#5 【大激戦】FAもLAもWRも、全部私のもの!【ボス討伐】
シェリーはあからさまにボス戦な空間に出た。鍾乳洞のぶら下がる山中のドーム。中心には岩、ロック・ギガントがいる。ちなみにこいつはSWORDの本筋には一切関わりがない所謂"野生のボス"。次の街に行きたいのなら街で受けられるストーリークエストを進める必要がある。つまりとんだ無駄足。取れ高のためだけに素材をBETしたシェリーの運命は、如何に。
『ガララララッ!』
岩石が崩れるような音。ロックギガントが起き上がり、首のない歪な巨人のように繋がった岩群の体を大きく晒す。
尚シェリーは無言でオファニエル叩きつけ移動で既に足元にいる。無いはずの顔があれば悲しみと困惑の入り混じった表情をしているだろう。期待していた初登場の演出が無に還したのだから。
>予測不能回避不可避
>登場演出見たかったのに
>RTAしすぎてムービーっていう概念忘れてそう
「掘削開始ィ〜ッ!」
ギィィィィィィィィ!!!!と工業用機械でも中々聴かない鈍い切断音が、ロック・ギガントの"脚"を削り取る。ついでに視聴者の音響装備の寿命も削り取る。
>あのさぁ……
>逆に心地よくなってきた
>再生数増えてるんだよなこれでも
登場モーションも終わり、視聴者も程よく訓練されてきたところでシェリーが変わるわけではない。相変わらずの掘削ムーヴを続けようとする。が、流石はボス。地鳴らしを行い、シェリーの体勢を崩した。地に踏ん張ってホームランを打つようにオファニエルを押し付けてきたせいで、一瞬だけ離れた足により踏ん張り力が激減。調子に乗っていたシェリーはオファニエルの移動力に敗北。引っ張られるように形勢逆転勢いそのまま"脚"を一周二周。
「らめぇぇぇぇ!!!」
>これは曲芸
>岩だからオファニエルで問題なく走れるのか
>壁っていうよりは柱だからスッゲー回ってる
例えるのならば全く淫靡を感じさせない地獄のポールダンス。シェリーは本気で目を回したが長年の勘で重力を感知。思いっきり身体を下に降ろし、舵を上に切る。それはまるで滝を昇る鯉のように。
そして龍となったシェリーはオファニエルを握りながらの大回転、回転に回転が合わさり無限に見える。
>これが黄金長方形の何某…!
>サーカスで見た
>むせるどころか吐きそう
勢いそのままに天井まで達したシェリー。脚をバネのように曲げ、地へとカッ飛ぶ。
「必殺星砕き相手は、死ッ──ねぇぇぇぇぇ!!!!」
落下の勢いに跳躍の速度、オファニエルの重量が乗った直下掘り。幾らギガントといえども材質は
>音量注意
>遅い
>これからみんなもシェリーの配信見るときはキチンと音は最大にしような
>自殺志願者ニキ道連れ増やそうとしないで
ギガントのHPゲージが70%、60%、50%と順調に減少。序盤ということもあり、オファニエルの相対的火力は現状高い。また、弱点の頭にヒットし続けているため怯みが継続――
『グガラガラララ!』
――と思いきや、半分を割ったタイミングで怯みが強制終了。咆哮とノックバックで直下掘削は中断。先の狼で一度受けていたからか、慣れた様子で地面にオファニエルから着地。落下ダメージを無効化。
「同じ手は喰らうかーっ!」
>えっ何それは…
>衝撃に衝撃で相殺できるのか!?
>あー…前作でもやってたな…バグだと思ってたわ、スケアートの仕様だったのか
>というよりはノンフィクションエンジンの仕様だな。元々バグだったが仕様で叩きつける勢いが強ければ強いほど衝撃を軽減できる。なんなら攻撃にもなる
>解説サンガツ
咆哮の次は地団駄。お世辞にも広いとは言えない洞窟で暴れ回るギガントは手に負えない。同時に起こる落石の雨は初期作成のシェリーが当たればタダではすまないだろう。だが、それをドリフトの要領で地を走り壁を登って回避していく。まるで未開の危険地帯で撮影されたバイクスタントのようだ。
>特撮見てる気分
>浪漫は特撮に通ずる
>逆だ逆
『ガグラララァッ――!』
そしてギガントによって振り下ろさる岩拳。強引に縦回転したシェリーは
>シェリーさん?
>どうやって跳んだ
「気合ッ!一発入魂だァァァッ!」
コアの元まで辿り着いたら、次は靴底の寿命がマッハで尽きそうな軸変更。足で踏ん張りながらオファニエルを、露出するコアに、叩きつけ──
「[真髄開放]ォォォォォッッッッッ!!!!!」
『ガラァッ!?ゴゴコガギガグッ!!??』
唸れ唸れよオファニエル。伸ばされる幾千の棘。高らかに響く裁きの金切音。コアはギガントにとっての急所であり、弱点ヒットの特殊エフェクトが舞い踊る。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――ごっふぅぅぅっ!!??」
>こんな決め時にまでクリエナ飲むな?
>今ちょっと感動しかけてたのに
>不覚にも笑った
シェリーのシャウトは途切れたが、オファニエルの回転は止まる事を知らない。ゴーレムは再び怯みループに突入。野生のボスとはいえ初期エリアということもあり、真髄解放を弱点にALLヒットし続けたのならこうなる事もさもありなん。結局のところRTAはDPSとの勝負なのだから。
「いっけぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
残り10%
>DPSちょっと足りてないかも!
>あと少ししかないが
残り5%
>やばいやばい残り僅か!
>武器なくなったらどう戦うんだろう
>そりゃあんた…拳よ
残り――0.1%。
鳴り止むオファニエル。僅かに残ったギガントのHPバー。役目は終わり帰宅せんと消えゆくオファニエルの柄を、シェリーは強引に握りしめて、それはまるでプロゴルファーのように――
「いいから、死っっっっっねぇぇぇぇぇ!!!!!」
0%。柄を用いた
[Battle-Result]
ロック・ギガント遭遇戦
貢献度:Solo
評価度:Amazing
タイム:00,04,14,69
報酬
-ロッカー・アーム(初討伐特典)
-砕けた魔核(FA特典)
-砕けた魔核(LA特典)
-ロック・ロック×3(最速討伐特典)
-ロック・ロック×1
-鉄鉱石×4
-凝縮岩×6
-ひび割れた岩×13
-石ころ×6
称号
-[岩巨人を初討伐せし者]
-[岩巨人を単独討伐せし者]
-[岩巨人を最速討伐せし者]
-[岩巨人を討伐せし者]
-[縦横無尽]
-[弱点キラー]
<ワールドアナウンス>
『シェリー』が単独で『ロック・ギガント』を初討伐しました。タイムは4分14秒69です
「勝った……!」
疲労はしない仮想の身体とはいえ、その魂は疲労する。無意識のうちに絶え絶えとなる息が、熱戦の必死さを物語る。
>ウォォォォ!!!!
>[お疲れ様!!!]
>\\祝いだ赤スパ持っていけぇ!!]//
> <<[さすがシェリー!]>>
>#[今日はいいもの食べな!]#
「はは…っ、みんなありがとう!!」
目の前を流れる虹色の声に、シェリーは突き上げる拳を以て応える。
「私の……勝利だぁぁぁーーーっっっ!!!」
コメントとの雑談の後、精神点疲労を回復したシェリーはセーブポイントから街に帰りログアウト。配信の締めへと移る。というかそろそろ寝ないと学校で殺される。今はクリエナで持ち堪えているが、アドレナリンが途切れたシェリーはそろそろ寝落ちするのではなかろうか。
「それじゃぁ…今日の配信はここまでっ!次の配信は今日の21時からを予定しとくね!色々検証してから続きするよー!」
>おつ〜
>よく休めよー
>おっちぇりー
配信の終わり際にはいつものシェリーの調子を取り戻し、バチコンっ☆とウインクをキメて配信終了。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます