第一章 恐怖の夏の前触れ




20〇〇年6月中旬。

梅雨の時期は、まだまだ続いていた。

もう、一週間以上、土砂降りが続いていた。

雨と共に、激しい雷が鳴り響き、黒い空に稲光が走る。


テレビのニュースでは、連日、事故のニュースばかり。

高速道路を走っていた車がスリップを起こし、何台もの玉突き事故に繋がり、死傷者が多数や、傘をさし外出中の女性に、車が突っ込んだ等。

川辺を歩いていた小学生が足を滑らせ、川へ流された等々。

テレビをつければ、そんな暗いニュースばかりが流れてくる。


傘をさしていても、びしょ濡れになる程の雷雨。

生暖かい強い風が木々を倒し、道路を塞ぎ、通行止めになり、毎日のように、救急車や消防車、パトカーが走り回る。


びしょ濡れになりながら、学校から帰ってきたタカシは、玄関のドアを開け、中に入った。

その音に、キッチンから顔を出した母親のミキは、慌ててキッチンから出てくる。

「あーあーあーあー!ちょっと待って!バスタオル持ってくるから!濡れた服、脱ぎなさい!!」

「えっ?ここで?」

高校一年のタカシは、眉を寄せ、そう言った。

「だって、そのまま上がったら、玄関、ビチャビチャになるじゃない!」

ミキに言われ、仕方なく、タカシは、濡れた制服を脱ぎ出す。

ミキは、タライとバスタオルを持って、パンツ一枚で待つ、タカシの側へ 足早にくる。

「ほらほら、濡れた服は、これに入れて!あなたは、お風呂場に直行よ!」

頭からバスタオルをかけられ、タカシは、濡れた制服をタライに入れ、そのまま風呂場に向かった。


ここ何日かは、こんな事の繰り返しである。

「夕飯の支度もしないといけないのに、忙しいったらありゃしない。」

ブツブツ言ってるミキの言葉を聞いながら、タカシは、ボソリと呟いた。

「俺に、ボヤくなよ。文句なら、雨に言ってくれ。」

その時、窓の外がピカリと眩しく光り、バリバリバリと音を立て、雷が鳴った。

「きゃあーーー!!」

激しい雷に、ミキの悲鳴が響く。

タカシは、バスタオルで頭を拭きながら、呆れた顔をした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る