#13 【巨大生物】防衛軍ってこんな気持ちなのかな?【討伐依頼】
「よいしょーっ!」
ギャリリィイーンッ!と素敵な駆動音を響かせて、再び野生のウサギがミンチになった。依頼達成までウサギは5羽。僻地ということもあり他プレイヤーが少なく快適に狩りがしやすい。
「う〜ん…それにしても蛇ってどこにいるんだろうね?」
>家の軒下とか
>フッカフカの土にいるイメージ
>それはミミズでは?
「私都会っ子だからさ、ヘビとか見たことないんだよね、てへっ☆」
キラッとウインク。偶然にも風が吹き銀髪がたなびいて、綺麗な美人画のように見えた。顔と髪の毛とスタイルだけは可愛らしいシェリー。だが表情と口調、あと性格はそう可愛いものではないから、感情を突き動かされる前に苛立ちが視聴者には募る。
>うぜぇ
>うっぜぇ
>うっざい
「まじかよウザイの三段活用じゃん……いやさ、蛇ってわざわざシンボルを探した事ないからわかんなくてさ」
>ふーん
>ここにいるんでしょ?
「マップだとこのエリアって書いてるんだけど……」
ここは比較的長めの草が生えている川沿いの草原。外敵からは身を隠しやすいこのエリアは、ウサギたちが草を床として眠っている。そこに
「オラァッ!報酬寄越せぇっ!」
>無慈悲
>寝起きドッキリ
>やめたげてよぉ!
「悪は去った」
>悪はお前だ
>おまわりさんこっちです
><[やっぱシェリーの配信は最高だぜ]>
「もうダメだよこの視聴者……早くなんとかしないと。ギャグ配信者のレッテルを貼られてしまう」
>え?
>え?
>何を今更
>もう助からないゾ♡
「……RTA系配信者だよね、私」
>多分そう
>RTA時以外は…
>[いつも可愛いよ!]
「以外はなんだよ!あと誉め言葉ありがとっていつもの変態かよちくしょぉっ!マトモに褒めてくれるのはこいつだけかぁっ!?」
怒りのオファニエルがおねむり中のウサギたちを更なる眠りに就かせた。羽
「は〜……あと一羽、倒したらマジで蛇探さないと……」
>[ファイト〜!]
>がんばえー
手癖の血振りをし、オファニエルを収納したシェリーは、川岸の方へ。丁度可愛いウサギがチロチロと水を飲み終わり、可愛い鳴き声で満足を表現したところだ。
「おっしゃぁ私の為に死ねぇっ!」
>ひどい
>ごめんやっぱひでぇわ
>ギャグでもない
>ヤの付く自営業の方?
「なんでよ!!??」
つい心からの叫びが出ちゃっただけ。そう口を大にして叫んだシェリー。流れの速い川を背に、カメラに向かってキレ芸をぶん投げる。
「ま ず さ ぁ っ! 私可愛い女の子だからね!?」
>そうだな
>……ん?
>ちょっと待って
聡明な視聴者は気づいただろう。川の流れがやたら速くなっている。なんなら少しずつ盛り上がっている。
「何が!? 私の怒りは待てないが!?」
>シェリー!後ろ、後ろ!
>やばいやばい
>オファニエル出せ!
「はぁ!!??後ろ――って何もないじゃん!なんなの!?」
そして川の中から飛び出す長い影。しかしシェリーが丁度振り返ったタイミングで川の異常は全て消え去って、視聴者に再び怒鳴り散らかす――
>いや今度は上上!
>丁度飛んだって!
『ギャバァァァァッ!!』
「あーもううっるせぇぇぇぇぇぇ!!!???」
やけに長い
「ぁぁぁぁ!!??」
とりあえずオファニエル叩きつけでの緊急回避っ!間一髪で開いた口のトンネルから脱出、地は緩かったのか蛇はその周囲の土地ごと喰らって地面の中に潜った。
「――何今のっ!?」
>分からん
>もしかしてレアエネミー?
>前作のオーバード枠かも
「いやいやいや!? 日替わり依頼で来ただけなのにそんなことあるっ!?」
>あるんだな、これが
>依頼内容ちゃんと見た?
――
デイリークエスト
[ホワイトラビットの討伐] CLEARED
[ウィータサーペントの調査] EXPANSION
-[ロードオブサーペントの討伐] NEW!
――
「…………ナニコレ!?」
対象となるモンスターにしか目がいってなかったシェリー。残念?ながらも今日も平和な依頼日和とはならなかったらしい。美味しい依頼には裏がある。今日のシェリーはその地雷にまんまと引っかかり、その上で更に低乱数をまたまた引いてしまった。
デイリークエスト。異世界ラノベでもよくある『日替わりの依頼』ではあるのだが、この世界は幾らリアルに近づけているとはいっても『ゲームはゲーム』。シミュレートされるもの。故に、サーバー自身が"その日のSWORD世界"を予測し、内容の一つ一つから適正な依頼内容を算出する。そして作られたデイリークエストは対応したギルドに張り出される…という仕組み。フレーバー的にはギルド職員が纏めて張り出しているが、これも他のギルド施設と同じく100%システムの産物。ただしキャラクターやプレイヤーたちが全く知り得ない舞台裏での要素進行に関するものはデイリークエストには乗らないので注意。
それを踏まえた上で今度はクエスト区別について。"討伐"は世界の中で需要が高まっていたり、大量発生したりしていると発生する。そして、調査は何か異変や不透明な事象が発生"しそう"な時に発行され、何が起こるはランダム。大量発生であったり、逆に何も起こっていなかったり、そして……このように、異常な進化を遂げていたり。
「ヤバイヤバイヤバイヤバイ地震怖いぃぃ!!」
>こんなのあったか?
>前作の川のオーバードは大砲魚とドリル鮭だけだったよな
>オーバードも増えてるのか……
ロードオブサーペント――直訳で蛇の王。本来川の中に巣食うウィータサーペントが、地上にいる生物達の肉の味を覚え、陸地の
『ギャルヴァァァァッ!!』
「だぁぁぁっ!!」
直下からの地響きを察知して取り舵いっぱい。丁度後ろが盛り上がりブッシュゥゥゥゥッ!!と蛇王が再び飛び上がった。
>うるせぇぇぇ!!!
>オファニエルより騒音を撒き散らす奴がいるとは
>飛行機みたいな音する
「私だって耳ぶっ壊れるわっ!!」
そして蛇王は空にて微かに滞空。狙いを澄まして再突撃。周囲の地形がボロッボロになるがゲームならではの修復力により時間経過で治るので問題はない。問題があるとしたらシェリーの運と精神面か。
「ヘイコメント欄!何か見えた!?」
>音的に食べたもの吹き出してる?
>エラから何か吹き出してる
>食った土吹き出してんのか
>何それ怖い
「えっ……気持ち悪っ――あっやべ」
『ギャブルラァァァ!!』
コメント欄に気を取られ、手元が狂って回避失敗。致命的にはならずとも吹き飛ばされた上岩に当たってかなりの大ダメージ。オファニエルが手から離れ強制帰還、シェリー本人も衝撃でスタン中。地中からは再び地を喰らう音が迫る。
「っ…そ……やらかした…」
>早く動けっ!動けってんだよ!
>マジかここでスタンか
>死ぬぞ!?
蛇王が視聴者にも聞こえる程接近。喰われてしまうまではもう数秒の猶予しかない。そこでシェリーは、インベントリからとあるものを取り出した。
「――仕方ない」
>[待っておりました]
>ガタッ!
>\\[●REC]//
シェリーは未だ微かに動く手で、肉塊――肉鎧――イモータル・オルタを装着。ソレは身体に絡みついて、スーツと接続完了。更にシェリーは言葉を繋ぐ。
「[真髄……解放]」
『ギャルラバァァァァッ!‼︎』
虚空を掴んだ手にはオファニエル。短縮変身バンクのように現れて、シェリーを侵す
バクンッ!!
>えっ
>食われたんだが
>シェリー死んだ?
>間に合わなかったか…
――シェリー達は、蛇王の腹の中へと……消えてしまった。
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