栄養
とりあえずミッションクリアだと一安心して、ゆっくりと眠りにつくことができた。
ぐっすり眠れたおかげでなんだか目覚めが良く、綾よりも先に目が覚めた。
まだ出勤まで時間がある。
…起きるか?
…
でも、まだ少し布団にいることにした。
あんまり早く起きると綾まで起きてしまいそうだったから。
そして何気に、部屋の棚に飾ってある観葉植物をボーっと眺めていた。
栄養…
‼︎
ボクは、女性先輩が言っていた言葉を思い出した。
綾には、栄養が足りないのではないだろうかと。
そりゃ、食べ物とかの栄養不足とかじゃなくて、もっと…なんかわからないけど…なんだろう?
ボクから、あげられる栄養って…
…
隣で眠る綾をじっとみつめた。
そしたらなんだか…隣で眠る綾がとっても愛おしいく感じたボクは、綾の髪をゆっくりと優しく撫でていた。
綾の髪を撫でたのは、いつぶりだろう…
会話は普通にあるものの、スキンシップは最近まったくとっていなかったように思う。
綾は、仕事と家事で疲れているみたいだったし…最近ボクは、家で何をしたらわからないからって読書ばかりしていたから、綾も気を遣って必要以上に話しかけてこなかったもんな…。
「ごめんな…綾」
ピルルルルル
ビクッ
綾を起こさないように小声で綾に謝ったとほぼ同時に、綾の目覚ましがなった。
「びっくりしたー」
と思わず声に出すと綾も、
「わたしもびっくりした」
と寝ぼけながらも少し嬉しそうに綾がクスッと笑った。
「綾はいつも目覚ましでびっくりするの?」
ボクの質問に綾は、またクスッと笑い
「違うよ。健二が朝からそんなことしたからだよ?」
とボクの胸に顔を埋めた。
綾…
髪の毛触ってたの気づいてたんだ。
ボクは、綾をギュ〜っと抱きしめた。
綾がいる。
まだ、綾の心の中に少しボクが残っているようだ。
「綾…綾…」
綾を何度も抱きしめた。
「どうしたの健二?最近悩み事あるの?大丈夫?」
綾は、いつもクタクタなのにボクに気を遣ってくれる。
そんな綾の言葉にボクは、涙が出そうになった。
「綾…ごめん」
抱きしめながら綾に謝った。
そしたら綾は、不安そうにボクをみて
「なんでそんなに謝るの?もうやっぱりわたしのこと好きじゃない?」
と聞いてきたのだ。
…
好きじゃないのは、ボクじゃなくて綾なんじゃ…?
「なにいってるの…ボクは、綾をずっと大好きだよ。今だって大好きすぎてどうしようもないんだ」
と、綾を再度抱きしめてキスをした。
そしたら綾は、
「ならよかった。」
とボクに抱きついてきた。
綾がボクをもう好きじゃなくなったんじゃなくて、ボクが無意識に綾を避けていたのかもしれない。
「綾…愛してる」
「うん、わたしもだよ」
綾がボクの気持ちにこたえるようにボクを欲してくれているのが伝わってくる。
しばらくこうしてお互いを確かめ合っていた。
そしたら綾が、
「ほんとはまだこのまま一緒にいたいけど、仕事に遅れちゃうから支度しなきゃだね」
と、ベッドから起きあがろうとした。
「綾、もう少しこのままいない?ボクも手伝うから」
と、綾をひきとめた。
そしたら綾は、
「うん。わかった」
と、また布団へ戻ってきてくれた。
そしてしばらくして、そろそろ起きようかってなった。
ボクは、とりあえずカーテンをあけてお布団を整えた。
綾は、朝ごはんの支度をはじめた。
なのでボクは、洗濯をすることにした。
もちろん、
「他に洗うものない?ないなら洗濯機まわすよ?」
と、声かけしてからね。
それでもまだ時間は余っている。
だから、お風呂掃除もした。
綾は…綾は毎朝これを一人でこなしていたんだよね。
そりゃ疲れるわ…。
お風呂掃除も終わると朝ごはんも出来上がったところだったようだ。
「朝ごはんありがとう。ボクが運ぶね。」
手際よくテーブルを拭いて運んだ。
そしたら綾は、
「なら、わたしは少し洗い物しちゃおっかなぁ」
と、なんだか片付けを楽しそうにやりだした。
「綾、今まで全部一人でやってくれてたんだね。ありがとう」
とお礼を述べた。
綾は、
「ううん。わたしこそ…せっかく色々してくれてたとき、小言みたいに言っちゃっててごめんなさい」
と謝ってきた。
「んもー、綾〜。綾は謝らなくていいから。これからも、色々ご指導お願いします」
と握手を求めた。
すると綾も、
「こちらこそ」
と手を差し出してくれた。
なんだか綾の笑顔が、以前ボクに向けてくれていた笑顔に戻ったようにおもえた。
続く。
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