ってやる。


「リーダー、油断しないで」


「勿論」


 相手はダメージ受けてるとはいえ二人。私の方が耐久は残ってるだろうけど…油断してたらあっという間に死ぬかな

 

『シェリーさん、そちらの状況は!? バレッティーナさんが脱落したようなのですが!』


「んー、見事にカウンター決められた感じ?」


『今から援護行くから獲物残しとけよ!』


「悪いけど私らだけで獲物は独占しちゃうから」


 まずは飛び降りる。相手の武器はどちらもアサルトライフル、近距離戦なら私に分があるし。


「そこっ」


「見えてちゃ当たらない!」


 再びタタタッと撃たれたけどフックショットで軌道をずらす、二回目の射撃はジャンプで避けつつフックを戻し、三回目は空中で回って神回避。


「ふっ、決まった、ぜっ!」


 着地と同時に駆け出して、愚直に私を追うフルオートと的確に狙ってくるバーストを回避しながら接近する。


「アクっ!」


「くっ…なぜ当たらない…!」


 接近まであと三、二、一……


「…っ、弾切れ!?」


「残念!このゲームはマガジン把握も大事なんだぜ!」


 Accentに生まれたリロードの隙。仲間思いっぽいFlatが撃ちにくいことを見越して、私→A→Fになるような角度で肉突撃。


「何っ!?」


 私だって一回の跳弾くらいはなんとかなる。地面を撃ってAccentに"下“から弾丸を当て、取り出したマガジンを弾き飛ばす。


「銃を撃つだけが"FPS"じゃないからね!」


 そして私は肉薄、拳銃をトンファー代わりにしてAccentの銃を回転しながらはたき落とし、半回転のタイミングで首元に銃口を宛てがう。


「次のラウンドで会おうな!」


[Shelly]Bleak[Accent]


 そして行き着く間も無くタックル、死骸がポリゴンになる前に吹き飛ばして視界を塞ぎ、その影に隠れてキルムーヴ。


「何処へ──」


  そして消えた死骸の先に、私はいない。


「悪いけど、私って勝つのに"手段"って選ばないから」


「──ッ!?」


 超低姿勢で走る私は、下を見ないと見つけられない。そして私は、あえて拳銃を上に"投げた"。


「さようなら」


[Shelly]Bleak[Flat]


 勿論最後の一撃は……アサシンブレード。私の手元から生えた刃が、見事にFlatのコアにブッ刺さったらしい。


「クリティカル。やったぜ」


『ROUND1 勝者:産業革命』


『1-0』


 アナウンスを聞いた次の瞬間。やっぱり私はラウンジに戻っていた。



〜〜〜

Tips

"ドレイク"について その1


#1からちょこちょこ言われてるシェリーのSWの"推し英雄"。昆布は[ワイルドハント×ゴールデンハインド]。形状はフリンクロック式の海賊拳銃二丁ではあるが、性能としては魔法弾を撃ち出すセミオート銃。使える属性が幅広いが、近距離戦寄りのスキルばかり取りやすいので上級者向け。

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