大会-幕間2 箸休め配信っ!


「やぁ。」


 見慣れた配信サイバー空間……ではなく、ちょっとリアルな控え室空間。というか、本物の控室の一部から配信中。勿論見た目はそれぞれのアバターになっているが。


>おう

>遅かったな

>土下座しろ


「なんで????」


>配信切り抜きどうすんだよコレ……

>流石に企業勢chから切り抜けるほどの度胸はないが?

>[乙!!!]


「あ、やっとまともなスパチャが…」


「お、もう配信やってんのか。アリサちゃんだよ」


 そんな平和な雑談中の画面に割り込んできたのはアリサ。スタジアムの近くカフェで買ってきた派手なドリンクをチューチューとしながら手を振って当然な顔でシェリーの横に座る。


>ちゃん?

>ちゃん???

>かわいいがすぎるが?

>ドリンクデカくね?


「何今更新しい顔見つけたみたいな反応してるんだよ……私はかわいいだろ?」


 首を傾げつつなんで?と聞く美少女アリサ。普段が戦闘狂グラディエーター的暴走マシンだからこそのギャップが凄まじい。


「おう 今はね」


>今は可愛いと思います

>何飲んでるの?

>[惚れた……]<


 ああコレか?と返しながら、


「マックスダークティスペシャルフレーバーティーフラペチーノベイクドチョコチップミクスクラッシュココナッツエクストラビターモカパウダーエクストラクアッドホイップビターチョコレイトソースアンドホワイトチョコレイトソース」


 と一息に言った。


「は?」


>なんて?

>もう一回言ってくれ


 これにはシェリーも視聴者も総ツッコミ。字幕視聴していた視聴者は突如画面を埋め尽くした字幕に度肝を抜かれたことだろう。


「だからマックスダークティスペシャルフレーバーティーフラペチーノベイクドチョコチップミクスクラッシュココナッツエクストラビターモカパウダーエクストラクアッドホイップビターチョコレイトソースアンドホワイトチョコレイトソースだって」


「……脳が理解を拒否してる」


「女ならこれくらいは普通だろー…?」


 なんでもないように?を浮かべるが、隣のシェリーは軽く頭を抱え唸る。


>いや、その理屈はおかしい

>ないわ…


「は〜……えと、じゃ、気を取り直して……シェリーの昆布巻き配信特別編やってくよー、あっこの配信に関しては私のchじゃないけど切り抜きはいつも通りでオッケー、ほかの権利関係の人らには話してるから!」


>うーんこのコミュ力

>先手打ちすぎで草

>産業革命メンツは?


「ん、画面外にいるよー、呼ぼっか?」


>よろしく

>wktk

>聞きたい聞きたい!


「ウチぁパス〜、シェリちゃんの見せ場ホームにぁいつかちゃーんとでたぁげるから、今日は声だけってことでよろしくぅ〜♪


「そういった生配信は苦手ですので拙も遠慮させていただきます」


「あ、そう?それじゃ二人だけってことで〜…」


>あれ?バレッティーナは?

>バレ様どこよ

>寝てるの?


 シェリーの呼びかけに返ってこなかった拳銃使いバレッティーナを心配するコメントに、あぁーとクリエナを吸いながら答えるシェリー。


「今お食事中 別名やけ食いともいう」


>………マジ?

>閃いた

>早く描け


 ただいまバレッティーナはラーメン2杯目を平げ、次の替え玉と餃子と炒飯に手をつけたところだ。


「まじまじー」


「まぁ、k……バレッティーナは私らの中だと一番食うよなー」


>そうなのか

>いいことを聞いた


「そだねー、ここだけの話みんなの知る"バレ様"と"バレッティーナ"って……」


>もっと聞かせろ

>はよ


 と、熱狂する暴露話に冷や水がかかる。


「シェリーさん、一応その点はお口チャックでよろしくお願いします」


「あーごめごめ、今の忘れてー」


>気になるが?

>そこで口止め??

>なんかもう今更な気がするけど


「いちぉダメなものはダメだかぁ堪忍してぇーにゃぁー」


>くっ……レファ嬢に言われては…

>まぁイメージ戦略上の問題だから仕方ねーか


「というよりはバレッティーナさん自身の問題ですね。バレッティーナさんは幼馴染ということもあるのでしょうが本来はシェリーさんとアリサさんと同じ感情型──その中でも、RP派です。シェリーさんはノリと気分、アリサさんは闘争本能で強くなりますが……彼女は"キャラクター"になりきることで強くなりますから。やろうと思えば拙と同レベルの狙撃技術、レファさんのようなヘイトコントロール等簡単に身につけると思います」


>お、おう?

>あー…?

>シェリーが震えておるぞ


 その分析を聞いていると徐々に俯き軽く震えだすシェリー。


「……シェリーさん、どうされました?」


 妙な調子に本気で心配し始めるスターシャ。ちなみに隣のアリサはへー考えた事なかったぜと言わんばかりにフラペチーノを摂取している。レファも羨ましくなったのか買いに出かけた。

 

「な、なんでっ……」


 そしてシェリーはバッと顔を上げて。

 

「なんで私よりバレっちの事に詳しいの!?」


 軽く涙目でそう叫んだ。


>ぶっふ

>そ、そこかぁ……

>不覚にも笑ってしまった


「……戦術を組み立てる為に人格やスキルを分析するのは当然では?」


 少し考える素振りをするもシェリーの泣く理由が腑に落ちないスターシャ。


「そうだけど、そうだけどさぁ…さぁ!」


>完全敗北したシェリーBB

>うーんこれはひどい

>死体蹴りやめたげてよぉ!


「いい機会ですから気になっていたことを一つ聞こうと思うのですが……構いませんか?」


「……なによ」


「"バレッティーナ"の元になったもの……例えば映画や、アニメ、ご存知ないですか?」


「元になったものぉ…?」


>そんなのある?

>バレ様に似たようなキャラなんかいたかなぁ


 目を閉じて過去の記憶を探るシェリー。何かあったかな、時期としちゃデビューの前だろうかと遡ると……一件ヒット。


「……あー、アレかも。ゲームなら一つ心当たりがあるっちゃあるかな…」


>いるのかよ

>気にした事なかったんやな…


「なんです?」


「あの段ボール被る蛇のゲームにでてくる山猫。私の家でレトロゲー大会してた時、横で目キラッキラさせてたから」


>……レボリューションさん!?

>リボルバーじゃないじゃんバレ様

>バカ猫部隊……


「…………腑に落ちました」


 画面外で思わぬ戦術のピースがと呟くスターシャ。


「多分そこから洗練して行った結果が今の自動拳銃で跳弾スタイル…なんじゃない?」


>弾幕跳弾だからなぁ

>役作りとやりやすさの両立がバレ様なのなー

>ガンアクション得意だからな…


「そう、ですね……いやはや、レトロゲーとは盲点でした」


「私はよく知らねーけどバレッティーナはかなりストイックだからなー、なんでも全力投球してるんだぜー」


「アリサが言うか」


 ここで但しをつけるがアリサの実家は道場であり本人もかなりの段位を持つ者であるとする。


>オマエモナー

>WIKIを一人で作る人が努力してないってそれなんてギャグ?

>シェリーがまた棚上げしてる


「はぁー???????????」


「拙も一つのゲームのWRを持つほどの方が努力を怠っているとは思えません……」


「やめてー???私のイメージに関わるがー???」


>オファニエルにバラされてるし今更定期

>そうだよ

>暴走シェリーはよ


「………」


 そして無言でお出しされる"オファニエル"。


>えっ

>は?

>まって

>話し合おう

>#[待って!!!]#


「………何?」


 立ち上がって笑顔・・で肩にオファニエルを乗せるシェリー。そう、この女、自分でオファニエルを再現したのである。ちなみに自分のアバター衣装も大概が自作だ。


>やめろぉ!

>シニタクナーイ!!シニタクナーイ!!

>今日SWORDじゃないから安全だと油断してたよこんちくしょう!


「スイッチオン」


 ギャリリリリリァァァァァッッッッッ!!!!!


 狭い部屋で鳴り響く拡張現実オファニエル。出番が遅かったじゃないかと叫ぶかのように、その声は猛々しい。


>ギャァァァァァァ

>\[朗報:オファニエル常用化]/

>悲報だよ馬鹿野郎!

>耳が壊れるかりゃぁ!

>初見なんですけどなんで盛り上がってるんですか?

>ゲーム内の専用装備を外に持ってきてるから


「んっん〜……いい音だなーー、それ収録したのか?」


「ぇ、何故アリサさんはそう平然とっ…!?」


「んや、なんか送られてきたファイル叩き込んだらこうなった」


>怖い

>草

>どうしてそんなものを入れようとしたんですかね……

>まず送ったのが誰なんだよww


「まぁ、うん……うん……秘密って事でよろしく?」


 本当の送信元が開発元らしい事は言えないので口を塞ぐ。これからも配信を通じてのSWORD盛り上げよろしくお願いします(意訳)と言われては何も言えない。


「ま、これのおかげで調子に乗った奴らが出てきたらお仕置きができるな!」


>恐ろしい、その笑顔

>やめていただきたい

>勘弁してぇ…


「なーなー、シェリー、サードムーンも頼むー」


「……えー、気が向いたらね」


>緩っ

>アニメで見た


 そうしてしばらくした頃。バレッティーナとレファが部屋に帰ってきた。


「ただいま。シェリー、ほんとに配信してるんだ」


>おかえりー!

>バレ様ひゃっほぅ!


「だからウチぁ言ったじゃぁん、出なくていいのーって」


>レファ嬢きた!

>やっぱこの声いいなぁ…


「……いいの」


「あ、こっち来るならそこの座布団使っていいよ」


 そう言ってバレッティーナはシェリーの隣に。両手に花、或いは殲滅兵器。


「何話してたの?」


「まぁ、色々?」


「色々ー」


「…そう」


>本当だから信じてくれよ!

>俺たちは何も知らない!


「ええと……なら、シェリーの話でもしようかな。あと5分もあるから余裕で話せるね」


>ガタッ

>●REC

>ほう、続けて


「待って」


 狼狽えるシェリー。人のことは晒しておいて自分は嫌らしい。


「お、なら私もあるぜー」


「ちょっ」


 アリサも便乗、彼女にとって過去など全て笑い話だ。


「拙も興味があります」


「おわたにえん」


 スターシャに過去を握られるのはまずい。どんな弱みを握られるかわからない……


「〜♪」


「レファはなんか話して!?」


 レファは何を考えているか予測不能!


「それじゃ、一つ暴露話を。シェリーはね、昔から変身願望があったの。ベルトだったり、端末だったり、そういう変身アイテムをいっぱい集めてる」


「あ、あっ、あーー!!」


>なるほど

>それで?


「それで、好きすぎて一時期美少女戦士のコスプレしながら小学校に来てたことがあるの」


「しかも手作りのなー、私も別カラーで作られてたし」


「んにゃぁぁぁ!!!!!!!」


 アリサに羽交締めされては抵抗できずにシェリーは最大のウィークポイントを晒されてしまった。漸く解放されたがorzの体勢から動くことはない。


>想像の斜め上をいってた

>コーヒー吹いた

>カレー溢したからクリーニング代を請求する!!


「だからさ、シェリーは……楽しそうにやってる時のシェリーが、一番強いよ」


「TAの為って無理しなくてもいいと思うぜ」


「……うん」


>イイハナシダナー

>キマシ?

>まだ建てなくていい


「そっかそっかぁ…ぁ、そろそろ時間だかぁ移動しないとダメだよー」


>たしかに

>もうそんな時間か


「ミスをする危険性が上がりますが同時に動きのキレも変わりますからね、シェリーさんは」

 

 「…ん、褒め言葉として受け取っとくね。それじゃ突発雑談枠はここまで、私らの試合、よーくその目に焼き付けておけよ!


>おつー

>おつおつ

><[フラペチーノ代]>



〜〜〜

Tips アリサの過去エピソード

・現実の試合中あまりの気迫に相手がパニックになって不戦勝

・気晴らしに基本無料のMMOをプレイ。格上のPKと接敵したが返り討ちに。「弱すぎる」両者即引退。

・↑以降、無双ゲーに転向。軍隊を薙ぎ倒す"楽しさ"に目覚める。

・そのせいで強者と戦うときには滾るし雑魚を蹴散らすのも楽しめると最悪の両刀スタイルになった。

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